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第85話 イケメン貴族

 荷物をセレスティア温泉旅館に預け、仁と真那はイーサンと共にグランデリッチのレストラン[エルドラド・テーブル]に足を踏み入れた。

 店内は煌びやかなシャンデリアが天井から輝きを放ち、重厚な木製の家具と温かみのある照明が落ち着いた雰囲気を醸し出していた。


 テーブルに案内されると、ウェイターが丁寧にメニューを手渡した。仁は興味津々でメニューを開き、その豪華な料理のラインナップに目を奪われた。グランデリッチならではの贅沢な肉料理や、繊細なフレンチスタイルのデザートがページを彩っている。


「何を頼むか迷うな」

「そうですね。どれも美味しそうです」

 仁が言うと、真那は笑顔で頷き興味津々の表情でメニューを眺めている。



「このグリルステーキは特におすすめですよ」

 イーサンが二人に見えるようにしてメニューに指差した。

「これは最高級のモーウ肉を使っているから、絶品だって聞いたことがあります」


「(へ~、確かモーウって現代社会で言う牛だよな)」

 仁は<落ち人>であることがバレないように、口には出さずにそう思うと、頷いて真那に視線を送った。

「いいですね。あと、このシーフードパエリアも頼みたいです。新鮮な海の幸がたっぷり入っていて美味しそうです」

 真那は仁のアイコンタクトをサラッと理解し、既に目星をつけていたであろう料理名を口に出した。


「それではこのデザートプレートも試してみましょう。フレンチスタイルのデザートが盛り合わせになっていて、きっと素晴らしい味わいだと思いますよ」

 イーサンが提案すると、仁と真那も笑顔で同意した。



 注文が終わると、料理が一つ一つ美しく盛り付けられて運ばれてきた。仁たちは目を輝かせながら、料理の香りとその異世界らしい豪快なビジュアルに酔いしれた。イーサンもグランデリッチのレストランで食べるのは久しぶりだったらしく、その料理の美味さに感動していた。


 食事をしながら、仁と真那はイーサンとの会話を楽しんだ。イーサンの異世界での経験や冒険の話に耳を傾けながら、三人は食事を楽しんだ。


 夕食が終わる頃、仁は満足そうに深呼吸をした。この素晴らしい食事と、新たな仲間との出会いに心が満たされていた様子だ。

 まるでゲームの世界に放り込まれた様な異世界転移。だがゲームと違い腹も減るし危険も付きまとう。しかし、未知なる世界の旅先で知り合う人々が増えていく事は喜ばしい事であった。


 3人は食後の異世界コーヒーを飲みながらマッタリしていると、イーサンが質問をしてきた。

「二人はグランデリッチへは何しに来たのですか?」

 仁と真那は顔を見合わせて、イーサンの質問に答えると同時に目的を誤魔化しながら話した。

「実は新しく宝石関係の商流を考えていて、このくらいの大きさのテレッドを探しているんです」

 真那は両手を30センチ程の幅に広げてテレッドの大きさを示した。無論、商流など嘘に決まっているが、現代社会に帰る為のキーアイテムとはイーサンに言える筈もない。

 イーサンは自身の両手を真那と同じようにマネて見せた。

「こ、こんな大きいテレッドですか?見た事ないですね」


 案の定、やはり規格外の大きさであるテレッドはそう簡単には情報も見つからないらしい。

 


 真那は席を立ち会計を先に済ませて来ようとすると一人の青年とぶつかってしまった。よろける真那をその青年は力強く肩を掴んで真那のよろめきを静止した。


「すみません、お怪我はありませんか?」


 青年は綺麗な顔立ちで金髪、そして綺麗なマリンブルーの瞳をして真那を見つめていた。


「いえ、大丈夫です。こちらこそすみません」




 青年と真那、お互いの時間が止まってしまったかのようにお互いが顔を見ている。


「真那、か・い・け・い」


「あ、はい、すみません!それでは」


 真那は慌てて会計を済ませに向かう。青年はクスッと笑い、その場を後にする。




「仁さん、今のレオノール・フォン・ヴァルモント様ですよ」


「ん?今のイケメンで爽やかオーラの青年の名前?」


 イーサンの話では実家は王都にあり、かなりの上流階級の貴族だそうだ。しかも冒険者ランクはAの凄腕で、現在はグランデリッチに住んでおり、ほとんどの店がヴァルモント家によるものらしい。




「イーサン、イケメンで金持ちな奴ほどロクなヤツいないぞ」


「でもレオノール様は町民からも慕われる素晴らしい貴族ですよ」


「イーサンとやら、気にするナ、オッサンがヤキモチ焼いてるだけジャ」


 仁はコツンとゾルの頭をグーパンする。


 しばらくすると真那が何故か顔を赤くしたまま会計を済ませて席に戻ってきた。


『おいおい、旅の途中で異世界ロマンスはやめてくれよ・・・』


 仁は真那の様子を伺いながらレストランを後にした。




 外に出ると日は落ちて街の夜景が広がっていた。仁と真那はイーサンと別れ、食べたメニューや温泉の話をしながらセレスティア温泉旅館に戻ってきた。




 実のところ、仁は先ほどのレオニールなんたらが気になっていたが、あえて真那にその話題を振るのを避けて歩いた。


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