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33 とある新婚?家庭の様子(其の二)

どうって事ない日常の風景なので、はっきり言って面白くないと断言しておきます。

R18要素含みますが、これくらいなら引っかからないかな…

 土曜日の朝八時。


ピピピピッ ピピピピッ


 枕元のスマートフォンが鳴っている。紀夫は右手を伸ばしてスマートフォンを手にすると、アラーム停止のボタンをタップしてスマートフォンを黙らせた。


「おはよう。」


 伸ばされた左腕を枕にしていた楓が朝の挨拶をする。


「おはよう。」


 紀夫が挨拶を返すと楓が布団の中から両手をだして紀夫の顔をホールドする。顔を近づけて紀夫の唇を奪おうとしたが、紀夫の右手が唇をガードしたので未遂に終わる。


「ばい菌だらけだからやめとけ。」

「ケチ!」


 楓はプーッと頬を膨らませる。紀夫の顔から両手を離すと、体を起こして布団から這い出た。何も着ていない綺麗な裸体が紀夫の目の前に現れる。


「シャワー浴びてくる。紀夫も来たければどうぞ。」


 布団の周りに散らかっていた下着や寝巻きを手にして楓は和室から出て行った。

 紀夫も体を起こしてパンツを履くと布団を畳んで押し入れに押し込む。部屋の隅に畳んで置かれていた敷布団を広げると、男女の営みによって生じた匂いが僅かにしていた。布団カバーを外し、おねしょの様なシミのできた布団は後で干す事にした。


 週末に楓が紀夫の家に泊まるのは当たり前になっている。先週は真里の誕生日で紀夫はいなかったので紀夫の家に来なかった。土曜の夜はマスコミが押しかけていたので、来なくて正解だったのだが。

 先週甘えさせてもらえなかった分、昨夜の楓が紀夫を求める様はいつも以上に激しかった。


 脱衣所にある洗濯機に布団カバーを放り込んで適当に洗剤を入れてスイッチを押す。パンツを脱いで浴室に入ると楓が立ったままシャワーを浴びていた。紀夫は楓の背後から抱きつく。


「口を濯いで。」


 楓が言うのでシャワーのお湯を口に溜め、軽く口を濯いだ。楓は紀夫に抱きしめられつつ体を反転させると、紀夫は楓の唇を奪った。貪るような接吻をし終え、離れる唇と唇の間にキラッと糸がひく。


「朝ご飯の用意するわ。」


 そう言って楓が浴室から出ていく。紀夫は髭を剃り、シャワーを浴びた。浴室を出てTシャツとジーンズを身にまとうと、洗面台で歯磨きをした。和室にいって敷布団を抱え、二階のベランダまで持っていって干した。

 階段を降りてくると脱衣所からピーとブザーが聞こえる。洗濯が終わった合図だ。洗濯機か布団カバーを取り出すと、再びベランダまで来てカバーを干す。


 家事ポンコツの紀夫にしては、洗濯をするという行為が一人でできる様になった事は、大きな進化だった。これも(ひとえ)に楓の躾の賜物だろう。

 だが掃除や料理に関しては、未だ楓におんぶに抱っこである。楓は掃除については躾けるつもりであるが、料理については乗り気ではない。紀夫が料理をマスターしてしまうと自分の存在意義が無くなる様な気がするのだ。


 紀夫が二階から降りてきて台所に入る。朝食の用意の終わった楓がいた。楓は紀夫のTシャツにホットパンツという姿だった。ダブつく大きな彼シャツを着る女子というのは、見慣れた彼女であっても情慾を(そそ)られる。


「ありがとう。助かったわ。」

「あれくらいは大した事ない。礼を言うのは寧ろ俺の方だ。」


 ダイニングテーブルに並ぶ朝食を見て紀夫は言った。

 焼き鮭に昨夜の残りのポテトサラダ、ご飯と味噌汁。味噌汁の具は銀杏(いちょう)切りの大根とニンジンだった。質素な朝食だが、時刻は既に十時。じきに昼飯時になる事を考えると、遅い朝食はこれくらいの方がいい。


「ありがとう。」


 そう言ってチュッと楓に軽くキスをする。ウフフと楓は笑うとお返しのキスをした。『冷めないうちに食べましょう』と楓が言い、お互い向き合って席に着くと『いただきます』と合掌して朝食を食べだした。


 楓の作る味噌汁の味は、母親の咲恵が作る味噌汁とは少し異なる。出汁の取り方が違うのか、白味噌と赤味噌の配合比率が違うのか、家事ポンコツな紀夫にはわからない。一つだけ言える事は、紀夫にとって楓の作る味噌汁の方が好きだという事。咲恵の味噌汁も美味いが、楓の味噌汁の方が紀夫の胃袋にマッチするのだ。胃袋を掴まれたという事なのだろう。


「ごちそうさま。美味かった。」

「ウフフ。お粗末様でした。」


 紀夫は楓の料理を食べた後、必ずと言って良いほど幸せそうな顔をする。例え先ほどの様な質素な献立でも、それは揺るがない。楓はその顔を見るのが大好きだった。その顔を見たいが為に料理の腕を磨いてきたのだ。その労力が報われる瞬間で、至福の時でもある。


「今日はどうして過ごす?」


 楓が訊いた。


「とりあえず、バイクの洗車をしたいな。」


 来週末あたりに梅雨入りしそうだと天気予報が言っていた。紀夫は梅雨入りする前に、通勤で乗りっぱなしのハーレーの面倒をみてやりたかった。


「わかった。私は掃除しておくわ。」


 そう言うと楓は髪をサイドアップに軽くまとめ、掃除機をとりにいった。勝手知ったる他人の家と言わんばかりに、どこに何があるのか、楓はほとんどを把握している。知らないのは秀夫と咲恵の寝室くらいだ。


 紀夫はガレージに行くと、洗剤やワックスを準備し、ハーレーにホースから水をかけると洗車を始めた。

 換気のために開けられている家の窓から、ヴィ〜ンと掃除機の唸る音が聞こえる。時折、楓の鼻歌も混じって聞こえる。

 照りさす太陽は夏の日差しを容赦なく紀夫に浴びせかける。洗車を終え、ワックス掛けを始める頃には、紀夫の着ているTシャツは汗を吸いきれない程グッショリとなっていた。こうなると肌にへばりつくシャツは気持ち悪いので脱いでしまう。


「紀夫〜!後、どのくらいで終わりそう?」


 玄関のドアを開け、楓がヒョイと顔を出した。いつのまにか掃除機の音は止んでいた。


「一時間くらいで終わる。」

「了解!着替えのシャツ、持ってこようか?」

「要らない。」

「日焼けして痛くなっても知らないわよ。」


 パタンと玄関ドアが閉まる。


 ワックスを拭き取り終える頃、台所の換気扇の排気口から、魚を焼くいい匂いが漂ってきた。楓が昼食の準備を始めた様だ。

 ハーレーの洗車を終え、紀夫は家に入ると浴室に直行してシャワーを浴びた。


「着替え、置いとくわ。ご飯できたから早く出てきて。」


 楓は紀夫が脱いだ服を洗濯機に入れ、昨夜の洗濯物と一緒に洗った。


 シャワーを終えた紀夫が台所に来ると既に昼食の準備は終わっていた。


「朝の味噌汁が残ってたので、お昼は冷や汁にしてみたけど…」

「今日は暑いからいいんじゃないか。楓が作った味噌汁だ。美味しくいただくよ。」

「そう言ってくれると嬉しいな。あ、ビール要る?」

「ああ。楓も飲むだろ?と言うより、飲みたいんだろ?」

「ウフフ。バレてたのね。」

「付き合い長いからな。」


 楓は冷蔵庫から缶ビールと冷やしていたグラスを二つ取り出し、ダイニングテーブルに置いた。紀夫が缶ビールのプルタブをプシュッと開け、グラスにビールを注ぐ。


「ご飯はどれくらい?」

「多めに頼む。」


 楓は丼鉢(どんぶりばち)にご飯を多めに(よそ)うと、氷を入れて冷やした味噌汁をおたまで掬い、ご飯の上からかける。自分のご飯は少なめに装い、同じく味噌汁をかけた。

 テーブルの上に冷や汁の丼鉢と焼いた鯵の乗った皿が並ぶ。

 グラスをカチンと軽くぶつけて『乾杯』をし、ゴクゴクとビールを喉に流し込む。紀夫は一気飲みしてプハッと息を継ぐと、なんとも言えない幸福感に包まれた。

 『もう一本、飲むでしょ?』と言う楓のグラスも空になっている。紀夫が返事をする前に、楓は冷蔵庫から缶ビールを出してきて封を開けるとビールをグラスに注いだ。

 紀夫が鯵の身をほぐして丼鉢に入れていると、


「小骨に気をつけてね。紀夫は前科があるんだから。」


と注意した。以前、小骨が喉に刺さった事があり、大騒ぎした事を覚えていた。


「大丈夫だ。子供じゃあるまいし。」

「紀夫がそう言う時って、必ず何かをやらかすのよ。心配だわ。」


 楓の心配をよそに紀夫は冷や汁を口に掻き込んだ。



 昼飯を食べ終え、紀夫はリビングのソファに腰を下ろす。ラッキーストライクを一本口に咥えて火をつけた。フーと息を吐くと紫煙が部屋に広がる。

 至福のひと時だ。


 煙草を吸い終え、吸い殻を灰皿にギシギシと押しつけて消火すると、洗濯物を干し終えた楓がリビングにやってきた。

 紀夫の横にチョコンと座ると、先ほどまで煙草を持っていた紀夫の右手を掴み自分の鼻先へと持ってきてクンクンと臭う。煙草の臭いが楓の鼻腔を刺激する。


「煙草の臭いは苦手だけど、紀夫から漂う匂いは好きよ。」


 副流煙がどうとか問題視される昨今。他人に喫煙を毛嫌いされるのは愛煙家として別に思う事は無い。国家が煙草の販売を認めているのだから、マナーを守っている限り他人に喫煙をとやかく言われる筋合いはない。が、恋人に嫌煙されると心が折れるだろう。その点、楓は紀夫の喫煙を肯定してくれているので、紀夫は助かっている。


『そう言えば、真里も煙草の臭いについて否定的では無かったな…』


 海岸で真里と交わした会話を思い出す。


 『煙草の匂いがします。』

 『臭くないか?』

 『これも紀夫さんの匂いです。』



 楓は紀夫の手を離すと立ち上がり、紀夫の足の上に跨る様にして対面に座る。顔を近づけると紀夫の唇を奪った。紀夫の咥内に舌を入れると煙草の苦い味がするが、かまわずに舌を動かす。

 唇を離すと楓は詰問した。


「さっき、何を考えてたの?」

「別に。」

「ふーん…」


 楓は紀夫の手をとり、胸へと(いざな)う。


「相変わらずブラ付けてないのな。」

「付けてると窮屈なのよ。家の中にいる時くらいはいいでしょ?それに…」


 楓はチュッと軽くキスをする。

 

「紀夫もこの方が嬉しいんでしょ?」


 小悪魔の笑みを浮かべ紀夫を誘惑する。


「ああ、そうだな…」


 紀夫は首を伸ばして楓と唇を重ねた。



 翌日曜日。リビングのフローリングのワックス掛けと、敷いていたセンターラグを洗って干す作業が二人を待っていた。

 もちろん、敷布団と布団カバーがベランダに干されていた。

お読みいただきありがとうございました。


愛煙家には世知辛いご時世です…


(`-ω-)y─ 〜oΟ

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