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お菓子の家


「……なぁ? これって」


俺は目の前に現れた風景を見て、目を何度も擦り直す。


「えーっと、夢じゃないと思うッスよ」


俺の思っていることを先読みしたのかリリが応える。


「だったら……めちゃくちゃ怪しすぎだろ!!」


慌てて口を噤む。


つ、つい叫んじまったぜ……だってあまりにも不自然過ぎるだろ!

こんな森の中に『お菓子の家』があるんだぜ!?

しかも森の道沿いにだぞ?


俺じゃなくても叫ぶだろ?



クッキーの壁にチョコのドア、ドアノブはマシュマロとなっており、窓はまるですりガラスの様に飴で出来ていた。

そしてあちこちにクリームやチョコが盛られている。



チラリと仲間たちを見ると……案の定口をあんぐりと…………あれ?

何かめっちゃ目をキラキラさせてねぇか?


「す、すっご〜い!」

「お菓子の家だぁ〜」

「凄い……」


ノエル三人衆に加えて、アルトまで


「お菓子だ!」


と目が釘付けになっている。


「お、美味しそうッス」


俺のすぐ横ではリリがよだれを垂らしそうになっていた。



「いやいやいやいや、待て待て! どう考えてもおかしいだろ!?」

「おかし……」


両手を前に突き出してフラフラとデニムがお菓子の家に向かっていく。


「こ、こら! デニム待て、お座り! あ、違った、待て!」


慌ててデニムを引っ張るが……このデブ! 重ぇ!

ってゆーか、ボス達もフラフラと歩いていくじゃねーか!


「ら、ライオン、ウィル、ユーナ、コイツラを止めろ!」


どうやら正気なのは俺を含めた四人だけのようで、他はお菓子の家にフラフラと近寄りつつある。


しかし……ライオンはリリとアルトを、ウィルはノエル達を、ユーナはゴンズを抑え込んで、俺はデニムを引っ張っている。

ボス達を止めらんねー!!



ってゆーか……この展開はあまりにもおかしい!

もしかして魔法的な何かか?

だったとしたら……!


俺は一瞬デニムから手を離すと、『アンチマジック!!』

デニムから魔法的な力が消えるのを感じる。


その瞬間、デニムが「あれ?」という風に呆けた。


「俺は……あれ?」


正気に戻った! やっぱり何らかの魔法か!

俺は杖を地面に付けると『アンチマジック』を範囲化して全員に掛けた。


魔法が発動すると全員が我に戻る。


「あ、あれ?」

「何を?」

「?」


みんなが正気に戻ったのを見て、俺は改めてお菓子の家を見てみた。


にしても見ただけで掛かる魔法なんてな……俺には効かなかったが誰がなんの為にこんな物を?

そして中はどうなってんだ?


気にはなるがろくなもんじゃ無いだろうとは思う……さて、これを放置するかそれとも壊すか……

ちなみにお菓子を食べたらどうなるんだろうか?


「ん〜〜取り敢えずノックするか! 一応家だしな」


俺はライオン達をその場に待機させると、用心しつつもドアの前に立った。


念の為……杖を地面に付けると魔力を流していく。

家の中に誰かいないか一応調べて見る為だ。


ん? 人が……いる!?


魔力により感知した姿が、脳裏に白っぽく浮かび上がる。

魔族だった場合赤っぽくなるはずなのでどうやら魔族ではなく本当に人の様だ。


しっかし、こんな森の中のお菓子の家に住んでる奴なんて尋常じゃなさそうだな


ひとまず人間ならどんな奴か確認してみようとドアをノックした。


むぅ、しかし本当にお菓子だな……甘い匂いが鼻を突くし、近くでみてもやはりお菓子にしか見えない

まぁサイズは大きいけどな



そんなことを考え暫く待っていると……カタンという音と共にドアが開いた。


そして顔を覗かせたのは、


「……何じゃお前さんは?」


深いシワが刻まれた婆さんだった。


「あ〜、突然すまないな。 ちょっと森を通ったらこの家が見えたんでな」

「ああ、そうかい。 で、何用じゃ?」


婆さんの目つきは厳しくこちらをかなり警戒しているようだ。

どう見ても近所の意地悪婆さんって感じの顔つきだった。


しかし俺から言わせれば、怪しいのはこんな家に住んでいる婆さんの方なんだがなぁ……


ひとまず何用と聞かれたので疑問に思った事をぶつけてみた。


「この家は本当にお菓子で出来ているのか?」

「ああそうじゃ。 ……もしかして人の家を食べたいとか抜かすんじゃないだろうね?」


婆さんの視線が更に厳しくなる。


「いやいやちげーよ。 さっきのそこでゾンビの大群に襲われてな、できれば休ませてほしいと思ってな」


俺としては何でこの婆さんがゾンビに襲われてないのか、何でお菓子の家に住んでいるのか等が知りたかったので、家に上げてもらえないかと思ったのだが……


う〜む、この警戒っぷりじゃ厳しいか?

めちゃくちゃジロジロ見られているしな


「……いいじゃろ。 後ろのは連れじゃろ? 広くは無いがそいつらも入れてやる」

「! ほ、ほんとに良いのか?」

「嘘ついて何の意味がある? それともワシがお主等をどうこうするとでも思っておるのか?」

「い、いや、凄い見られていたので難しいのかと……」

「それが無ければ信じなかったさ。 こんなご時世だからな」


婆さんが指すのは俺の服の袖部分……あのゾンビ狼に噛まれた場所。

どうやらこれを見て、本当に俺達が襲われたかを判断したようだ。


やっぱり用心深いな……まぁ本人の言う様にこんなご時世だし、こんな場所に住んでいるからそうならずには居られないのかもな


「ありがとう婆さん。 言葉に甘えて休ませてもらうぜ」


俺は婆さんが大きく開けてくれたドアをくぐり室内に入るのだった。


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