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第二十三話 青空教室

日曜の朝。


双子に連れられて、公園の野球教室へ。

少しだけ、いつもと違う一日が始まります。

日曜の朝。


公園のグラウンドには、子どもたちの声が響いていた。


「さくちゃーん!」


海斗が大きく手を振る。


陸斗もその隣でグローブを抱えていた。


咲也は小さく息を吐く。


「だから、さくちゃんはやめろって」


「いいじゃん」


海斗が笑う。


「呼びやすいし!」


その横で、湊がくすっと笑った。


「人気ですね」


咲也は肩をすくめる。


「そうかな。舐められてるだけの気がするけどね」


ここは青空野球教室。


双子が最近通い始めたもので、今日はその付き添いだった。


湊も一緒だ。


双子はすっかり湊に懐いている。


夏希にも気に入られ、最近はよく家に呼ばれるようになった。


なぜか咲也とセットで。


「すまないな、蒼井くん。付き合わせて」


今日は夏希は単発の仕事で、夫もロケで不在だ。


湊は首を振る。


「いいんですよ」


「楽しいですから」


少し照れたように笑う。


「仕事以外、あまり外に出ないので」


「いい気晴らしになります」


咲也は少し驚いた。


「そうなのか」


湊は苦笑する。


「食事もインスタントばかりで」


「こうしてちゃんとしたご飯を食べられるのも嬉しいです」


咲也は小さく顔をしかめた。


若い食べ盛りだろうに。


「妹の家に来る時は、遠慮しなくていい。

飯くらいは作る」


「ありがとうございます」


湊が微笑む。


自分の家は却下だ。


散らかっているし、人を呼んで食事をするような家でもない。


それに――


湊を自宅に入れるのは、まだ少し抵抗があった。


……だというのに。


最近、湊と過ごすこの時間が、妙に心地いい。


――恋では、ない。はずだ。


その時だった。


「お 高宮さんじゃん」


低い声。


咲也の肩がわずかに強張る。


振り向くと黒崎だった。


「ちょうどいい」


何がちょうどいいのか。


こっちは最悪だ。


聞こえないふりをして踵を返す。


だが。


がっしりと肩を掴まれた。


引き戻される。


「まあまあ、そんな邪険にせんでも」


「とって食いやしない」


「ちょっと頼みがある」


警戒を崩さず睨みつける。


すると黒崎が言った。


「コーチに欠員が出た」


思いがけない言葉に首を傾げる。


「欠員?」


「ああ。体調崩して来れなくなってな」


黒崎は肩をすくめる。


「ぶっちゃけ人手が足りねえ」


「ちょっと手伝ってくれないか」


「謝礼は出す」


咲也は少し考える。


……子ども相手か。


海斗と陸斗の付き添いで来たのだから。


キャッチボールくらいなら。


「軽く教えるくらいなら」


黒崎が笑った。


「十分だ」


「あと金はいらない。礼というなら俺に構わないでくれ」


黒崎は笑う。


「はは、嫌われちまったな」


「まあそれは無理だ。なんせ憧れの高宮投手だからな」


ちっ、と心の中で舌打ちする。


それが顔に出たらしい。


黒崎がわざとらしく目を丸くした。


「おうおう、怖い顔しちゃって。ホテルの時とはえらい違いだ」


「お客様をぞんざいには扱えないからな」


「じゃあ今ならいいのかよ」


黒崎が笑う。


「本当にあんた、面白いねえ」


咲也の肩を軽く叩く。


「じゃあ、主催に伝えておくわ」


黒崎はグラウンドの外へ歩いていった。


咲也は小さく息を吐いた。


それから湊の方へ歩いていく。


「すまない。少し手伝うことになった」


「蒼井くん、海斗と陸斗頼まれてくれるか?」


湊は手を振る。


「大丈夫です」


「元々二人の付き添いで来たんですし」


「子どもたち喜びますよ」


「楽しんで来てください」


「うん。ありがとう」


咲也はグラウンドへ歩いていった。


その背中を見送りながら、黒崎はポケットからスマートフォンを取り出した。


画面を一度だけ確認する。


通話ボタンを押す。


コール音。


二回目で繋がった。


黒崎は小さく笑う。


「……俺です」


少し間を置く。


「……今、どちらに?」


そして、グラウンドの方をちらりと見る。


子どもたちの中へ歩いていく咲也の背中。


黒崎は肩をすくめた。


「面白いもん見れますよ」

今回は青空野球教室の導入回でした。


次回はグラウンドでキャッチボール。

少しだけ、昔の高宮が顔を出します。


お付き合いいただけたら嬉しいです。

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