災いは突然に
夜道を悟と雫とコンは歩いていた。とは言っても雫に関しては眠ってしまっている為悟に背負われている。
「楽しかったか?コン」
「はい。とっても」
笑顔でコンは答えた。
「それは良かった。でも悪いな・・・もっと外で遊びたいだろ?」
「いえ・・・大丈夫です。雫ちゃんの命の方が大事ですから」
「知ってたのか?雫のこと」
悟たちは雫のことを伝えていなかった。下手に知らせてコンが雫に寄りつかなくなってしまえば、それが原因で雫が覚醒してしまう可能性があったからだ。
「はい。私は猫でしたから。噂程度でしたが雫ちゃんのことは知っていました」
「そうか・・・知ったうえで雫とあんなに仲良くしてくれてたのか・・・・ありがとな」
「そんな・・・私こそ家に置いて頂いて・・・ありがとうございます」
コンは深々と頭を下げて言った。
「そんなの良いんだよ。もう俺たちは家族みたいなもんだろ?雫を見てみろよこいつなんか最初は敬語とか使ってたのに今はガンガンタメ口だぞ」
雫はいつからか分からないがいつの間にか「悟」と呼び捨てにするようになっていたし普通にタメ口で悟と会話するようになっていた。
別にそれが嫌なわけではないが悟はもっとコンにも家族ぐらい親しく接してほしくてその例として雫を挙げた。
「さとるさん・・・」
顔を上げたコンの目には涙が溜まっていて今にも泣きそうだ。
「おいおい・・・泣くなよ」
「ありがとうございます」
そしてコンの目からは大粒の涙が流れ落ちた。
「いいんだよ。さぁ早く帰ってご飯食べようぜ」
優しく微笑みコンの頭を撫でながら悟は言った。
「はい!」
コンも笑顔で元気に答えた。
「残念ながらそうはさせないよ」
そんな楽しい雰囲気を壊したのは冷たい声だった。
「誰だ?」
「僕だよ」
夜の暗闇から現れたのは風間だった。いつもの笑みは無く悟のことを睨みつけてくる。
その風間の姿を確認してコンは悟の背後に隠れた。
「何だ?何の用だ?」
「その前に謝らせてくれ・・・僕は嘘をついてた」
「嘘?」
「ああ、僕の目的だよ」
「どういう事だ?」
悟は風間が浮かべ始めた笑みに寒気を感じながら訊いた。
「ああ、僕の本当の目的は・・・・雫ちゃんの『覚醒』だよ」
冷たい笑みを浮かべ風間は言った。
「はあ?」
風間が何を言っているのか悟には理解できなかった。
「神山君。君はどのような状況が一番負の感情を引き起こすと思う?」
「・・・・」
悟は答えられなかった。思い浮かんだ答えはとても言えるものではなかったからだ。
「『死』だよ」
悟が言えなかった答えを風間はあっさりと言った。
「僕は、僕たちは今まで雫ちゃんの命を狙うことで雫ちゃんの覚醒を狙ってたんだよ」
「な、なんでだよ・・・何でそんな事!?」
「簡単だよ。僕はこの世界を消したいのさ」
「はぁ?なんで?お前は誰からも慕われて、スター性も持ってていい人生送ってるだろ?」
「何でも出来るからこそやめたいんだよ」
頭が良く、スポーツも出来、生徒会長として誰にも慕われる。そして、自分の思った通りに物事が進んでいく。
悟の普通過ぎる人生と同じようにこれもつまらない。風間はそう言った。
「そうか・・・お前がこの日を教えてくれたりして、味方だと思わせたのは・・・」
「そうだよ。この瞬間のためだ」
悟は自分の単純さを憎んだ。自分はまんまと風間の掌の上で踊らされたわけだ。
「おっと。長話するわけにはいかないんだ」
風間は拳銃を取出し構えた。
「逃げろ!!」
悟がそう叫んだ瞬間。
パァン
拳銃の発砲音が響いた。
しかし、悟はおろか背中にいる雫にも弾は当たっていない。
「こ、コン!!」
拳銃の弾が貫いたのはコンの体だった。コンは痛がった素振りをする暇もなくそのまま地面に崩れ落ちた。
「大丈夫か!?おい、コン!」
コンを抱きかかえた悟の手にはコンの血がベットリついていた。
「計画通りだ」
風間はそう呟いた。
「なんだと・・・何でコンを?」
「最初は雫ちゃんを殺すつもりでいたが、それで本当に死なれては困るからね。だから彼女の一番大切なものを殺すことにしたのさ」
雫の大事な唯一の友達であるコンが死ぬことで一番ショックを受けるのは雫だ。風間はそれを狙ったのだ。
「風間・・・お前だけは許さねぇ」
「仕返しがしたければ生き残ることだな。雫ちゃんを覚醒させずに」
不気味な笑みを浮かべて風間は去って行った。




