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第五十五話 言い直す

Bar Haven。


グラスを傾ける。

氷が鳴る。


音だけが、やけに残る。


カウンターに肘をつく。

視線は落としたまま。


考えているわけじゃない。

ただ、頭から離れない。


――一回だけでいい。


小さく息を吐く。

グラスを回す。


氷が、ゆっくり動く。


――逃げずにこい。


指先が、わずかに止まる。


自分の手を見る。


何も握っていない。

それでも。


あの感触だけが、残っている。


――くだらない。


グラスを傾ける。

酒が喉を通る。


消えない。


「……蒼井くん」


自分から呼んでいた。


湊が顔を上げる。


「はい」


短い返事。

湊の手が、わずかに止まる。

視線は合わせないまま。


「……行くだけなら」


言いかけて、止まる。


グラスを見る。


氷が揺れる。


「……いや」


小さく息を吐く。


言葉を切る。


湊は何も言わない。


グラスを拭く音だけが残る。


少しして。


「……一回だけ、見に行く」


ぽつり。


自分に言い聞かせるみたいに。


湊の手が、わずかに止まる。


「そうですか」


それだけ。


咲也は頷かない。


ただ、グラスを持つ。


氷が鳴る。


さっきより、少しだけ軽い。


Bar Havenの夜は、静かに続く。


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