可愛くて大活躍
「ライオン、分かるか?」
「複数いるのと……恐らく小型の何かだ」
小声で素早くやり取りしつつ、俺達は円陣を組んで行く。
真ん中にアルトを含め魔術師と間接武器持ち。
それを守る様に外側を近接がぐるりと囲んだ。
揺れる草むらは今や全方向となっており、ガサガサと執拗に音を立てる。
くそっ、野生動物ならわざわざこんなに音を立てる必要はない
って事は……
草むらからソイツが顔を覗かせた。
一見するとただの狼だか……以前のゾンビ犬と同じ濁った目をしていた。
「ちっ! やっぱりゾンビ共だ」
あちこちの草むらからゾンビ狼が……中には人間のゾンビも混じっているが、身体中がボロボロになっている。
恐らくゾンビ狼に襲われ殺された為ゾンビ化したのであろう。
「うわぁ!」
「バカヤロウ! 狼狽えてんじゃねぇ!」
後方からボスの怒鳴り声が聞こえる。
後ろ側にも現れたようだ。
「なんでコイツ等ゾンビの癖に挟み撃ちなんてしてきやがるんだ!? そんな頭は無いはずなのに!」
「分からんが……ライナみたいに操る奴がいたんだ。 もしやこれもそうかも知れん」
「って事はまた魔族かよ? 魔族ってこんなにいない筈だろうが」
「そのはずなんだが……」
と、会話はここまでか……
先頭のゾンビ狼が大きく跳躍して襲い掛かってきた!
そして、それを皮切りに何匹ものゾンビ狼が草むらから飛び出した!
「くっ! 跳躍したのは囮かよ!」
跳躍して噛みつこうとしてきたゾンビ狼を杖でぶちのめす!
そこを狙って地面を這う様に駆け抜けてくるゾンビ狼。
ライオンが剣を薙ぐと後方に跳躍してそれを躱した!
「んな馬鹿な! ゾンビが躱すなんて!」
「危ないッスよ!」
横から来てきたゾンビ……こっちは人型か! リリが蹴っ飛ばす。
「アルト君伏せて」
マリアがアルトを背後にまわし魔法を放つ。
そしてそのマリアを庇う様にノエルが剣を振るっている!
「ウィル!」
アリスの警告にウィルが素早く背後を薙ぐと、飛び掛かったゾンビ狼二匹の首が宙を舞った!
ガッ! と俺の杖にゾンビ狼が牙を立てる!
「邪魔だ!」
ガジガジしているゾンビ狼の腹を蹴飛ばし、牙が離れた所を狙って杖を振り下ろす!
と、横の草むらからゾンビ狼が飛び出して俺の腕に噛み付いた!
「ってぇじゃねーか!」
その眉間を杖の尖端で突き入れる!
ゾンビ狼がもんどり打って倒れた! しかし入れ替わりに別なゾンビ狼が飛び掛かってくる!
「てりゃ!」
その鼻面を拳で殴りつけると、グシュッと言う音と共に鼻先が折れて地面に落ちる。
しかしそれにも構わず噛みつこうと牙を向けてきた!
慌てて体を引くとカチンと歯が噛み合わされる!
その顎に向けて下からアッパーを決めてやった!
「くっそ! きりねーな!」
「どうする一回引くか?」
「……いや、今回はおしとおすぞ! どの道ここを通んなきゃなんねーんだ!」
ライオンがマントをなびかせ剣を振るい、ゾンビ狼三匹を真っ二つに斬り裂いた!
盛り上がる筋肉がテラテラして……すまん、正直ちょっと……目についてウザい
「しかたねーな! この超天才召喚士である俺の魔法を見せてやる! いでよ、コロポックル!」
偉そうにユーナが叫ぶと、ポンッ!と小さな煙が上がって俺の半分ぐらいの小人が現れた。
大きなツワの葉を傘のようにして、髪の長い純朴そうな女のコの姿をしている。
頭にはヘアバンド、体には色彩鮮やかな布を巻き付け服の代わりにしていた。
「かわいい!」
「かわい〜!!」
後方の女性陣から可愛いの声が上がる。
ひとまずそれは後でやってほしい。
「ユーナ、その子は何ができるんだ?」
目の前の人型ゾンビを杖で殴りつつ尋ねる。
「ふふん、コイツはコロポックルと言って森の精霊だ。 森の植物達の手を借りれるのさ」
「うわ!」
話に気を取られてしまいゾンビ狼が俺の袖を噛み千切った!
またしても俺の服を!!
カウンターで首筋に杖を叩きつける!
後方からボス達の怒鳴り声と叫び声がこだまする。
あっちはあっちで苦戦しているようだ。
『ハーデス』
マリアの魔法でアルトに迫るゾンビ狼がまとめて闇の底なし沼にズブズブ沈んでいく。
……やっぱりマリアの魔法こぇぇ!
「コロロンコロロンコッロロン♪」
突然コロポックルの可愛らしい歌声が響き渡る……と、
「そこら中の草が!」
草むらやあちこちの蔓植物、木の枝が俺達に群がるゾンビ達を次々と拘束していく!!
「すげぇ!! 可愛いのに超つぇぇ!」
俺の言葉に顔を赤らめて葉っぱで顔を隠す。
くっ! アリス達じゃねーが……可愛いじゃないか!
「サッサと今のうちに片付けろよ」
ユーナの声でコロポックルの可愛さから目を覚ます。
お、思わず魅入っちゃったぜ
「ユーナ、あんがとよ! よっしゃ! 全員突撃だぁ!」
「おう!」
「ッス!」
俺とライオン、リリが前方に突撃し、他の方向ではウィル達とボス達が防衛から攻勢に打ってでる。
拘束されたゾンビ達は次から次へと容易に倒されていった。
そしてコロポックルの大活躍により、きりがないと思われていた戦闘はアッサリと終了したのだった。




