表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CODE:0(コードゼロ) 〜公安局の採用試験で出会った女子たちは、レイをハックしたいらしい(コイアン)〜  作者: にめ
公安学校編11:拘束脱出訓練

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

227/237

LOG.204 沈黙の通信、届かぬ声(Silent Signal)

LOG.204 沈黙の通信、届かぬ声(Silent Signal)


---


### ◆ 微かな信号


制御室の復旧から二十分。冷たちは再びコンソールの前に集まっていた。訓練施設の電力は安定しているものの、通信系統の復旧は部分的にとどまっている。まつりの端末には、無数のエラーログが流れていた。キーボードを打つ指が震え、緊張で乾いた息が漏れる。焦げた配線の匂いが漂い、冷たい蛍光灯の光が青白く彼らの顔を照らしていた。


> まつり「通信網の一部、まだ死んでるわ。北ブロック全域が遮断されてる。」

> 天音「でも……ここ、残響波が拾える。ほら、この微妙なノイズ。規則的に振れてる。」


モニターには、細かい波形が淡く瞬いていた。冷はその波を見つめる。まるで遠くで誰かが小さく呼吸しているような、そんな周期だ。


> 冷「……これ、さくらの端末からの信号じゃないか?」

> まつり「確認中……間違いない。訓練前に登録された端末IDと一致する。」

> 湊「でも、位置が特定できない。建物の遮蔽層の下、電波が届かない区域だ。」


冷は一瞬考え、手元の配線図を開く。額に汗が浮かび、ペンの先が震えた。


> 冷「観察層の送信機を中継にできないか? 信号を一度増幅して拾う。」

> まつり「理論上は可能。でも、再接続にはリスクがある。再び暴走の引き金を引くかもしれない。」

> 冷「構わない。時間をかければ……さくらの信号が完全に消える。」


短い沈黙ののち、湊が頷く。三人が冷の意図を理解し、再び手を動かし始める。コードを繋ぎ、端末を開き、警報の赤光が交錯する制御室に、キーボードの音が小刻みに響いた。冷の指先は冷静だが、その奥には焦燥が潜んでいた。


---


### ◆ 孤立するさくら


一方その頃、北ブロックの暗い補助通路。桜井さくらは崩れた天井の下で息を潜めていた。制服は破れ、腕や頬には細かな擦り傷がいくつも走っている。髪には埃が絡まり、膝の擦過傷からは乾きかけた血が滲んでいた。靴の片方は破れ、靴下は泥にまみれて重く湿っている。肩口には鉄骨の破片がかすり、乾いた赤い筋が服を染めていた。指先には破れた手袋の跡。懐中ライトは壊れ、照明も落ちている。冷たい風が通路を抜け、汗に濡れた肌を容赦なく撫でるたび、さくらの体は小刻みに震えた。わずかに差し込む非常灯の光が、粉塵を帯びた空気を淡く照らし、彼女の肩の震えと疲労を浮かび上がらせていた。喉は乾き、唇はひび割れている。膝を抱え、わずかに息を吐きながら、かすれた声で自分を励ますように呟いた。


> (……冷くん……みんな……)


肩で息をしながら、さくらは端末を取り出す。画面はノイズだらけで、Linkの通信は“OFFLINE”のまま。突然、画面の隅に一瞬だけ英文字が走った。


> [BlueBee 通信エラー]


さくらは目を瞬かせる。訓練中にGhost-Lは没収されているはず——。それでも、その文字は確かにそこにあった。


> (これ……訓練制御のログ……? 残響……?)


冷のGhost-L、**BlueBee**の識別コードが、一瞬だけ観察層サーバの残留ログから浮かび上がったのだ。まるで“ここにいる”と知らせるように、すぐにノイズと共に消える。


> さくら「……冷くん……無事なんだ……」


彼女は端末を胸に抱きしめ、震える手で立ち上がる。背中が壁にぶつかり、痛みに顔を歪めながらも、足を踏み出す。瓦礫の間を縫い、壁を伝い、滴る水音を頼りに進む。血で滑る床に膝をつきながらも、歯を食いしばって立ち上がる。


> さくら「……大丈夫。訓練なんだから、でも……ただ待ってるだけじゃ、だめなんだよね……」


その声は震えていたが、目には確かな光があった。涙で霞んだ視界の奥に、冷の姿を思い浮かべる。彼が自分を呼ぶ声を幻のように聞きながら、さくらは一歩一歩、暗闇を切り裂くように進んでいった。


---


### ◆ 再接続作戦


制御室に緊張が走る。空気は焦げた電線の匂いに満ち、誰もが息を潜めていた。再送信プログラムの同期まで、あと十秒。天音が指でカウントを始め、まつりがモニターを凝視する。画面には赤と黄の警告が交互に点滅し、数字が刻一刻と減っていく。湊は汗で滑る手を必死に拭い、ケーブルを握りしめた。冷はスイッチの上に手を置き、指先に力を込める。彼の額にも汗が滲み、顎のラインを伝って落ちた雫が床に弾けた。天音のカウントが進むにつれ、誰もが無意識に息を詰める。心臓の鼓動が機械音と重なり、制御室全体が一つの生き物のように鼓動していた。


> 天音「電圧、限界ギリギリ……! 負荷が上がってる!」

> 冷「耐えろ、この一瞬だけでいい——」


閃光とともに制御室の照明が揺れた。警告音、そして一瞬の静寂——。次の瞬間、モニターに“Signal Detected”の表示。まつりの目が見開かれ、湊が息を飲む。


> まつり「……来た! 北ブロックから微弱信号!」

> 湊「位置を! 早く!」

> まつり「旧観察層第七通路——封鎖区域内!」

> 天音「そんな場所、完全に立入禁止じゃ……」


冷は目を細め、拳を握った。その拳には、ただの訓練を越えた決意が宿っていた。


> 冷「行くぞ。」


その声は低く、静かで、誰よりも確かな力を宿していた。まつり、天音、湊の三人が即座に頷く。再び、足音が走る。暗闇の中へ向けて——。


---


### ◆ 暗闇の呼び声


同じ頃。封鎖区域の通路をさくらは壁づたいに歩いていた。腕は震え、脚は泥と血で重くなり、息をするたびに喉が焼けるように痛む。視界の端が霞み、意識が遠のきそうになるたび、冷たちの笑顔が脳裏に浮かんだ。体力は限界に近い。それでも、心の奥底ではひとつの想いが彼女を突き動かしていた。


> (早く……会いたい……冷くん、みんな……待ってて……)


ぼやける視界の中で、彼女は壁を伝いながら一歩ずつ進む。靴底が擦れるたび、瓦礫が鳴り、手のひらに鋭い痛みが走る。だが、その痛みさえ、今は生きている証のように感じた。唇を噛み、涙をこらえながら、彼女の目には小さな希望の光が宿っている。ふと耳を澄ませば、遠くで微かな金属音——まるで誰かが扉を叩いているような幻聴が聞こえた。


> (……冷くんの……声……?)


突然、Link画面がかすかに点滅した。ノイズ混じりの電子音。声のような断片が聞こえた。


> 『——さく……ら……待って……い……』


> さくら「……冷くん?」


画面が暗転する。彼女は端末を抱きしめ、静かに微笑んだ。


> さくら「……聞こえた。……絶対、届いてる。」


その声には涙が滲んでいたが、もう怯えはなかった。彼女は立ち上がり、崩れた通路の先に続く微かな光を見つめる。震える足で、それでもしっかりと前を見据えた。


> さくら「私も……行くから。」


暗闇の中、わずかな希望を胸に歩き出す。その光は遠く、けれど確かに、冷たちのいる方向へと続いていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ