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第四話 月に一度

七年目の夜。

彼には、誰にも知られない時間があります。

月に一度、と決めている。


衝動ではない。

習慣でもない。


ただの確認だ。


自分がまだ、男を欲する側の人間であることを。


仕事を終え、Bar Havenを出る。


扉を押して外に出る。


背中に、なにかが残る。


視線か、気のせいか。


振り返れば確かめられる。


だが、振り返らない。


胸の奥が、妙にざわつく。


体が、じわりと熱を持っていることに気づく。


――そうか。もう一ヶ月だった。


エレベーターのボタンを押す。


ガス抜きが必要なだけだ。


そう自分に言い聞かせる。


二階の灯りが、ゆっくりと閉じていった。



駅を二つ乗り換え、雑居ビルの三階へ上がる。

目立たない小さなプレート。


受付で会員証を提示し、入場料を払う。

渡されたロッカーキー。23番。


それが今夜の自分の名前だ。


ネクタイを外し、ジャケットを脱ぐ。

鏡に映る男は、ホテルのベルではない。


ドアを抜けると、空気が変わる。


薄暗いラウンジ。

壁沿いのソファ。

低く流れるジャズ。


服は着たまま。

声は小さく。

名前は呼ばれない。


視線だけが、行き交う。


次話、夜はさらに深くなります。

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