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決意の夜

 授業に遅刻し先生に怒られたのは言うまでもない。しかし、今の悟には授業に遅れる遅れない、怒られる怒られないなどはどうでもいい問題であった。

「今週の土曜日か・・・」

 悟の頭の中は雫のことでいっぱいだった。

「神山君」

「え?」

 気が付くと机の前に相川がいた。

「おい何やってるんだ?授業中に立ち上がって」

「神山君こそ何を言ってるの?」

「え?」

「授業は終わったけど」

「え?」

 周りを見ると多くの生徒が席を離れワイワイ雑談、談笑している。

「いつの間に・・・」

「結構前だよ」

 驚きを隠せない悟に呆れた様子で相川は言った。

「いったい何を考えてたの?」

「今度の土曜日・・・雫のことだよ」

「考え込むのは分かるけど、今のままなら大丈夫だと私は思うわ」

「どういう事だ?」

「コンちゃんの時にも言ったでしょ。コンちゃんが化物になったのは寂しいという負の感情が関係してる。これは雫ちゃんの覚醒にも言えるわ」

「つまり、雫に負の感情が無い限り覚醒は起こらない?」

「そういう事」

 相川は特に表情などは変えずに言うが、その言葉にはどこか悟をホッとさせるような優しさが含まれていたような気がした。

 だからと言って完全に不安が無くなるはずもなく、これからの授業のほとんどは頭に入ることがなかった。


 金曜日の夜。

 悟は雫が眠りに就いたのを確認して部屋を抜け家の外へと出た。

 お世辞にもきれいとは言えない夜空を眺めながら雫のことを、そして明日の運命の日について考えた。

 今まで悟は何度も「雫を守ってみせる」と言ってきた。もちろん本気で言っているつもりでいたが正直なところを言うと不安を隠すための強がりな部分もあった。

 不安で怖い。

 正直な今の悟の心の内はこの二つであった。

「何してるの?」

 河川敷のベンチに座っている悟の横に一人の女子が現れた。

「毎度神出鬼没だな相川」

 その女子とは当然のごとく相川薫であった。ストーカーされてるんじゃないかと思う位の出現率である。

「それが私だから」

 相川は悟の隣に座りながら言った。

「ついに明日だ・・・」

「そうね」

「お前の言う通り今のところ雫に負の感情は無く、変化などは起こりそうにない」

「いいことじゃない」

「ただ、嵐の前の静けさとも取れる」

「考えすぎよ・・・もっと前向きに」

 相川は必死に悟のことを元気づけようとしてくる。

「ああ、ありがとな相川」

 笑みを浮かべて悟は言った。

「いざとなったら私がいるわ」

「相川・・・」

「何言ってんだ。俺たちもいるだろ」

 不意に声が聞こえた。

「日向さん・・・みなさんも」

 声のした方向を見るとそこにいたのは日向とシノそして月の姿があった。

「なに二人でいい感じになってんだ?」

 笑いながら日向は言った。

「いい感じって何ですか!?」

「いい感じって言ったら、なぁ?」

「そうね~」

 悟の質問には答えず日向とシノはとてもうれしそうに笑いあった。

「・・・・・エッチ・・」

「え!?何が?」

 月からは完全な濡れ衣としか言えない言葉を浴びせられてしまった。

「何か・・・この雰囲気好き」

 相川がボソッと呟いた。

「え?」

「何て言えばいいのか分からないけど、このほのぼのした感じ?雰囲気の事だからうまくは言えないんだけど」

「分かるよ・・・俺も好きだ」

「え?」

「この人たちといると自然と笑っちゃう。今もさっきまでの緊張や不安が嘘みたいだ」

 悟の言葉を聞いて相川は優しく微笑んだ。

「この人たちと一緒ならきっと大丈夫。絶対負の感情なんか出ないし、万一が起きても乗り越えられる」

 悟は笑顔で言った。ヤル気が出てきた。

「その通りだ」

 悟の後ろから肩に腕を回して日向が言った。

「守ってやろうぜ。雫ちゃんを」

「はい」

 日向の笑みに答えるように悟も微笑み力強く返事をした。


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