森の奥へと
「なんとか撃退できたな」
周りにはゾンビ達が数多く倒れている。
俺はそいつ等に軽く手を合わせた。
襲われる可能性はあると思ったが、森に入って早々とはな……
まぁ何人かは救済出来たし良しとしようか
「ユーナ、そのコロポックルに救われたぜ。 お陰で楽に乗り切れた」
「フフン、そうだろうとも! 俺の召喚魔法を使えばこんなもんさ」
「お前もだ、ありがとうな」
しゃがんでコロポックルに声を掛けると再び恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「「「可愛い〜!」」」
その姿にノエル達から声が上がりコロポックルは驚いて俺の後ろに隠れてしまう。
俺が振り返ると……コロポックルは消えていた。
ビックリして戻ったのか……
残念そうな声を漏らすノエル達を置いておき、
「怪我したやつはいるか?」
「ああ、こっちにいる」
後方からボスの声が上がった。
全員の治療を終えると、改めて進み始めた。
森の中は先程より静けさを増したようだ。
荒れ気味の道を進みながら、
「あのゾンビ達も魔族による襲撃だと思うか?」
「……恐らく違うだろうな」
「やっぱそうだよなぁ」
ライオンと意見が一致する。
こんな……通る人もいるか怪しい場所で待ち構える事はしないだろうしな。
「でもゾンビ達が徒党を組んでってのもな」
「ああ、それにルルが言っていた様に回避行動も気になる」
ゾンビ達は知能がない、その為回避行動は取らない筈なのだが……
「何かが変わってきているのか、それとも他に理由があるのか……どちらにしろ面倒な事になりそうだぜ」
ため息混じりに呟いた。
「おいルル」
「ん?」
不意に声を掛けられて振り返って見ればボスがすぐ側に来ていた。
「何かあったのか?」
「いや、ちっと話を聞きに来ただけだ」
「話?」
「ああ、さっきのゾンビ達についてだ。 実際に戦ったのは初めてなんだが……血も普通に出るし、想像より人間ぽくてな。 ゾンビつーのはみんなあんな感じなのか?」
「血は出るな。 遺体は欠損が無いのもあるし、そういった者は人間と変わりなく見えるぜ」
「そうか……お前はそういう戦いをして平気なのか?」
「……平気じゃなかったさ、最初の頃は酷えもんだったよ。 ……でも、それでも誰かがやんねーといけねぇし、それに何より……」
「何より?」
「俺がそう決めたからな。 この世界を救ってやるってな」
「スケールがデケェな。 今のお前を見てねぇと笑い飛ばしていたぜ」
「あぁ? 別に笑い飛ばしても良いんだぜ? 自分でも大層デカイ話だって分かってるからな、たかが俺一人が何様だよって話だ」
「そうなのか? だったら何で……」
「誓ったし決めたからだよ。 心に決めた事を変えるのは俺の性分じゃねーし、何よりカッコ悪いからな!」
俺はそう言ってニィと笑ってやる。
ボスはそんな俺を複雑そうに見ていたが、
「『カッコ悪いから』とかそんな理由かよ。 お前自分で言ってて恥ずかしくないか?」
「ぐぁ! う、うるせーよ! ったく、ボスが聞くから素直に話してやればこれだ!」
「ハッハー! いや、色々ためになったぜ、あんがとよ」
ボスは笑いながら後方に戻って行く。
入れ違いにリリがスススと俺の横に寄ってきて、
「私はルルの考え良いと思うッスよ。 今は団長指示でルルに同行してるッスが、私がフリーなら個人的について行こうと思うぐらいッス」
「そ、そうか、ありがとう」
あ、改めてそう言われると、これはこれで恥ずかしいな
「照れてるルルは可愛いね〜」
「だね〜」
「可愛い」
「アルト君もそう思うでしょ?」
いつの間に来たのかノエル三人衆とアルトが後ろに来ていた。
急に振られてオタオタしつつも頷くアルトに、
「ルルは照れてなくてもどんな時でも可愛い」
ウィルが真面目な顔でアルトに説明している。
って言うか、さっきから『可愛い』『可愛い』連呼されるとさすがの俺も困ると言うか、照れるんだが……
「ふふふ〜褒められればすぐに照れるルルは可愛いッスね〜」
「ホントだ。 姐さんにこんな一面が……」
更にからかうリリとさらっと参加したデニム。
「あーーもう! からかってんじゃねーよ!」
俺はデニムの腹にグーパンをお見舞いする!
ボヨヨ〜ン!
忘れてた……こいつの腹は俺の拳を無効化するんだったわ
「ふっふっふ〜、いくら姐さんの拳でも俺の腹には効果なしですよ」
「ほ〜そうかそうか」
『キープ』
俺は小声で自身に強化魔法を掛ける。
リリとの練習を繰り返し、今やほぼ成功するまでになっていた。
「え? あ、姐さん……何か体がうっすら光ってません?」
「気にするな、些細な事だ。 それより行くぜ? 俺の拳を味わえ!!」
俺は腰を捻り思いっきり後ろに腕を振りかぶる。
「え? ち、ちょっと姐さん!?」
「おりゃぁぁぁぁ!!!」
腕を捻りながら拳を放つ!
俺のコークスクリューがデニムの腹に決まった!!
……が?
「あ、あれ? 痛くない?」
「なんだと!」
平然としているデニムに驚愕する!
そんな馬鹿な! 俺の必殺技、虐殺波動拳が!
ガキの頃以来だから腕が落ちたのか!?
ショックを受けていた俺だったが……、バタン! という音で顔を上げるとデニムが倒れていた!
……このニブちんが
時間差で拳が効いたらしい。
と、まぁてんやわんや有りつつ俺達は森の奥深くへ続く道を進むのだった。




