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雫の友達

「こんにちは」

 悟は秘密基地として使っている空き教室の来ていた。

「やあ」

 本を読んでいた日向が悟に視線を向け、笑顔で返してきた。

「雫は?」

「今日も商店街に出かけてるよ」

「またですか」

 雫に外出許可が出てから三日経っていたが、雫は毎日のように出かけていた。もちろん、出かける先を伝えるという約束はしっかり守っている。

「毎日商店街に行って楽しいんですかね?」

「今の彼女にとっては商店街が学校みたいなのかもしれないね」

「なるほど。本当は学校にも行かせてあげたいんですけどね・・・」

 雫は命を狙われる前は小学校に通っていた。しかしその学校は今住んでる悟の家からかなり離れている。しかも、その学校は一番最初に襲われた雫の実家の近くだ。雫の命を狙う魔族が多くいる可能性はかなり高いと思われる。そのため学校に通わすことが出来ていないのだ。

「それはさすがにキツイな・・・今、自由に行動させているのもかなり良い待遇だからな」

「分かってますよ。ありがとうございます」

「いいってことよ」

 笑みを浮かべながら日向は言い、本の続きを読み始めた。

「・・・・・」

「あっ月さんこんにちは」

 ドアの開く音すら気付かないほど静かに入ってきて、悟の横に座った月に悟はあいさつした。

「・・・・こんにちは」

 月も静かな声であいさつした。

「月さんはどんな能力持ってるんですか?」

「・・・・・」

「どうしたんですか?」

 月は何も答えず俯いてしまった。

「・・・・」

「俺・・・いけないこと訊いちゃいました?」

「・・・・いいの」

 首を振りながら月は言い、そして続けた。

「私の能力もある意味、最悪になる可能性がある」

 苦しそうに月は言った。よく見ると細かく震えている。

「・・・わ、私は・・・」

「いや、いいです」

 月の言葉の途中で悟が遮った。

「・・・?」

「今は言わなくていいです。まだ俺と月さんはお互いのことを知らない。だからこれから一緒に過ごしていって、俺になら話していいと月さんが思ったら話してください」

 優しく笑顔を浮かべながら悟は言った。

「・・・ありがとう」

 ほんのちょっとの笑みを浮かげて月は言った。

「今日のところは失礼します」

 悟が立ち上がり言った。

「もう帰るのか?」

 日向が本から顔を上げて訊いた。

「はい。商店街で雫と会って帰ります。世話になってる商店街の人にもお礼を言いたいですし」

「そうか。じゃあな」

「・・・おつかれ」

「はい。さようなら」

 日向と月に見送られて悟は教室から出て行った。

「いい奴だな、あいつ」

「・・・そうね・・・・あんた以来よ・・・能力のこと言ってもいいと思ったのは・・・」

 いつもよりも明るい様子で月は言った。それを見て日向も嬉しそうに笑みを浮かべながら再び本に顔を戻した。


「お~い雫~」

 商店街で雫を見つけた悟は大声で呼んだ。

「悟さん」

 それに気付いた雫も笑顔でそれに答えた。

「こんなとこで何をしてんだ?」

 雫がいたのは商店街の隅の方、路地の入口にいたのだ。

「友達と遊んでた」

「友達?」

「あれ?コンちゃんがいない!?」

 辺りを探すようにキョロキョロしながら雫は言った。どうやらさっきまで隣にいて一緒に遊んでいたらしい。

「そういえば、自分は人間の前に出れないとか言ってたかな?」

「じゃあ、その子も魔族なのか?」

「うん。とてもかわいい子だよ」

 とてもうれしそうな笑顔で雫は言った。

「そうか、会いたかったな・・・・ん?」

「・・・・?」

 何かに気付いた悟に雫が首を傾げた。

「・・・もしかして、あれか?」

 悟は路地の奥の方を指さした。

 そこにはフードを深くかぶった小さな子がおどおどしながらこちらの様子を窺っている。

 その姿は『頭隠して尻隠さず』と言うより『体隠して頭隠さず』と言ったようにばっちり悟からばっちりその姿を確認することが出来た。

「あっコンちゃん」

「あれは隠れてるつもりなのか?」

 悟は呆れた様子で言った。

「コンちゃ~ん」

 雫が手を振りながら駆けて行った。

 コンと呼ばれるその子はビクッと驚いて逃げようとしたが雫ががっちりと捕まえた。

「・・・キャッ」

「逃げなくて大丈夫だよ。悟さんは大丈夫」

「・・・・」

 逃げようともがいていたコンの動きが止まった。そして悟の事を見つめてきた。

「大丈夫だ。こっちへ来てみな。家来るか?」

 笑顔で悟は言った。

「・・・・」

 まだまだ警戒はしているようだが、雫が説得してコンと呼ばれる子も一緒に帰宅した。

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