表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/70

第三十七話 朝の弧

いつも読んでいただきありがとうございます。


「夜の決意」の翌朝。

今回は少し静かな朝の回です。


庭でのキャッチボール。

大きな出来事はありませんが、夜のあとに訪れる日常の時間を書いてみました。


それぞれの距離や空気を、少し感じてもらえたら嬉しいです。


朝の空気は、少し冷たかった。


客間の障子の向こうが、うっすら明るい。


湊は目を開けた。


しばらく天井を見つめる。


昨夜のことを思い出しそうになって、軽く首を振る。


体を起こす。


家の中は、まだ静かだった。


廊下を抜け、リビングを覗く。


ソファは空だった。


そのまま外へ出る。


庭に、咲也がいた。


軽く肩を回している。


その手にはボール。


少し足を止める。


「早いですね」


咲也が振り向く。


「ああ」


短い返事。


「目が覚めた」


咲也が庭を見回す。


「グローブ、あったよな」


縁側を顎で示す。


そちらを見る。


スポーツバッグ。


昨日、双子が使っていたものだ。


バッグを開ける。


中には子ども用のグローブが二つ。


その奥に、大人用が二つ入っていた。


一つはくたびれている。

もう一つは、まだ新しい。


古い方を咲也に放る。


咲也はそれを受け取る。


グローブを一度、軽く叩く。


乾いた音。


指を入れ直す。


それだけだった。


新しい方をはめる。


まだ革が少し硬い。


咲也がボールを握る。


ふわり、と投げる。


弧は小さい。


庭はそれほど広くない。


数歩下がれば、もうフェンスだ。


手を出す。


パシッ。


乾いた音が、朝に響く。


思ったより速い。


ボールを投げ返す。


咲也が受ける。


また一つ、弧が空に浮かぶ。


ボールが行き来する。


距離はそれほど遠くない。


このくらいが、ちょうどいい。


近すぎず、遠すぎない。


それでいい。


今はまだ。


そのときだった。


「なにしてるの!!」


元気な声が飛ぶ。


振り向く。


海斗が縁側に立っていた。


その後ろから陸斗も顔を出す。


「ずるい」


「……朝から野球」


咲也が呆れた顔をする。


「起きてたのか」


海斗は元気よく言う。


「混ぜて!」


陸斗も真顔で頷く。


「……キャッチボール」


咲也は小さく息を吐く。


「庭だぞ」


海斗がボールを見る。


「さくちゃん、本気で投げて!」


咲也は即答する。


「この庭でやったら、壁に穴開くぞ」


陸斗が少し考える。


「……じゃあ公園」


思わず笑った。


朝の空気が、少しだけ温かくなっていた。



ここまで読んでくださりありがとうございます。


夜に決意があっても、朝になればいつもの生活が始まります。

この回はそんな、少し穏やかな時間の場面でした。


そして双子が起きてくると、静かな空気も一気に賑やかになりますね。


物語はまだ続きます。

また次の回でもお付き合いいただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ