好きだぜ
「く・・着いたか」
頭を摩りながら悟は起き上がり言った。
「神山君・・・・」
「相川・・・?」
微かに相川の声が聞こえて悟は辺りを見渡し相川を探した。
「相川!大丈夫か!?」
遠くに倒れている相川を見つけて悟は駆け寄った。
「私は大丈夫・・・・力を使い切っちゃっただけ・・・だからちょっと休ませて・・・」
「休めば治るのか?」
「うん・・・だから私なんかより、早く雫ちゃんを」
相川の言葉を聞いて悟は再び周りをキョロキョロして雫を探した。
その時。背後から爆発音が聞こえた。
「あそこか」
おそらく爆発の犯人は雫だろう。と言うか今この世界には悟、相川そして雫の三人しかいないので当然と言えば当然だが。
「行ってあげて」
「ああ、ありがとう」
相川に見送られて、悟は爆発元へと走って行った。
「雫ーーー!!」
雫を見つけ悟は叫んだ。
そして雫に向かって走り始めた。
「がぁぁぁ~!!」
悟に気付いた雫が悟に攻撃してくる。火の玉が悟に向かって放たれる。
「うおっ・・・あっぶねぇ」
ギリギリでそれをかわしながら悟はどんどん雫に近付いて行く。
「雫ーーーーー!!」
ついに雫の元に辿り着いた悟は雫のことを思いっきり抱きしめた。
「!!!!」
雫は何が何だかわからない表情を浮かべたが、そんなことは気にせずに悟は話し始めた。
「雫・・・俺たちって出会ってまだちょっとしか経ってないんだぜ?なんかそんな感じしないよな?この一か月も経たない期間が濃すぎて何年もたったみたいだ」
「・・・・?」
「お前と出会ってから俺の人生スゲー変わった。スゲー楽しかった」
悟は笑顔で話し続ける。
「好きだぜ雫」
優しく微笑み、悟はもっと強く雫を抱いた。
悟の言葉で雫が苦しみ始めた。まるで内に眠っている優しい雫と魔族の雫が戦っているようだ。
「がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
雫が大きく叫び声をあげた。
その瞬間。
グサッ!と言う鈍い音が悟の脳内に響いた。
「・・・・・!?」
雫の腕が鋭い刃物のように悟の体を貫通していた。
「・・・・・!?さ、さとる・・・」
そしてその瞬間、雫の意識が戻った。姿自体は魔族のままだが意識だけがいつもの雫に戻っている。
「・・・しずく?」
「わ、わたし・・・」
手に付いた血を見て雫は狼狽えている。これではまた魔族化してしまいそうだ。
「だ、大丈夫だ・・・俺も・・・コンも無事だ。だから落ち着け・・・」
優しく笑いながら悟は雫の頭を撫でた。
「・・・・」
これにより雫は泣きはしているが、落ち着きはしたようだ。
「いいか?・・・人に迷惑をかけるな・・・悲しい気持ちは痛いほどわかる・・・だがだからと言って、人を気付付けちゃいけない・・・・悲しいんだったら、同じ悲しみをみんなで共有しろ。閉じ込めるな。お前にはいるだろ?共有してくれる仲間が・・・」
「・・・・!うん」
雫は泣きじゃくり鼻をすすりながら答えた。
「ああ、良い子だ・・・」
そう言って、悟の瞳は閉じ、手が雫の頭から力なく落ちた。
「さ、さとるぅ~」
雫の叫び声が悲しく響いた。




