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心の在り方


重い鉄のドアを開け、薄暗い室内に入る。


以前は多くの人で賑わっていただろう冒険者ギルドは今や物騒な連中の溜まり場となっていた。



俺が中に入ると刺すような視線が向けられる。

それに構わず、


「よぉ、あんたらのボスに呼ばれたんだが?」

「ああ、来たら教えてやれと言われている。 ボスなら部屋だ」

「あんがとよ」


以前話をしたギルド長の部屋。

俺は扉前に立つとノックする。


部屋の中からは素っ気なく「開いてる」とだけ返ってきた。



「来てやったぜ」


部屋の中ではボスが机の上で何やら書き物をしている。

俺が入ってもそのまま書き続け、


「ちょっと座って待ってろ」

「ああ」


前と同じソファに腰を下ろした。

所在なげに部屋の中を見ていると、


「やっと終わったぜ。 頭ともなると色々面倒な仕事が増えやがるんでね」

「んで、用件は?」

「せっかちなやつだ、ちったぁ心に余裕を持てよ」

「一人の時はのんびりしてんだよ」

「……まぁ良い、お望み通り本題から行こう。 お前に借りを返してもらう」

「へぇ、何か治療が必要にでもなったのか?」

「いや、護衛だ」

「護衛?」

「……カインズを知ってるか?」

「あ、ああ。 この街の守備隊長だろ?」

「あいつが俺達に圧力を掛けて来やがった」

「圧力?」

「冒険者ギルドを再開するから明け渡せとさ」


街の復興に伴って冒険者ギルドも再開させるってことか……そうなればボス達はここを立ち退かなきゃならんって訳だ。


「で?」

「抵抗しても良いんだが、この街の守備隊は他の街よりかなり手強い。 数から言っても負けるだろう」

「情けねーな! やってみなくちゃ分かんねーだろ?」

「やってみた結果、この冒険者ギルドに立て籠もってんだよ」


だから冒険者ギルドが要塞みたいになってんのか……


「ともかく俺達はここを追い出されそうだって事だ」

「それと護衛がどう関係するんだ?」

「仕事だよ仕事。 冒険者ギルドに籠もるなら何かしら役に立てってよ!」


話をしているうちに苛ついたのか机を叩きつける!


「なるほどなぁ、それでイヤイヤ護衛をねぇ〜……もうそのまま冒険者にでもなっちまえばいいんじゃねーか?」

「ふざけるなよ……俺達はそんなもんにならねぇ!」

「ふざけてねぇよ……こんな世の中だぞ? んな意地張ってどうすんだよ?」

「うるせぇ! それでも張り通さなきゃなんねーんだよ! 男ってのは!」

「はん! くだらねえ!」

「なんだと!」


ボスが俺の胸ぐらを掴むと、


「女のテメェに何が分かるってんだ!」

「ああ? んなもん知るか! だけどお前にもついてくる奴らがいるんだろうが! そいつ等のためにお前がするのは意地を張る事だけなのかよ!」

「だからこそだ! 俺達は冒険者になる為に生きて来たんじゃねぇ! 俺達には俺達の生き方ってものがあるんだ!」

「……」


青筋を立てるボスを見て俺は頭が冷めていくのを感じた。

無言でボスの手を振りほどくと、


「……そうか、じゃあそうすれば良い。 だけど今のあんたは男なんかじゃない」

「!!」


ボスに飛び掛かられ俺は床に組みしかれるとそのまま馬乗りにされる。

両腕を押さえつけられ見下されたまま、


「男じゃないだと? だったらお前に男ってものを見せてやるよ!」


そう言うと俺の僧侶服に手を当て……ビリビリと音を立てると襟首から腰の辺りまで裂かれた。


胸の下着と肌がボスの目に晒され、そして下着に手を掛けられる。

それでも俺は特に抵抗をしなかった。


「……なんで抵抗しない? なぜ助けを呼ばない? 泣き叫ばない?」

「……あんたの言う男ってのがこう言う事ならすれば良いぜ。 だけど意地張ってまで通そうとするのがこんな事なのかよ」

「……」


ボスは俺の目を見つめたまま見下ろし、俺はボスの目を見つめたまま目をそらさない。


「……〜〜っ!」


そして……ボスは俺から目をそらした。


「チッ! 男じゃない奴に男を語られるなんざらしくねぇ……」


ボスは俺の上から身をどかすと、


「確かに俺には……アイツ等がいる。 お前の言い分も分かっているつもりだ」

「……」

「だが生き方っていうのはすぐに変えられるものでもねーんだ……」


ボスの顔は苦難に満ちていた。

俺はボスに歩み寄ると、


バチーーン!!


そのハゲヅラを思いっきり平手打ちする!


「いてぇぇぇ!」


頭を押さえるボスに、


「本当にめんどくせー奴だな!! 男ってのは一本心に芯を通しときゃ良いんだよ! 生き方なんざ後からついて来るもんだ!」

「くぅ〜〜! お、お前だからって」

「ふん! いつまでもウジウジしてっからだよ!」


本当にくだらないぜ! 人の本質は心の在り方だろうが!

そこには男も女もないさ。


ボスは恨みがましく俺を見ていたが、


「ホントにお前は何なんだ?」

「あ〜? 何でもねぇよ、ただ言えるのはこの世界の呪いを解いてやると誓った一人の人間さ」


俺はそう告げるとソファに座り直した。

そして、


「とりあえず護衛の話を聞かせてくれ。 とっとと借りを返してやるよ!」


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