↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/7

第六章 悪役令嬢、全てわかりましたわ!?

――その夜。


 アリアは自室のベットの上で考えていた。


 リリアの遺体が発見された旧図書塔。


 被害者の部屋から見つかった紙。


 特殊なインク。


 密室。


 そして――。


 リリアが事件前に漏らしていた言葉。


 ――誰かに見られている気がする。


「…………」


 アリアは腕を組んだ。


「一度、全部ばらして考えましょう」


 探偵の基本と、なにかのドラマでやっていた。


「まず、皇太子殿下」


殿下の特殊なインクが使われていた


 だが。


「...筆跡は殿下のものではない」


 そして皇太子本人にはアリバイがある。


 事件当日の九時頃、リリアと会っていた。


 その後、九時二十分頃には王宮へ戻り、それ以降は複数の侍従と共にいた。


 殺害推定時刻は十時頃。


「殿下は犯人ではありませんわ」


 次に。


「セドリック殿」


 リリアの弟。


 姉が誰かに見られていると怯えていたことを知っていた。


 事件当日は生徒会室にいた。


 生徒会のメンバー数人が証言している。


「セドリック殿も違う」


 ならば。


「...密室」


鍵は生徒には入手できない


 それでも扉は内側から施錠されていた。


 だが。


「細い糸」


 犯人は鍵に糸を結び、部屋を出たあと外から糸を引いた。


 鍵が回る。


 そして糸だけを回収する。


「これで密室は作れる」


 アリアはそこまで呟いて。


 ふと、顔を上げた。


「...殿下のインク」


 アリアは目を細めた。


「犯人は、皇太子殿下の部屋に侵入して、この紙を書いた」


 そして。


 リリアの部屋へ置いた。


「…………」


 そこで。


 アリアの目が見開かれた。


「待って」


 アリアは勢いよく立ち上がった。


「皇太子の部屋に侵入」


 紙を書く。


「リリアさんの部屋にも侵入」


 紙を置く。


「さらに事件現場にも侵入」


「…………」


 アリアは両手を頭に当てた。


「どんだけ侵入してますの!?」


 静かな部屋に叫び声が響いた。


「不法侵入のプロですの!?」


 しかし。


 冗談を言っている場合ではない。


「...はぁ」


 アリアはゆっくり考える。


「犯人は事件現場以外に二箇所入れる人物」


 一つ。


 皇太子の部屋。


 二つ。


 リリアの部屋。


「そんなことができる人間……」


 さらに。


「リリアさんを日頃から監視できる人物」


 アリアは目を閉じる。


 その瞬間。


 ひとりの人物が脳裏に浮かんだ。


「…………」


 アリアは首を振る。


「いや」


 まさか。


 そんなはずはない。


 だって。


 彼はずっと。


 自分に協力してくれていた。


「…………」


 だが。


 考えれば考えるほど。


 辻褄が合ってしまう。


 犯人は彼女の行動を把握していた。


 皇太子の部屋に入れる。


 リリアの部屋にも入れる。


親しい人間。


 そして。


 どうしてか入手した私のハンカチを


事件現場に置いた。


「…………」




 ――翌朝


 旧図書塔。


 朝日が、古びた窓から差し込んでいる。


 アリアは窓辺に立っていた。


 外を見つめたまま、じっと誰かを待っている。


「…………」


 ここへ来ることは分かっている。


 犯人は必ず来る。


 自分が「最後の証拠を見つけた」と聞けば。


 ――必ず。


 カチャ。


「…………!」


 扉の鍵が回った。


 アリアはゆっくり振り返る。


 古びた扉が、軋みながら開いていく。


 廊下から差し込む光。


 その向こうに立っていたのは――


「…………」


 見慣れた顔。


「カイル……」


 カイルは何も言わず、部屋へ入ってくる。


 そして静かに扉を閉めた。


 カチャリ。


 鍵がかかる音が、やけに大きく響いた。


「どうしてここに?」


 カイルが尋ねる。


探したんだよ。と


 いつもの穏やかな声。


 いつもの優しい笑顔。


 けれど。


 アリアはもう、その笑顔を信じていなかった。


 一歩。


 カイルが近づく。


「何か見つけたの?」


「ええ」


 アリアは答えた。


「最後の証拠を」


 カイルの足が止まった。


「……そう」


 ほんの一瞬。


 その瞳から、笑みが消えた。


 アリアはそれを見逃さなかった。


「では――」


 アリアは静かに言う。


「答え合わせをいたしましょうか」




「事件三日前」


 アリアはカイルを見る。


「私はハンカチを失くしましたわ」


 カイルは黙っている。


「そして、そのハンカチを――犯人は偶然拾った


私のものだとわかって」


「…………」


「そこで、思いついてしまったのね」


 アリアの声が静かに響く。


「私を犯人に仕立て上げることを」


「…………」


「犯人はまず、皇太子殿下の部屋へ侵入した」


 カイルの表情が僅かに変わる。


「リリアさんと殿下が婚約者同士で、犯人自身も二人と親交があり何度か顔を合わせていた」


「…………」


「だから、殿下の部屋に入っても不自然ではなかった」


 アリアは続ける。


「みんなで集まった時に、こっそりと..」


 皇太子の机。


 そこに置かれていた特殊なインク。


「そして、紙片に文字を書いた」


 ――『旧図書塔 十時』


「…………」


 アリアは目を細める。


 カイルは何も言わない。


「その紙をリリアさんの部屋へ置いた」


 リリアはそれを見て。


 皇太子からの呼び出しだと思った。


 そして。


「旧図書塔へ来た」


 アリアは一歩、カイルへ近づく。


「そこで、リリアさんを殺した」


「…………」


「刃物で何度も刺して」


 アリアの声が少しだけ低くなる。


「余程、恨みが強かったようね」


 カイルの目が伏せられる。


「…………」


「リリアさんが皇太子を選んだから?」


 沈黙。


「皇太子殿下との婚約を受け入れたから?」


 それでも答えはない。


「『僕のものにならないなら、誰のものにもならなければいい』」


 アリアは静かに言った。


「そう思ったのでしょう?」


 カイルの指が、僅かに動いた。


 アリアは続ける。


「そして殺害したあと」


 密室。


「捜査の手を阻むために、糸を使った」


 鍵に糸を結び。


 部屋の外から鍵を回す。


 そして糸だけを回収する。


「密室を作り出した、


リリアさんを誰にも


見つけて欲しくなかったのかしら」


 アリアは現場を思い出す。


「現場に残っていたものは、ほとんど何もなかった」


 けれど。


「私のハンカチだけが残されていた」


 アリアは自分の胸元に手を当てる。


「私が三日前に失くしたもの」


 カイルを見る。


「私に疑いの目が集まるのも、分かりますわ」


 性格の悪い悪役令嬢。


 リリアさんとの関係。


 周りの評価。


「犯人からすれば、これ以上ないほど都合がよかったでしょうね」


 アリアは笑う。


そしてーー。


「私は、すぐ隣で捜査の進展を話していましたもの」


 カイルは黙っている。


「あなたはそれを聞いていた」


「…………」


「あたかも仲間だと偽って」



 カイルの顔から。


 完全に笑顔が消えた。


「…………」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。