第二十七話 視線
青空野球教室が終わった午後。
子どもたちの歓声も、白球の音も、ゆっくりと遠ざかっていきます。
咲也たちは、いつものように四人で帰っていく。
ただ、その光景を見ていた人物が一人いました。
フェンスの外から――。
これは、その「視線」の回です。
やがて教室が終わる。
人が散り始める。
親子連れが帰っていく。
グローブを抱えた子どもたち。
その流れの中に、四人の姿があった。
フェンスの外から、一人の男がそれを見ていた。
男の視線が止まる。
——咲也。
間違えるはずがない。
七年。
姿はほとんど変わっていない。
子どもたちに囲まれて、少し困ったように笑っている。
その笑い方も。
男はゆっくり息を吐いた。
その時だった。
咲也の隣に、一人の青年がいることに気づく。
細身で、背が高い。
少し後ろを歩いている。
だが視線は、ずっと咲也に向いていた。
男の目が、わずかに細くなる。
双子が先に走り出す。
「さくちゃーん!」
弾んだ声。
咲也が困ったように笑った。
その横で、青年も小さく笑う。
四人は並んで歩いていく。
双子が騒ぎながら走る。
咲也が声をかける。
その後ろで、青年が並んで歩いていた。
やがて四人は、公園の出口へ向かっていく。
男は何も言わない。
ただ、その背中を見ていた。
その隣に、あの青年がいた。
野球教室が終わり、帰っていく四人。
その後ろ姿を、フェンス越しに見つめる男がいました。
まだ名前は明かされていません。
ただ、咲也を知っていることだけは確かです。
そして、その視線はもう一人――
咲也の隣を歩く青年にも向けられていました。
止まっていた時間が、静かに動き出します。




