ユーナの話
あらずじ欄でもご連絡しましたが、以下を改訂しております。
3話と71話の一部修正、69話と70話削除。
人によっては苦手又は嫌悪があるかと思い修正いたしました。
例えば犬を拾ったとしよう。
そしてその犬がどんなアホだったとしてもきっとみんな可愛がるだろう。
何故か?
答えは『可愛いから』だ。
そして俺の元に来たのは可愛くないデブだ。
……うぅ、駄目だ何に例えても最終的にはデブに戻っちまう!!
マジでこいつを何とかしてくれぇ!!
頭を抱える俺に、
「姐さん! どうしたんですか!? 頭痛ですか? 頭痛いんですか??」
デブが心配そうに見下ろしてくる。
うぜぇーーーー!!!!
お前だよ!? お前の存在だよ!
と思いつつも、頑張って大人の対応をするぜ!
師匠……見ててくれよ、俺こんなに成長したんだぜ?
心配そうなデニムを見上げて必死に笑顔を作ると、
「お前の存在が元凶だよ!! このデブ!!」
……ごめん、やっぱり無理だったわ。
「えぇ! そんな酷いッスよ~」
「ちょっと! それ私の口癖っッスよ!」
項垂れるデブにリリが抗議の声を上げる。
倒れたデニムの事もあり、俺達は全員宿屋に戻っていた。
ユーナ達はまだ戻って来ておらず、俺達は情報を話しつつ時間をつぶしていた。
そして……目を覚ましたデニムは俺に命を救われたことを知ると拾った犬の様に懐いて来た。
しかも「姐さん」とか呼びやがるし……。
「もう俺一生姐さんについて行きますよ!」
「いらん! 帰れ!」
「またまた~そんな遠慮何てしなくていいですから!」
「……」
俺は無言でデブの腹を殴る!!
ぼよ~~ん
デニムの腹がプリンの様に弾んだ。
……効いてねぇや、これ。
「デュフフフ! 姐さんたら照れちゃって……」
「うるさいデブ! あと笑い方キモイ!」
読んでいた本をデニムに投げつけるマリア。
その本を器用にキャッチしつつ、
「ふふん! 何とでも言うがいいさ! 俺は姐さんさえ良ければ……」
「いや、俺もキモイと思う」
「ぐはぁ!」
デニムが胸を押さえて倒れこんだ。
はぁ……コイツどこかに捨てらんねーかなぁ?
「よぉ~戻ったぞ」
部屋のドアを開けてユーナが入ってきた。
倒れているデニムをそのまま踏みつけて部屋の中に進む。
踏まれたデニムがビクンと震える。
「おかえり~」
「おかえり。 どうだった?」
ユーナはテーブルの上にある水差しから水をコップに注ぐと、
「まぁ、待てよ。 俺今戻ってきたんだぜ? 一息ぐらいつかせろよ」
そう告げて水を飲みながら椅子に腰かけた。
そして気が付いたように、
「ゴンズはもう少ししたら戻るってよ、だから俺だけ先に帰ってきた。 ところで……なんだこの敷物は?」
床で倒れているデニムを足先でつつく。
つつかれたデニムの腹がブヨブヨと揺れる。
と、バッと起き上がり!
「敷物じゃねぇよ! 俺はデニムだ! 姐さんの一番の舎弟になる男だ」
「ライオン、そいつ窓から放り投げてくれ」
「えぇ!! あ、姐さん~~」
すがるような目をするデニムから目を逸らし、呆れたように俺を見るユーナと目が合う。
「お前……喋る豚を飼う趣味があったのか」
「誰が豚だ!! この野郎!」
豚呼ばわりされたデニムが憤るが、正直めんどい。
「デニム、静かに!」
「あ、姐さん?」
「し、ず、か、に」
「は、はい」
ようやく静かになったデニムを放置し、
「それで……何かつかめたか?」
「そうだな……まずこの街なんだが、見ての通り塀は高く正直門以外に通り抜けは出来ねぇな」
「そうか……まぁそうだろうな。 要塞と言われるぐらいだし」
「それと聞いている通りこの街は冒険者を確保しては兵にしている。 そうなるとどうなると思う?」
「ん? どうなるって?」
意図した意味が分からず首を傾げていると、
「ふむ、人口が増える……か。 しかし、そうすると衣食住の問題が出てくる」
「その通りだ。 脳まで筋肉って訳じゃなさそうだな?」
「まぁな。 それでその問題をどうしているんだ?」
「まぁ兵が増えれば護衛も増えるからな、この街にも畑があるようだし、足りない分は他の街から仕入れているようだ……だけど胸糞悪くなる話もあってだな」
ユーナは声を落とすと、
「人が増えたりした分、兵力として不要な奴らを追放しているらしい」
「は? 追放ってどこに?」
「街の外に決まってんだろ? 食い扶持を減らすって訳だな」
「なぁ!! ふ、ふざけやがって!!」
思わず大声で叫んで立ち上がってしまう。
ゾンビ達がいる街の外に……それじゃ『死ね』と言っている様なもんだ!
他のみんなも顔をしかめたり眉をひそめたりしている。
「まぁ落ち着けよ。 ここで怒鳴っても何も変わらん」
ふーふー! 息巻く俺は深呼吸をして気を落ち着かせる。
ユーナの言う通り、ここで怒っても意味がない。
「すまん、大丈夫だ」
「うちの依頼主は切れやすいな。 とてもじゃないが僧侶には思えん」
「ほっとけ! 性格は関係ないだろ?」
「まーそれもそうだ。 でもってだ」
再び声を潜めて、
「残念な話がある」
「なんだ?」
「お前達は全員バッハ公爵の元に連行されることになる」
「は?」
ライオンが弾かれたように窓の外をみて、
「囲まれてるか……この人数じゃ逃げるのは無理だな」
窓際に行って俺も見たが……うへぇ俺達の為に何人連れて来たんだよ!?
蟻の這い出る隙間もねぇ程兵士がいやがる。
「ユーナ! 貴方裏切ったのね!?」
噛みつくように吠えるノエルに、涼しい顔のまま、
「バッハ公爵は神官や僧侶を所望しているらしい。 ルル……お前をご指名だ」
「ユーナ……」
力なく見つめる俺から目を逸らすと、
「宿の外は百人以上の兵がいる。 抵抗はするな、あと……」
ユーナは短く魔法を詠唱すると、手のひらサイズのリスの様な動物が現れた。
リスとは違い全身青色をしており、赤い目、そしてオデコの部分に赤い楕円形の宝石が付いている。
「こいつはお前が逃げないようにする見張りだ。 カーバンクル……ルルに」
ユーナが言うなりカーバンクルは素早く俺の肩に乗って……そのままローブの懐に潜っていった。
「さて、それじゃ行こうか! 楽しいバッハ邸までの旅路にな!」
無言の重ぐるしい部屋に、明るいユーナの声が響き渡った。




