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作戦開始


ルルが部屋を出てすぐ、


「今度はなんだ?」


再びドアが開き中からリリが顔を出す。


「ちょっとトイレに行きたいッスよ〜!」

「今は駄目だ、見張りが俺しかいないからな」

「で、でも漏れるッスよ! 女の子にそんな思いさせるッスか!?」

「いや、しかしだな……」

「もう!」


見張りを無視して行こうとするリリ。

慌てて見張りがリリを止めようとした……が、それをサラリと躱すと廊下の奥へ進んで行く。


「お、おい! ちょっと待て!」


慌てて追い縋る見張りが、リリの手を掴んだ!


「分かった! 付いて行くから!」

「え〜? 中までは駄目ッスよ?」

「当たり前だ!」


顔を赤くする見張りにチロリと舌を出すリリ。

その見張りの背後では、部屋から出て素早く角を曲がる影があったのだった。




ルルはバッハ侯爵に再度会っていた。

ただし内容は大したことのない事だ。

見張りを一人連れ出すのが目的だったので、実は話なんか無かったのだ。


「んじゃ戻る」


適当に話をすると、俺は侯爵の部屋を出ようとして……ふと気が付いたように、


「ああ、そうだ。 俺をここまで案内した見張りなんだが替えてくれ」

「どうしてだ?」

「あいつ俺の胸ばっかり見やがって気持ちが悪ぃんだよ」


バッハ侯爵の片眉が上がる。

不快そうな顔を露わにすると、


「それはすまないな。 君に不快を与える事は無いようにしよう」


そう告げ傍らの兵士に一言二言話をする。

兵士はすぐに頷いて部屋を出ていき……ドアの向こうで何やら言い合いしていたがやがて静かになった。


「直ぐに次の見張りを準備しよう、少し待ち給え」

「ああ」


クックッ、ざまぁ!


俺は連れて行かれたであろうスケベな見張りに心の中で舌を出すのだった。




そして俺達が囚われて二日が経った。

その間、侯爵の部屋を含めこまめに見張りを感知していたが、どうやら四六時中見張りの数は変わらない様だ。


つまり入口の二人、部屋の中に七人、そして侯爵本人だ。

もちろん騒ぎになればもっと人も増えるだろう……その為に仕込んだつもりだが……不安はかなりある。


(しかし今更計画を止めるわけにも行かないし何とかするしかねぇか)


「ねぇ? 本当に大丈夫なの?」

「ああ、多分な」


不安そうなノエルだが、俺もはっきりとは言い切れねえ。

どんな事でも100%なんてないからな。


っていうか、それは冒険者やってるコイツ等の方が分かってそうだが?

冒険に『絶対』は無いだろうし。


「大丈夫だ、ルルの言葉なら安心して良い」


ウィルが保証してくれるが、コイツは何を持って大丈夫と言ってるんだろうか?

俺は多分と言った気がするんだが……。


「ウィルがそう言うなら信じるけどさ……」


ノエルの理屈も意味が分からん。

この二人の思考回路はどうなってやがんだ?



(問題は証拠も何も無い事だ……俺の言葉だけでどこまで信用してくれるやら)

しかしサイは投げられた。

後はあいつが上手く立ち回ってくれることを祈ろう。



しばらくすると館の中が騒がしくなり始めた。


(ついに来たか? 動くか心配だったか……なんとかしてくれたようだな)


館の中からは、


「どうなっている?」

「何事だ!」

「なぜ彼等が!」

「分かりません!」


あちこちから兵士の声が聞こえる。

それと同時に館の外も騒々しくなってきた。


(そろそろ頃合いか?)


俺は先程から行っている感知を中断する。

この部屋周辺の兵士達も駆り出されたようで、いつもより数が減っている。

部屋の前にいる見張りの二人、そして侯爵の部屋の七人と侯爵本人。


「そろそろ仕掛けるぜ?」

「ああ、それじゃ……マリア頼む」


ウィルに頷くとマリアが二言三言魔法を詠唱する。

そして暫くするとドサドサとドアの前で見張りが倒れ込む音がした。

マリアの魔法『スリープ』により上手く眠ってくれた様だ。


ドアを開けると壁に寄りかかるように見張りが寝ていた。

俺の指示でライオンとウィルが見張りを部屋に引込むと縛って転がしておく。


外では未だに騒がしさが続いており、こちらに気づいてはいなそうだ。

俺達は部屋を出て侯爵の部屋に向かった。




『スリープ』


侯爵の部屋前の見張りが急にふらつくと壁に倒れ掛かり……廊下の角から音もなく飛び出したライオンとウィルが(すんで)のところを支える。

そして廊下に静かに横たえるとこちらも縛って空いている部屋に放り込んだ。


(いよいよ……侯爵と直接対決と行こうじゃねーか!)


俺は勢い良くドアを開けると部屋の中に飛び込んだ!


驚いた顔の護衛達。

椅子に座るバッハ侯爵は特に顔色を変えるでも無く部屋に入ってきた俺達を見つめていた。


我に返った護衛達が武器を抜き放つ!

だがこちらも抜き身の状態である為か、護衛達もすぐには飛び掛かってこなかった。


そんな俺達をバッハ侯爵は一瞥すると、


「随分とマナーがなっていないようだが?」

「人を無理矢理連れてきた奴がマナーを語るとはな」

「それは誤解だよ。 安全に連れて来てあげたんだがな? 最近はギャングとかもいるようだし」

「物は言いようだな」


バッハ侯爵は窓の外をちらりと見ると、


「なるほどな……あれも君達の仕業か」

「さて、どうだろうな?」

「あれが偶然なら、あまりにもタイミングが良過ぎだろう?」


そう告げるとバッハ侯爵は席から立ち上がり、こちらに冷たい目を向けるのだった。


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