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CODE:0(コードゼロ) 〜公安局の採用試験で出会った女子たちは、レイをハックしたいらしい(コイアン)〜  作者: にめ
公安学校編11:拘束脱出訓練

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LOG.205 再会の灯(Reunion Light)

LOG.205 再会の灯(Reunion Light)


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### ◆ 封鎖区域への突入


北ブロック封鎖区域前。赤い警告ホログラムが点滅し、通路は粉塵と焦げた臭いに包まれていた。天井には火花が散り、足元にはひび割れた配管と水たまり。冷が先頭に立ち、まつり・天音・湊が続く。息をすれば鉄の匂いと熱気が肺を刺し、汗が頬を伝う。崩れた梁が軋むたびに金属音が響き、緊張が張りつめる。冷は目を細めて前方を確認しながら、指先で壁の振動を探った。遠くで警報の残響が響き、施設全体がどこか生き物のように呻いていた。


> 天音「……この先、制御ログがないわ。完全に切り離されてる」

> 冷「行くしかない。あの信号は、きっと——」


梁の下を潜る冷の動きは力強かったが、脇腹を押さえる仕草に湊が眉を寄せる。まつりが先を急ぐように手を差し出した。


> 湊「冷くん……無理しないでね」

> 冷「大丈夫だ。行くぞ」


壁面に貼り付けた端末を操作しながら、まつりが短く告げる。


> まつり「信号はまだ生きてる。微弱だけど、封鎖線の向こう……北端第七通路よ」

> 天音「遠くない。——行こう!」


粉塵の中を、懐中灯の白い筋が貫いた。四人の足音が同時に響く。誰も言葉を交わさない。空気の中に、ただ焦燥と希望だけが混じっていた。


---


### ◆ さくら、灯を探して


暗闇の中。さくらは崩れた天井の隙間から差し込むわずかな非常灯の明かりを頼りに歩いていた。制服は泥と埃にまみれ、袖口は破け、指先には乾いた血がこびりついている。膝からは擦り傷の血が滲み、靴は片方の紐が切れてずるずると引きずるようだった。髪は汗と粉塵で固まり、頬にはいくつもの細い傷跡が浮かび、額には乾いた血が線のように残っている。背中には崩れた瓦礫の跡がつき、肩の布地が裂けて肌がのぞく。唇は乾き切って白くひび割れ、喉は声を出そうとしてもかすれるだけだった。手のひらは擦り傷と火傷で赤く腫れ、指を動かすたびに鈍い痛みが走る。呼吸は浅く、胸の奥で心臓の鼓動が不規則に響く。それでも彼女の瞳だけは消えていなかった。瞳の奥に宿る光は、絶望ではなく、小さな希望の火だった。


> (早く……会いたい。冷くん、みんな……)


膝を擦り、手のひらを壁に押しつけ、前へ。足場が崩れて膝を打っても、唇を噛んで立ち上がる。肺が痛むほど呼吸が荒くなるが、それでも止まらなかった。


ふと、遠くに白い光が見えた。通路の向こう、かすかに揺らめく光。涙がにじむ。


> さくら「……冷くん……?」


一歩踏み出した瞬間、足元が崩れ、小さく膝をついた。手のひらに冷たい鉄粉が刺さる。それでも、彼女は小さく笑う。


> さくら「痛い……けど、これくらい……大丈夫。だって、訓練なんだから」


もう一度、立ち上がる。その目には、迷いのない光が宿っていた。


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### ◆ 壁越しの合図


冷たちは厚い隔壁の前に立っていた。足元には崩れた金属片と粉塵が積もり、通路は焦げたような臭いで満たされている。天井からは細かな埃が舞い降り、懐中灯の光が白く散る。信号はこの奥から発せられている。通信は完全に途絶しているが、まつりの端末には小さな波が確かに残っていた。冷は息を整えながら壁の表面に耳を寄せ、わずかな振動を探る。内部から伝わるかすかな響き——まるで誰かが助けを求めているような微弱な律動。天音はその様子を見つめ、思わず息を呑んだ。湊はライトの角度を調整し、壁面を照らす。鉄板の継ぎ目には熱による変形跡があり、手で触れるとわずかに震えていた。まるでこの隔壁自体が彼らの再会を拒む壁のようだった。


> まつり「生命反応ひとつ……この先ね」

> 天音「ここが……」


冷は金属壁に手を当てた。ひんやりとした感触が掌を刺す。


> 冷「……聞こえるか、さくら!」


一瞬の静寂。数秒後——“コン……コン”と金属を叩く音。かすかだが、確かに内側からだ。


> 天音「今の、聞こえた……?!」

> 冷「さくら! 俺だ、冷だ!」


再び“コン、コンコン”と返ってくる。三拍・二拍の通信訓練合図——五人だけの符号だった。


> 冷「……間違いない、さくらだ」

> 湊「やっぱり無事だったんだ……!」


天音が小さく笑い、息を吐く。張り詰めた空気がわずかに緩む。


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### ◆ 崩落と再会


まつりがスキャンデータを確認する。冷の胸は高鳴っていた。粉塵が漂う中、金属のきしみが遠くで鳴り、壁がゆっくりと裂けていく。光が差し込んだ瞬間、さくらの姿が現れ、彼女は迷わず冷のもとへ駆け寄った。


> さくら「冷くん……っ!」


冷が言葉を発する前に、さくらが勢いよく抱きつく。制服の埃が舞い、衝撃で冷は一歩下がったが、そのまま彼女の背を抱き返した。彼女の体は冷たく、震えていた。


> 冷「もう大丈夫だ。……ここにいる」

> さくら「怖かった……でも、信じてたの……冷くんが、来てくれるって……」


冷の胸の奥に熱いものが込み上げた。彼の脳裏には、これまで共に過ごした訓練の日々、笑い合った時間、そして一度離れた仲間への想いが一気に蘇る。自分もまた、この瞬間を信じていたのだと気づく。


まつりはその様子を見て、わずかに眉を寄せる。


> まつり「冷……さくらの時は私のときみたいに疑わないのね……」


湊が苦笑し、天音が小さく肩をすくめた。まつりの声には嫉妬が混じっていたが、どこか温かさも含んでいた。


> まつり「右側の支柱が弱ってる。力を合わせれば、開ける!」

> 冷「湊、左側を押さえろ。天音、照明を頼む!」


三人が一斉に力を込める。金属が軋み、粉塵が舞い、冷気が吹き込む。最後の衝撃で、壁が大きく歪んだ。閃光のように光が差し込み、向こう側に人影が見える。


> 冷「……さくら!」


土煙の中、さくらが立っていた。頬には泥、額には擦り傷。けれど、その目だけは真っ直ぐ冷を見ていた。


> さくら「……ほんとに……冷くん……」


冷が駆け寄り、彼女の肩を支える。天音がすぐに応急処置を施し、湊とまつりが周囲を警戒する。


> 冷「よく頑張ったな。もう大丈夫だ」

> さくら「うん……ずっと……信じてた」


その言葉に、冷は静かに頷く。訓練という枠を越えた絆が、確かにそこにあった。


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### ◆ 再会の灯


非常灯が淡く五人の影を照らす。粉塵の中、冷が仲間を見渡す。湊が微笑み、まつりが端末を閉じる。天音は黙って頷いた。その場の空気は静かで、粉塵の粒が光を受けてゆっくりと舞っている。さくらはまだ冷の隣に立ち、服の裾を握って離さなかった。彼女の肩に触れる冷の手が、わずかに震えていることに気づいた天音は、そっと視線を逸らす。


> 冷「これで全員だ。……ここからが本番だな。」

> 天音「うん、最後まで行こう。」

> さくら「みんなで、一緒に。」


まつりが端末を閉じ、静かに息を吐いた。湊がその様子を見て微笑む。冷が振り返ると、さくらがほっとしたように微笑み、再び冷の腕に軽く寄り添う。彼女の手はまだ冷たく、指先は震えていたが、その目には強い光が宿っていた。


> まつり「……ほんとにさくら、強くなったわね。冷ったら、さくらの時はやけに優しいのね……」


一瞬の沈黙。天音が小さく笑って場を和ませた。


> 天音「ふふ、いいじゃない。今は素直に、再会を喜びましょう。」


さくらが照れくさそうに笑い、湊が「うん、そうだね」と優しく言葉を添える。粉塵の中に五人の笑い声が溶け、短い時間だけ、訓練という現実が遠く感じられた。


その瞬間、さくらの端末がかすかに光った。画面には“BlueBee 通信エラー”の文字。けれど、それはまるで希望のサインのように、微かに脈打っていた。冷はその光を見つめ、小さく息を吐く。


> 冷(心の声)「俺たちは、ちゃんと繋がってる——」


非常灯の淡い光が彼らを包み、五人の影が重なり合って伸びていく。再び前を向いたその瞳には、仲間としての誇りと、次の試練への覚悟が確かに宿っていた。


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