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31 牛に引かれて善光寺参り

やっちまいました…

スーパーセブンにドアはありません…orz

なので修正しました。

 誕生日パーティーの後、紀夫は佐々倉邸に泊まった。いや、泊まらされた。

 紀夫の家の周りに記者が集まっているとの情報があったのだ。


 で、一夜明けた日曜日。真里は朝からご機嫌だった。紀夫との誕生日デートだからだ。


「こっちですよ。」


 真里が紀夫を案内した先はガレージだった。屋内ガレージのシャッターは全て開かれ、十台の車が並んでいた。

 右端に駐まっているのは、昨日乗ったロール○ロイスのリムジンだ。

 その横には、黒いメル○デスS400セダンが三台。このメル○デスは紀夫を迎えにきたり、紀夫の家に真里が乗って来たりしているので、紀夫にはお馴染みだった。

 その横に駐まっているシルバーのレク○スLS500。

 ここまでは実用的な車である。

 残りの五台はクラシックカーで、兼吉が趣味で集めた車だと真里は言った。


 ケータハム スーパーセブン

 トヨタ 2000GT

 ポルシェ911 930型カレラ

 ACコブラ MKⅡ

 シボレー・コルベット C1型


「どれにしますか?」


 真里はドライブに行きたいと言い、どの車で行くか紀夫に決めて欲しいと言った。


 紀夫は真里を見た。真里の今日の服装は、白のノースリーブ・ワンピースに紺のカーディガン。少し寒いかなとは思いつつ、一度乗ってみたいと思っていた車にした。


「こいつにするよ。」


 紀夫が選んだのはスーパーセブンだった。


「そうだと思いました。」


 真里は自分の予想が当たった様で、はしゃいでいた。


「鍵は付いてますよ。」


 そう言って真里は早速、助手席に乗り込む。

 紀夫も運転席に乗り込み、エンジンをかける。


ヴォン ヴォン ヴボボボ…


 スーパーセブンの心臓が唸りを上げた。


「どこへ連れて行ってくれるの?」


 真里が訪ねる。紀夫はこの時期になると行きたくなる店があった。

 左腕にはめたタグホイヤーを見ると、八時を過ぎたばかり。時間はある。


「かき氷を食べに行くぞ。」

「えー!」


 真里はブーイングした。かき氷なら近くの喫茶店でもやっている。ドライブデートとは言えない。


「携帯の外部バッテリーは持ってきたな?」

「ええ、持ってきましたよ。」

「じゃ、これに繋いでくれ。」


 紀夫は自分のスマートフォンを出した。真里はバッテリーとケーブルを鞄から出すと、スマートフォンに接続した。

 紀夫はスマートフォンでナビアプリを起動すると、行き先を設定して案内を開始させる。


「ナビを頼むぞ。」


 紀夫はスマートフォンを真理に渡した。真里は行き先を確認すると、途端に顔をパーッと明るくした。


「任せて下さい!しっかりと案内しますね。」


 フンスと鼻息荒く、グッと拳を握る真里を見て、紀夫は溜息混じりに呟く。


「いや、案内はアプリがしてくれるんだが…」

「何か言いましたか?」


 真里がコテンと首を傾げて紀夫を見た。紀夫は慌てて前を向いた。


 クラッチを踏み込みギアをローに入れる。アクセルを踏み込みつつクラッチを繋ぐとスーパーセブンはゆっくりと動き出した。


 街中を抜け、中央道へ入り西へと向かう。長野道、上信越道と走って長野ICで高速道を降りた。


「次の信号を左。」

「次の三叉路を右。」


 真里が楽しそうにナビをする。


 目的地に近づくと観光名所だけあって人が多い。信号待ちで停車すると歩行者がチラチラと見てくる。

 オープンカーを駆る美男子と助手席に乗る美少女。絵になるが故に悪目立ちしていた。


 駐車場に車を預けて歩き出す。


「ここが善光寺なんですね。」


 仁王門の前で真里は呟いた。


「なぜ善光寺なんですか?かき氷を食べに行くって言ってませんでしたっけ?」


 真里がもっともな質問をした。


「かき氷を食べるだけでは、デートっぽくないだろ。」

「ウフフ…好きですよ、紀夫さんのそういうところが。」


 真里は紀夫の左腕に抱きついた。真里の大きな双丘の谷間に、紀夫の腕が挟まる。紀夫の股間が少し膨らんだのを真里は見逃さなかった。


『女として感じてくれてるんだ…』


 真里の顔が少し嬉しそうになる。


「真里は腹減ってないか?」


 紀夫の不躾な質問に、真里はプーッと頬を膨らませた。


「もー!紀夫さんって、たまに残念な人になりますよね。」

「何を怒ってるんだ?」

「なんでもないです!」


グーーー


 真里のお腹が鳴った。


「なんだ、腹減ってんじゃないか。お腹は正直だな。」


 紀夫は笑った。


「こ、これは紀夫さんが悪いんです!『お腹空いてないか?』なんて訊くから。」


 お腹が鳴った事が恥ずかしく、真里は顔を真っ赤にしながらワチャワチャと言い訳をした。


 門前町の土産屋などを見つつ歩いて、蕎麦屋に入った。

 十割の信州そばを堪能して、善光寺の境内へと入る。

 三門をくぐり、本堂でお参りをしてしばらく境内を散策した。


 駐車場に戻って来ると時刻は午後二時を過ぎていた。


「少し急ぐぞ。」


 紀夫が急かすので、真里も慌ててスーパーセブンに乗り込む。

 小一時間ほど走り、紀夫の目的とする店に来た。

 国道から一本、脇に入った地道沿いにその店はあった。店の前にある駐車場はほぼ満車だった。

 行列に並ぶこと三十分。二人は店内に案内された。


 メニューを見て紀夫はメロン、真里は苺練乳を頼んだ。


「紀夫さん。かき氷だけの為にわざわざ長野まで?」

「ここのかき氷って天然氷を使ってるんだ…」


 紀夫が大学二年の夏、たまたまテレビの情報番組でこの店を紹介していた。

 店の裏には氷を作るためのプールがあり、冬になるとプールにはった氷を切り出し昔ながらの氷室で保管し、夏にかき氷として提供していると言っていた。

 気になった紀夫は、すぐさまハーレーに乗り、かき氷を食べに来た。都会で提供される製氷機で作られた氷のかき氷と違い、氷が柔らかく感動した。


「…で、それ以来、毎年一回はここのかき氷を食べに来てる。」

「へぇ。紀夫さんって、変にこだわる人なんですね。」


 クスクスッと真里は笑った。紀夫はポリポリと頬を掻いた。


「お待たせしました。メロンと苺練乳になります。」


 エプロンをした女の子がかき氷を持ってきた。


「いただきます。」


 真里はスプーンを手にするとシャクッとかき氷にさした。一口分の氷を掬って口に入れる。


「うーん、冷たいけど美味しい!紀夫さんが言ったとおりです。氷の口当たりが優しい。」


 真里はウンウンと納得する仕草をした。


「真里はさぁ。キーンって頭が痛くなる事は無いのか?」

「あー、アイスクリーム頭痛ですか?私はなった事がないですね。友達に何人かいますけど。紀夫さんは?」

「俺もなった事が無い。一度は経験してみたい気もするけどな。」

「あれ、結構辛いって友達が言ってますよ。私はノーサンキューです。」


 たわいない話をしながら、時間がゆっくりと流れていく。


「私ね…」


 かき氷を半分ほど食べ、スプーンでシャクシャクと残った氷を切りながら真里が言った。


「なぜ『紀夫さんが婚約者だ』って昨日言ってしまったのか考えてました。」


「今、幸せだからなんだと思います。幸せな私を皆んなに知って欲しかった。だから言ってしまったんだなって。」


「紀夫さんと知り合えて、本当に良かったって思ってます。」


 出会いは偶然だった。紀夫と出会う事なく、あのまま見合いをし、相手の男と交際を始めていてたらどうなっていたのか。きっと今の様に楽しくは無かったはずだと思える。


「紀夫さんといると、私の知らなかった世界が見えて来る気がするんです。」


 紀夫と出会えた偶然が、私を良い方へと導いてくれていると真里は確信している。

 


 かき氷を食べ終え、後は帰るだけだった。二人はスーパーセブンに乗り込む。


「紀夫さん、見て!」


 真里は口を開けて舌をベーッと出した。かき氷の苺シロップで舌が真っ赤になっている。


「真っ赤でしょ?紀夫さんの舌は緑になってるよね?見せて!」


 やれやれといった感じで紀夫は真里の方へ体を向け、口を開けて舌を出した。


 刹那、真里は紀夫の顔を両手で押さえ込むと顔を近づけ、紀夫の舌を唇で咥えた。そのまま紀夫の唇に重ねていく。


 紀夫の舌から、ほんのりシロップの味がした。

お読みいただきありがとうございました。

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【牛に引かれて善光寺参り】

思いがけないことが縁で偶然よい方に導かれること(小学館ことわざ大辞典)



(`-ω-)y─ 〜oΟ

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