4日目(6)
「あーあ。初めてサボっちゃったな」
泣き疲れて寝てしまった雫の頭を膝の上に乗せて、彼女の髪をかき分けながら島田さんはそう呟く。
「柊君……何か私に言う事あるんじゃないかな」
島田さんは優しい口調でそう告げるが、その声とは裏腹に彼女の瞳は責め立てる様にしっかりと僕の目を見つめてくる。
「柊君。私の気持ち分かってるよね?」
島田さんが問いかけてくる言葉に、僕は上手く言葉を返す事が出来ずに無言という返事を返す。
「ずるいなぁ柊君は、分かっててあんな風に言うんだもんな」
そんな僕の態度に、彼女は呆れた様に空を見上げながら僕にしっかりと聞こえる声で、吐き出す様に言葉を繋げる。
だが、彼女の言葉に僕の頭は思考停止した様で、何の言葉も探し出せないままぼっと地面を見つめる。
「好きだよ」
島田さんから出て来た言葉を聞いてしまい、僕はどうしていいのかも分からずに、その声の方に目線を送る。
「そんな顔で見ないでよ」
相当ひどい顔をしていたのか、僕の顔を見るなり島田さんは小さく笑ってそう言うと、直ぐにまた真面目そうな顔になる。
「好きだよ。柊君」
僕が何も言えずにいると、念押しする様にタガが外れた様に、僕達が言えなかった言葉を島田さんがもう一度言う。
それでも僕は何も言えないで、四月の冷たい風は僕の心をかき乱す様に大きく音を立てる。
「……好きでした」
風に煽られる様にして僕から漏れ出た精一杯の小さな言葉で、その風はフッと静かになるが、僕のそのちっぽけな声では、島田さんに聞こえた所で、彼女には届かない事は分かりきっていて、僕は大きく大きく息を吸い込んでから、彼女に向かって勢いよく弱音を吐く。
「こんな僕だけど、告白も自分から出来ない弱虫な僕だけど、ずっと前から好きでした」
僕が放った大きな声は震えて霞んで曖昧なままで、だけどまっすぐに島田さんへと向かっていく。
「……うん!」
僕の言葉に対して、島田さんは今までに見せた事も無い笑顔を咲かせて、頼りない僕の声をしっかりと受け止めてくれる。
そのまぶしい光景に僕は居てもたってもいられなくなり、思わず視線を逸らして声を出そうとするが、目に焼き付いた彼女の顔と煩い音を立て続ける鼓動が邪魔をして、僕達の会話は電源を切る様にあっさりと終わってしまった。




