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第二十九話 再会

青空野球教室から数日。


いつものBar Havenに、思いがけない客が現れます。


咲也の過去を知る男。


静かなバーの夜で、止まっていた時間が少しだけ動き始めます。

夜のBar Haven。


低い照明の下、グラスの音と静かなジャズが流れていた。


カウンターの奥では、湊がグラスを磨いている。

奥の棚の前では、マスターが酒瓶を整えていた。


咲也はカウンター席に座り、グラスの氷を揺らす。


小さな音が、静かな店内に落ちた。


その時、ドアベルが鳴る。


咲也は顔を上げた。


入ってきたのは黒崎だった。


「よ」


いつもの軽い声。


咲也は小さく息をつく。


……また来たのか。


黒崎は勝手知ったる様子でカウンターに座る。


「俺はいつもの」


湊が頷く。


「かしこまりました」


その後ろに、もう一人立っていた。


背の高い男だった。


咲也の手が、ほんのわずかに止まる。


だが、わざわざ顔を見る気もなかった。


湊が静かに声をかける。


「いらっしゃいませ」


黒崎が隣を見た。


「なんにします?」


男は店内をゆっくり見回していた。


落ち着いた目だった。


「同じでいい」


隣の席に腰を下ろす気配がした。


低い声だった。

どこか懐かしさを感じる。

……気のせいだろう。


湊がグラスを用意する。


氷の音。


シェイカーの軽い音。


咲也はグラスをゆっくり回す。

氷が静かに鳴った。


黒崎のせいで、余計なことは考えたくない。

ここは咲也にとって、くつろげる場所なのだから。


黒崎がにやりと笑う。


「相変わらず無視か」


咲也は答えない。


その時だった。


カラン。



「……久しぶりだな。咲也」


咲也の手が止まる。


ゆっくり顔を上げた。


男が笑っている。


少し見下ろすように。


「なんて顔してんだ」


胸の奥がわずかに揺れる。


咲也の喉が動く。


「……神代」


口からこぼれ落ちたのは、


かつて同じチームで投げていた男の——


そして、


咲也がかつて好きだった男の


名前だった。



ここで、ついに神代が登場しました。


再会は派手なものではなく、バーの静かな空気の中で起きます。


この回ではまだ多くを語りませんが、

咲也の過去と、今の生活、

そして湊との関係が少しずつ交差していきます。


次回は「探る男」。


神代の視線が、咲也と湊の関係に向いていきます。

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