配達依頼
翌日、朝食を摂っている俺達の元にカインズが尋ねて来た。
「よぉ、今いいか?」
「……お前には今俺が大丈夫なように見えるのか?」
今まさにサンドウィッチにかぶりつこうとした俺は不機嫌そうに睨みつける。
それに構わず俺のすぐ後ろの席……空いていた椅子に座ると、
「朝食中なら大丈夫そうだな。 でもってだ……」
「おい! お前人の話を聞けよ! むしろ何でそれなら『今いいか?』って確認したんだよ」
「結論から言うとバッハ公爵は殺されていたよ。 体中の皮膚を裂けるほど引き伸ばされ目玉をくりぬか……おっと!」
俺を無視して話を進めるカインズの顎を狙って拳を振り抜く!!
椅子ごと下がって躱したカインズが、
「いきなり拳が出るとか……しかも顎狙い。 お前本当にいい性格してるな」
「飯時に変な事言い出すからだ! 次は当てんぞ?」
本当は当てるつもりで狙ったけどな……うまく躱されちまったぜ。
「ほんと……ここまで中身と外見が違うやつも珍しい」
「ほっとけ! とりあえず飯食いながら……って!?」
皿の上のサンドウィッチに目を戻すと……具材の中からハムがなくなってる!!
両隣のライオンとリリに交互に目を向けると、
「……リリ、お前だな?」
「モグモグ……ゴクン! うぇぇ!? 何がッスか?」
こいつ……シラをきるつもりか!
「お前が食べたよな?」
「わ、私ハムなんて食べてないッスよ!」
「……俺は食べられたのがハムとは一言も言ってないが?」
「あ……」
しまった!とリリの顔色が変わる。
「こうなったらお前のフライドチキンを寄こせ!」
「これは駄目ッス! 最後に食べるから取っておいたんス!」
「うるせー! 人の物食っといて」
「だって美味しそうだったんス」
「理由になるか!」
「はぁ……そろそろ話し進めてもいいか?」
カインズがため息交じりに話を再開し始める。
「とにかくこれでお前達の言う信憑性が増した。 バッハ公爵の亡骸からみるに結構な日数が経っていたが、バッハ公爵の姿……お前達の言う魔族だろうな、その姿は一昨日迄確認されている」
「あぁ? まだ疑ってたのかよ」
「当たり前だ。 実際に俺達は見ていないからな。 バッハ公爵に直接会って確認するつもりが、俺達のそれすら利用しやがって」
「いいだろ? それに兵士達が多すぎてお前達だって直接対決じゃ負けたぞ?」
「確かに館の兵士の数は多いが……この街の守備隊を甘く見るなよ?」
「へーへー。 ひとまず結論としてはもうこの街を出ていいってことだよな?」
「ああ、俺達はあくまで出入りする者を監視し、街の防衛が主な仕事だからな。 ただし、お前達に少し頼みたいことがある」
「やだ」
俺は笑顔で返事する。
まぁさっきの仕返しだ……大人げないかもしれないけどなんとなくな。
「この後他の街に行くなら、五大貴族のいる街に行ってほしい。 そこでこの街の状況を話してくれ」
「……お前は俺の返事を聞いていなかったのか?」
「俺達はこの街の後始末と……遠征隊を組織しなきゃならん」
「遠征隊?」
「偽公爵が追い出した住民達……。 もしかしたら生き延びているかもしれないしな。 昨日集まった住民達とも話して探すことにしたんだ。 その為人手が足りない」
「だからってなんで俺達に……」
「どうせ次の街に行くんだろ? それにフィリム王国騎士団長様が身の保証をしてくれる僧侶様が、こんな困っている街を見捨てるんなんてしないと思うしな」
「嫌な言い方しやがって……」
「まぁ、そう言うわけで頼むわ。 街を出るときは門番に話せばすぐに出れる様に話を付けとくから。 あ、それと一応これを……」
「なんだこれ?」
手紙……のようだな
「この街の状況を記した手紙だ。 話だけだとあれだからな、これを渡してくれれば大丈夫だと思う」
「仕方ねぇな。 その代わり一人でも多くの住民を助けてやってくれよ」
「ああ、不本意にも街から追い出された住民達だ……疑心はあるだろうが理由を説明して戻って来てもらいたいしな」
そこまで話すとカインズは椅子から立ち上がり、
「んじゃ、頼んだぜ? 聖女様」
「はぁ? なんだそりゃ?」
「王国騎士団長様が言ってたぜ? ルルは聖女なんだよ~とか」
「……ララのやつぅ~」
全く! 好き勝手言いやがるな。
俺が顔をしかめている間に店から出て行ったらしくカインズの姿は消えていた。
まぁこれでやっとこの街から出られるな……
前を向いた俺の目に、半分になったサンドウィッチが飛び込んで来る。
ジトッとリリを睨むと……大急ぎでフライドチキンに齧り付きやがった!!
「リリ、お前だけお昼ご飯抜きな」
「モガ! ほ、ほんなぁ~」
「食ってから喋れ、まぁ喋っても抜くけどな」
「ふえぇ~」
泣きそうな目で見てくるが……泣きそうなのは俺だよ!
朝食が半分になっちまった……っくしょー!
俺はやけ気味で半分になったサンドウィッチにかぶりついた!




