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護衛対象


「ほ、本日はよろしくおねがいいたします」


消え入りそうなちっさい声……こいつちゃんと朝飯くってんだろうな?


俺は目の前で頭を下げる男の子をまじまじと見つめた。


年は十ちょっとって感じか?

オドオドして気が弱そうな様子だ。


「よろしくな、俺はルルって言うんだ。 こっちは……」

「ライオンだ」

「リリッス」


俺達は目の前の子供に挨拶をしていく。


こいつが今回の護衛対象か……つーか、こんな気の弱そうな子供の護衛をよりによってボス達に頼むとか……カインズのヤロー頭をおかしいんじゃねーか?



この男の子はアルトという名前で、聞けばあのバッハ侯爵家と関わりがある家柄らしい。


本来バッハ侯爵が治めるダーテンハルトだが、このような状態になった為、急遽領主になったのがこのアルトだ。

アルトの両親はアルトが幼い時に死んでおり、それからバッハ侯爵が引き取って育てていた事と、バッハ侯爵に親戚や子供等跡継ぎが居なかった事も今回の話に繋がった。


まぁ、とは言っても所詮は子供。

街や土地を収めるなんて無理な話だ。

そこで他の街を収めている五大貴族の元に連れて行き、今後についてとアルトの育成の話となったって訳だ。



「ノエル達にアルトを頼んでいいか?」

「あ、うん、そうだよね。あれじゃあね〜」


ノエルの視線の先にはボス達数名が旅の準備をして待機している。

あれの中にアルトを放り込むのもな……


護衛依頼を俺達に頼んではいるがボス達が働かないと意味がない。

だから一緒に行くんだが……もしかしてこれも見越してカインズの奴、ボス達に頼みやがったか?

俺とボスに繋がりがあるのをデニムのおかげで知っているだろうし……



考え込む俺の横で、アリスがしゃがみながら、


「アルト君可愛いね〜ナデナデして良い?」

「え? えっと……」


アルトは顔を赤くして狼狽えている。


「は、はい。 分かりました」

「えっへへ〜じゃあ遠慮なく……」

「うわっ! あ、アリスさん! ナデナデって頭じゃ無いんですか!?」

「そうだよ〜? 『ナデナデして良い?』としか聞いてないでしょ?」

「だからってお尻撫でていいとは……」


って、アリスの奴何してるんだ!?


注意しようとした俺の目の前で、アリスに拳骨が落ちてきた!

ゴスッ! とくぐもった音がして、


「いった〜い!」


アリスが悲鳴を上げる。


「あんたはこんな子供に何してるのよ!」


ノエルがアリスに説教を始め、アルトにはマリアが代わりに謝っている。


……ノエル達に預けて大丈夫なんだろうか? と少し心配になる俺だった。





ダーテンハルトを出た俺達は東に向かって旅を開始した。

もちろん馬車など無く歩きの旅だ。



俺やライオン、リリとゴンズが隊列の戦闘。

次にノエル達とアルト、そしてユーナとデニム。

最後尾にボス達となっている。


ボス達は人同士の争いには慣れてるだろうが、魔獣やゾンビ相手は慣れてねーだろうからな。


ダーテンハルトを出てすぐはゾンビ達の死体の山だった。

アルトがそれを見て気分を悪くして嘔吐したため、現在ウィルにおんぶされている。


しまったなぁ……子供には刺激が強かったぜ。

目隠ししときゃあ良かった……反省点だな。


アルトはウィルの背で目を閉じてグッタリしている。

今から目隠しするのもなぁ〜と考えていると、



「ゾンビッスね」


見ると道からはかなり外れた所だが、ゾンビ数体がフラフラと歩いている。

こっちには気づいていないようだが……。



「わりぃがちょっと倒してくるぜ」

「結構離れてるし襲われないんじゃない?」

「うん、放っておいても大丈夫だと思う」


ノエルとマリアがそう話すが、


「いや、ゾンビ達は倒さない限り救われないんだ。 倒せるなら倒しておきたい」


これが流石に何十、何百となれば別だが、この人数でゾンビ数体がなら問題なく倒せるだろう。

出来る事なら救済したい。


「俺とリリ、ゴンズのおっさん一緒に来てくれ。 それと……」


俺は後ろの方にいるデブに目を向けると、


「デニム、お前もだ」

「えぇ!? ど、どうしてなんですか? 姐さん」

「姐さん言うな。 お前の経験の為だよ、不本意で仕方なくでやむを得ずと言えどもお前も仲間になっちまったからな」

「うぅ姐さん、そこまで言わなくても……。 わ、わかりましたよ! 見事戦って俺も姐さんの役に立つって所を見せてやりますよ!」


一瞬落ち込んだが、直ぐに立ち直り気合を入れ直すデニム。


……ほんと、最初の頃からするとこいつ変わったよなぁ

俺の喉元にナイフ突きつけたやつとは……今の様子からすると考えられねぇ

何がそうさせたかはさっぱり分かんねーけど



ゴンズとリリ、俺とデニムはみんなをそこに待機させ、ふらつくゾンビに向かって足を進めた。


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