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「ほら、これ。うさぎだらけでしょ」
指を何回もスワイプして家族で島へ行った時に撮影をした画像を何枚か見せた。うさぎだけでなく、フェリーから撮影をした島の風景や島内の建物なんかも見せた。姉が可愛らしくポージングをしている写真もいくつかあった。
「ここに写っているのは君の家族か?」
「そう。これがお父さんとお母さん、これが姉」
「茶色い髪の毛……お人形みたい。綺麗な人ね」
ああやっぱり。
姉は見栄えが良いもんね。また姉が褒められてる。私、目の前にいるのにただのお飾りみたくなるのかな。
姉の影に隠れてしまう私という人間は何なの? いつものことで慣れてるから別に良いけど……。時代は違っても結局そうなるのは何だかやるせないな。
「家族仲が良いように見えるが、夏実はあまり笑ってないな」
「え?」
「楽しそうにはしゃいでいる中、夏実は何とも……窮屈そうに見える。これなんてそっぽを向いている」
ひいおじいちゃんが指摘をした画像はフェリーの座席に座っている時に私のスマホで父が撮った画像だ。私は外の景色を見て、それとは対照的に姉はカメラ目線でにっこりと笑っている。
「……写真を撮られるのはあんまり好きじゃなくて」
「なぜ? 写真は貴重なものだぞ。家族写真、記念日、誕生日、祝い事……その時の節目で写真館で撮るんだ」
何でこんなこと聞いてくるんだろ……。何て説明したら良いのか。ひいおじいちゃんは私の家族の事も知らないし、正直に言ってみようかな。今までずっと抱えているもやもやをご先祖様にぶつけてみようかな。ふとそんな気になった。
「家族写真が好きじゃない。姉と比較されるから。姉は可愛くて優しくて気が利いて。私とは違うし……みんな姉のことを褒めるし。私は自分のことは影みたいなものって思ってる」
その場がしんと静まり返った。
こんなこと言うんじゃなかった。これからうさぎを探しにいかないと行けないのに。私は元の時代に帰らないといけないのに。何やっているんだろう。ただ愚痴を言ってるだけじゃない、しかもご先祖様に。きっと呆れて何だこの小娘はって思っただろうな。
「なるほど……いわゆる劣等感というものだろうか。家族の中にそういう存在がいるのは辛いな。家族の縁はそう簡単に切れるものでもないしな」
その場に立っていたひいおじいちゃんは長椅子に腰をかけ、膝の上に手を置き背もたれに背中をあずけている。私の話を笑うことなく、真剣に受け止めてくれた。
「俺の父親も……まぁそういう感じだ。俺よりもずっと優秀で権威があって家の誇りで。ずっと比較されていると感じていた」
「そんなこと――」
芳子さんが何かを言いかけてすぐに口を閉じた。
「この診療所を継いだある日、気にしているのは自分で、父親は俺については特に何も思っていないというのがわかった。いや、この言い方だと誤解があるな……親より先に死ぬな。父の思いはただそれだけだったってことだ」
「医者になれって言われてたんじゃないの?」
「いや、今思い出しても父は俺のことについては何も口出ししてこなかった。自分が決めてこの道を選んだんだ。その中で勝手に父に追いつかなければ、父に認められなければ、周りにそう示さなければ……自分で勝手にそう意識していただけだったんだ」
自分の手に視線を向けていたひいおじいちゃんは顔を上げて私の目を見た。
「夏実もそうなんじゃないのか?」
「違う……私の場合は……だって周りの人がそう言うんだよ」
いつも優秀で性格も明るくて可愛らしい姉の話ばかり。姉がその場にいるだけで周りは明るくなるねって。私は姉といると特に目立つ性格でも見た目でもないし、その場にいてもいなくても特に困らない空気みたいな。そういう風に見られているんだ。
「だいたいの人は配慮なんてしないからただ思ったことをそのまま言っただけとか、夏実と姉を比較する意図なんて無いと思うが。自分で自分を生きづらくしているだけなんじゃないのか?」
「そんなこと……」
そうなのかな。みんながみんな姉の方ばかり見ていると思ってた。
「口には出さないが思っているだけとか、周りは夏実のことを大切にしていると思う。きっと今もご家族は急にいなくなった君のことを探しているんじゃないのか。目に見えて聞こえているものだけが真実じゃないんだぞ」
お説教をされているみたい。そんなの実際に言われたり見たりしないとわからないじゃん。でも……確かに姉はいつも私に優しいな。写真を撮る時も私に声を掛けるもんね。私はいつもこんな風にふてくされて写ったり断ったりするのに。
スマホの画面にはそっぽを向いている私が写っている。




