月のちから
日向は雫に向かって歩き始めた。
「大人しくしててくれよ」
日向は手を雫に向けて力を込めた。それと同時に雫の周りを見えない結界で覆われた。
「早くしろ!もたないぞ」
「私たちも行くわ」
相川が走り出したのを見て、悟もそれについて行った。
「行かせないぞ」
そんな悟たちに立ちはだかったのは風間の仲間の魔族だった。
「く・・・戦ってる時間も体力もないぞ」
相川はこれから大きな力を使うことになっている為、下手に体力の消耗は出来ない。悟はそもそもそんな力を持っていない。
数秒の沈黙と睨みあいが続いた。その時。
「・・・退いて」
悟の背後からコツコツという足音と声が聞こえた。
「月さん」
その声の主は月だった。だがその表情はいつもの暗いものではなく、真剣なまなざしで一歩一歩力強く歩いてきた。
「・・・わたしに任せて」
「え・・?でも・・・」
「いいから・・・わたしの目を見ないようにして」
「え?」
そうこうしている内に敵の魔族が集まってきた。
その近づいてくる魔族の前に立ち月は前髪を持ち上げ、隠れていた左目を露わにした。その左目は右目とは違い瞳の色が赤い。
そして、月が自分たちに向かってくる魔族たちを睨みつけた。その瞬間、魔族たちの動きが止まった。
「え?」
悟は目を疑った。
今の今まで動いて自分たちに襲い掛かろうとしていた魔族が一瞬で石になったのだから驚くのも無理なかろう。
「言ったでしょ?・・・わたしの能力も世界を滅ぼす可能性があるって・・・」
哀しげな表情を浮かべ月は言った。
相手を石化する能力。ある意味、これも呪われた能力である。人々から蔑みの目で見られても仕方ないと月は考えていたのかもしれない。
「カッケー!!」
「え?」
悟からの思いもよらぬ言葉に月は変な声を上げた。
「スゲ~っすよ月さん。グッジョブっす」
笑顔でグーサインを出す悟に月もそれを返した。
「がんばって・・・雫ちゃん救って」
「はい!ありがとうございます」
月に見送られ、相川と悟は再び雫の元に走って行った。
「急いでくれ・・・すごい力だ」
全力で結界を保っている日向が言った。
「行くわ。神山君」
「ああ」
悟は相川の手を握って言った。
そして、それを確認した相川は結界に触れ力を入れた。その瞬間、悟と相川そして雫を入れた結界は姿を消した。




