説明会? いえ説明回
「ユーナ!」
「なんだ? 大声出さなくても聞こえるぜ」
ノエルが怒ったような顔を向け、
「何しに来たのよ! 私達を裏切ったくせに!!」
「そうだな。 それは悪かったな」
あっさり謝罪され度肝を抜かれたようなノエルだったが、今度は俺の方が声を掛けた。
「で? 理由があるんだろ?」
「は! 依頼主様は何でも理由があるからに結び付けたがるな。 単純に裏切ったとは思わないのか?」
「そうだな……俺達を裏切ったって言うならわざわざこのタイミングで姿を見せる必要もないし、それに……」
俺は拳を軽く握る……先ほど俺の中で消えて行った小さな召喚獣のことを思い出す。
俺の為に散っていった小さな命……心がズキズキと痛んだ。
「カーバンクルが俺の為に身を挺するなんて必要もないからな」
「……」
ユーナは俺を不思議そうに見ていたが……、
「もしかしてお前……カーバンクルが死んだって思ってるのか?」
「は? あ、ああ、俺を庇って……」
「はぁ……全く、これだから僧侶様は……『カーバンクル召喚!』」
魔法を唱えた瞬間、ユーナの手の平にカーバンクルが現れる!
「え? ええ!? そいつ無事だったのか!?」
「召喚獣には死という概念がないんだよ。 俺の魔力で呼び出される仮初の姿って訳だ」
「そう……だったのか。 よかったぁ~~!! ありがとな! お前のおかげで助かったよ!!」
俺の言葉に小さく首を傾げるカーバンクル。
いやぁ、死んだかと思ってショックだったぜ! 助かって良かった。
「お前変わってんな」
「は?」
な、なんか、呆れられた様な感じだったな。
まぁカーバンクルが無事だってんならそれでいいか。
「それはともかく! ユーナの理由はゴンズだろ?」
「なっ!」
俺の言葉にあからさまに反応した。
「何で分かるんだよ?」
「そりゃこれだけ姿を見せないし、それに色々言ってもお前が仲間を大事に想っているのは分かったからな」
オルダンの件で俺はそれを感じていた。
クールを気取ろうが大切な仲間の事を思うこいつは根本的には悪い奴じゃないだろう。
「クッソ……そこまでお見通しかよ」
空を仰いだユーナは、
「ああ、その通りだよ! 色々調査をしている時にゴンズがバッハに捕まってな。 人質に取られてた」
「何で正直に言わないのよ!」
「あのなぁ? いつでも見張られている様な状況でそんなこと言えるか! ただバッハの狙いがルルだってことは分かったからな、見張りと称してカーバンクルを守護で付けておいたんだ。 カーバンクルは小さいが鉱石の召喚獣で頑丈だからな」
「おかげで助かった。 ありがとな」
「ふん! お前は鈍いし色々厄介事を持ち込むタイプだからだ」
話の区切りを見計らって、
「それでゴンズはどうなったんスか?」
「ああ、館の牢に閉じ込められているが……もう牢を壊しても大丈夫だろう。 それより……あれはお前達の仕業だろ? そろそろ止めるか?」
ユーナが館の方を指さす。
収まりつつあるが未だに騒ぎが起こっているようだ。
「ああ……ん? お前も何かしてくれたのか?」
「一応戦いになる様ならケルベロスを出そうかと準備はしていた」
「そうか、まぁそこまで争いにはならなかったからな」
バッハの方を見たが……ライナと同じく灰になって消えてしまったようで跡形もなくなっていた。
う~む……魔族だったって証拠が欲しかったんだが……仕方ないか
俺達は未だ騒いでいる館の方に戻ることにした。
騒ぎが起きているのは館の正門前だ。
館を守る大勢の兵士達と睨み合っているのは正門に集まるこの街の住民と何人かの兵士……館の者ではなく門のところであった守備隊とその隊長カインズの姿も見えた。
俺達が門のところに近寄ると、館の兵士は「あ、お前達なんでここに!?」と声を上げる。
俺は両者の間に割って入ろうと……うがぁー! 背が低いから目立たねぇ!!
「ライオン、悪いが俺を担いでくれ。 出来れば肩で」
「分かった。 これでいいか?」
「ああ、助かる」
軽々と持ち上げられライオンの肩に乗る。
……いいなぁ、この視点。 俺ももう少し背が高ければなぁ。
っとと、それどころじゃなかったわ。
「全員注目~~~~~~!!!!」
背の高いライオンの肩に乗り、他の人達より高い所から大声で呼び掛ける。
あ、ちなみにちゃんと裾は押さえてるからな? こんな大勢に下着見せる訳にはいかねー。
元々兵士でもない俺達が門に来ていた事と、ライオンの肩に乗せられたこともあって周りからは注目されていたが、俺が叫んだ事で場が静まり返る。
「こほん! 今から全員に大事な話をしたいと思う! 街の奴らも守備隊も、館の奴らも全員聞いとけよ!!」
そうして俺はバッハ公爵が魔族であり先ほど倒して来た事。 そして目論んでいたことを話して聞かせた。
どうやら兵士達の大半はバッハ公爵が魔族だったとは気付いていなかったようでかなり動揺が走っていた。
「しかしバッハ公爵は昔からこの街を納める一族だ。 だとすると当人もいて、成りすましたと考えられるんだが……本人はどこだ?」
「そこまでは分からないが……中には館で囚われている奴もいる様だし、どこかにいるかもしれねーな」
俺とカインズのやり取りを聞いていた兵士達が、
「公爵様を探してきます!」
「あ、俺も行くぜ」
「ああ、早く助けないと!」
集まっていた兵士達が館へと引き返し、街の人達も公爵が魔族で既に倒されたと知ると一旦は戻って行く。
後に残ったカインズ達と、
「あああ! 姐さん~~!!」
走り寄ってくるデブ……じゃなかった、デニム。 あ、デブには違いないけどな。
「デニム、ちゃんと言われた通り動いたようだな?」
「本当ですよ!! 俺の言う事誰も聞いてくれないし……これがなかったら信じてもらえませんでしたよ」
そう言って水晶板を手渡してきた。
作戦遂行に当たり、デニムには守備隊や街の人達への呼びかけをさせるため前もって館から脱出させていた。
ちなみにデニムを選んだのは、いてもいいなくても気付かれにくい存在感とこの街の住人であり俺達より顔見知りが多いという理由だ。
カインズは俺の方に近寄ると、
「俺は普段ならそんな奴の言葉気にもかけないが……」
「ひどっ!」
デニムが泣きそうになるのを無視して、
「名高いフィリム王国騎士団長とフィリム国冒険者ギルドがお前の身元やそのスキル……それを保証したからこそ、信じることにしてやったんだ。 しかし俺達がバッハ公爵に会う前に倒しちまうとは……」
腕を組んで考え込んだカインズは、
「お前……俺達を利用したな?」
「あ~……いや、偶然だ偶然。 タイミング的にな」
「……どうだかな」
カインズは肩をすくめ、
「とりあえず本物のバッハ公爵が見つかればいいが……見つからなかったらこの街の事などかなり厄介な事になるだろう」
「そうだろうが……すまないが俺達はそこまで見切れねぇぞ? 元々捕まっていた状況から抜けだすのが目的だったからな」
「分かってる。 余所者に頼んだりはしねぇよ」
カインズは俺達を手でシッシとすると、
「ひとまず館の奴らと俺達とで事態収拾を図る。 お前達にも話を聞くかもしれないから宿にでも籠っててくれ」
「ああ、分かった。 全員来たようだしな」
俺は館から歩いてくるユーナとゴンズの二人を目にしながらそう返事したのだった。




