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第十七話 静かな夜

いつも読んでくださりありがとうございます。

今回はお泊まり回の続き、

少し静かな夜のお話です。

賑やかな夕食のあと、

少しずつ落ち着いていく家の時間。

双子たちと過ごす夜の中で、

咲也と湊の距離も少しだけ近づきます。

ゆっくりとした時間を楽しんでいただけたら嬉しいです。


食事が終わると、湊が言った。


「片付けますよ」


「いいって。客なんだから」


「いえ、さすがにそれは」


一度は断ったが、結局押し切られた。


皿を重ね、場所を伝える。


「ここが食器棚。洗剤はこっち」


「ありがとうございます」


水の音が静かに流れる。


その時。


「僕たちもやるー!」


歯磨きを終えた双子達がまとわりついてきた。


「危ないから離れてなさい」


「えー」


「拭く係ならいいよ」


湊が笑って言う。


すると二人は急にやる気を出した。


「やる!」


「ぼく拭く!」


困ったように笑いながら皿を洗う湊を見て、咲也は風呂へ向かった。


今日は色々あった。


湯船に浸かる。


肩まで沈むと、自然と息が抜けた。


ぱしゃりと顔に湯をかける。


……満更でもないと思っている自分に驚いていた。


風呂から上がると、双子はもう舟を漕いでいた。


「寝るぞ」


双子に声をかけて前抱きに抱え上げる。


湊が声をかけた。


「手伝います」


「大丈夫。いつものことだから」


慣れた手つきで子供部屋へ運び、ベッドにそっと寝かせた。


小さな寝息。


リビングに戻ると、湊はまだテレビを見ていた。


仮面ライガー。


「面白いんですね。ライガーって」


咲也はソファに座る。


「ライガーはな」


「作戦とか、意外に深くて大人が見ても楽しめるんだ」


「あとアクションも体張ってるの多くてさ」


「子ども向け30分番組にさ、大人の全力が詰まってるんだって」


「妹の受け売りだけど」


そう言ってウインクする。


湊がくすりと笑った。


そのまま、なんとなく二人でテレビを見ている。


静かな時間だった。


テレビの音だけが部屋に流れている。


ふいに。


「赤いの、消えましたね」


湊がぽつりと言った。


咲也は一瞬、右手首に視線を落とす。


「ああ」


短く答える。


湊は小さく頷いた。


「良かった」


それだけ言って、またテレビに目を戻す。


しばらくして、湊が口を開いた。


「オムライス、美味しかったです」


「俺、高宮さんにもらってばっかりで」


「何か返したいんです」


咲也は何も言わなかった。


テレビの中ではヒーローが必殺技を決めていた。


しばらく沈黙が続く。


それから湊が静かに言った。


「だから」


湊は視線を落とした。


「……守らせてください」


その言葉と同時に、そっと右手の甲に手が添えられた。


咲也は動けなかった。


動悸がうるさい。


見てしまったら、何かが変わってしまいそうで。


ただ視線だけが、テレビの中のヒーローを追っていた。


ソファの上で、静かな時間が流れる。


テレビの光が、部屋をゆっくり照らしていた。


気づけば、少し眠くなっていた。


長い一日だった。


ふと、重みを感じる。


視線を落とすと、海斗がブランケットを抱えたまま、いつの間にか膝に潜り込んでいた。


その向こうでは、同じようにブランケットに丸まって、陸斗が湊の膝に寄りかかっていた。


……と思ったら。


湊も、寝ていた。


「おい……」


小さく声をかけるが、反応はない。


咲也は小さく息を吐いた。


「……まあ、いいか」


もう、起きるのも億劫だった。


二人のブランケットを少し引き上げてやる。


その時、床に小さなボールが転がっているのが目に入った。


昼間、双子が遊んでいたものだろう。


咲也は足で軽くそれを転がした。


コロリ、と音を立てて止まる。


――たまには、こういう夜も悪くない。


ソファに体を預ける。


テレビの光が静かに瞬いている。


そのまま、咲也もゆっくり目を閉じた。


---


「ただいま」


小さな声で玄関が開く。


夏希だった。


リビングを見る。


ソファで眠っている二人。


咲也の膝には海斗。


湊の膝には陸斗。


二人とも、完全に動けない格好で眠っていた。


夏希はくすりと笑う。


「こらこら、ちびっ子たち」


「邪魔するでないぞ」


二人を抱えて子供部屋へ運ぶ。


ソファの二人にはそっと掛け布団だけかけた。


「……なんだ、結構いい雰囲気じゃない」


「よかったね、兄さん」


あどけない寝顔の二人を見て、またくすりと笑った。


ここまで読んでくださりありがとうございました。

今回はタイトル通り、静かな夜の回でした。

子ども達が寝て、テレビの光だけが残る時間って

なんとなく落ち着きますよね。

書いていて一番好きだったのは

双子がいつの間にか膝で寝てしまうところでした。

ああいう小さな出来事が、

家の温度を作るんだろうなと思います。

次回は「悪くない朝」。

朝の騒がしい時間から、少し外に出る予定です。

よろしければまた読みに来ていただけると嬉しいです。

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