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第十四話 残り火

静かなバーの夜。営業が終わったあと、残るのはグラスの音と、言葉にならない感情だけ。


この話では、表ではぶつからなかった二人の火花が、閉店後の静かな空間で少しだけ表に出ます。


湊の静かな怒り。黒崎の余裕。


そして、その中心にいるのは何も知らない咲也です。


小さな火は消えたように見えて、まだ残っています。

Bar Havenの灯りは、半分だけ落とされていた。


営業は終わり、店内には静かな音楽だけが流れている。


湊はカウンターの中でグラスを拭いていた。


布の音だけが、ゆっくりと響く。


扉のベルが鳴った。


カラン。


足音。


カウンターの前に人が立つ。


湊は顔を上げた。


黒崎だった。


「まだいたのか」


黒崎は肩の力を抜いたまま言う。


湊はグラスを棚に戻した。


「閉店後です」


「知ってる」


黒崎はカウンターに肘をつく。


「少し話をな」


湊は何も答えない。


静かな間が落ちる。


黒崎が先に口を開いた。


「怒ってるな」


湊は視線を外さない。


「当然です」


短い答えだった。


黒崎は小さく笑う。


「何がだ」


湊は少しだけ間を置いた。


それから言う。


「あなたが、あの人にしたことです」


黒崎は一瞬黙った。


それから肩をすくめる。


「大したことしてない」


「あなたはそうでしょう」


湊の声は静かだった。


「ですが、あの人は違う」


黒崎は指先でカウンターを軽く叩いた。


小さな音が、静かな店内に響く。


「大事なんだな」


からかうような声だった。


湊は答えない。


ただ黒崎を見ている。


その視線に、黒崎は少しだけ笑った。


「安心しろ」


軽く言う。


「今は何もしない」


黒崎はゆっくりと背筋を伸ばした。


「壊すには惜しい」


ぽつりと言う。


「面白い男だからな」


扉へ向かう。


ベルが鳴る。


カラン。


黒崎は振り返らない。


扉が閉まる。


店内に静けさが戻る。


湊はしばらく動かなかった。


やがて、さっきまで黒崎が立っていた場所へ視線を落とす。


小さく息を吐く。


「……困った人だ」


ぽつりと呟く。


それが、誰を指した言葉なのか。


湊自身にも分からなかった

ここまで読んでくださってありがとうございます。


この回で、黒崎・湊・咲也の関係に小さな「火」が残る形になりました。


次の回からは少し空気が変わります。新しい可愛い登場人物が出てきます。


緊張の続いた流れの中で、少しだけ賑やかで温かい時間になる予定です。


けれど、火はまだ消えていません。


これからも物語を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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