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師匠はいずこに?


師匠がこの街にいるかもしれない……

それと同時にこの街の事も調べた方が良さそうだ。



俺達は手分けして情報を掴むことになった。


俺とライオンとリリは師匠と神官や僧侶の。

ウィル達は貴族に関して。

ユーナ達はこの街についてだ。



「そこのおばちゃん、今ちょっといいか?」


俺は道すがらにいた主婦に声を掛けると話を聞いてみる。


「ああ、神官様かね? 教会にいらっしゃるよ」

「ほんとか!? ありがと! 助かるぜ」


あっさりと情報を得ることが出来たぜ!


(それに……僧侶じゃなくて神官様……もしかして師匠かもしれねぇ!)


教会の場所まで聞いてお礼を伝えると、俺達はさっそくそこに向かう事にした。

目指す教会は街の北側、それもこの街を支配している貴族の屋敷に隣接しているとのことだ。



暗く活気のない街……時折巡回する兵士達が鋭い視線を配っている。


そんな中を進んで行くと……教会特有の十字架が掲げられた三角屋根が見えて来た。

確かに……すぐ隣には教会の何倍ともいえる大きさの敷地と館。

そしてそれを高い鉄柵がぐるりと取り囲む。

柵と同じ様な鉄格子状の門が見え、その前では数名の兵士が門番として配置されている。



(……かなり厳重だな)


鉄柵のおかげで館の庭も見えるが、そこも複数人の兵士が巡回している。

しかもどの兵士も油断なく目を光らせていた。


「おい! そこのお前!」


館の前を通り過ぎ様とした俺達を、門番であろう兵士の一人が呼び止める。

その目は鋭く、手は剣の柄に添えられている。



「なんでしょう?」


ライオンが穏便な口調で対応するが、兵士は高慢そうな態度で、


「ここで何をしている? ここがバッハ公爵の館だと知っているのか?」

「私達はそこの教会に用がありまして、ここは通っているにすぎません」

「フン! どうだかな? 館に忍び込む前の偵察かもしれんからな」


兵士はジロジロ俺達を見回すと、


「まぁ、いいだろう。 変な真似はするなよ? その時は死にたいって思う程の目に合わせてやるからな!」


そう告げると門に引き返そうとする。

……コイツ殴りてぇ! その無防備な後頭部に一撃入れてやりたいぜ。


しかし流石にここで問題を起こすのはまずい。

ぐっとこらえると隣の教会に向けて足を進める。


そうして教会に入るまで、ずっと背後から兵士による刺すような視線を感じ続けた。




教会の大きなドアを開く。


そこは数十人……いや、百人以上は入れそうな礼拝堂だった。

そしてドアを開けてまっすぐ進んだ先、段差の上に祭壇がありそこで祈りを捧げている人が見えた。


(師匠!!)


気付いたら俺は駆け出していた。

パタパタと足音が響く礼拝堂の中を通り師匠の元に……!



「誰でしょうか? 神聖なる礼拝堂の中ですよ?」


振り返った神官……それはまだ若い神官だ。


(違う! ……師……匠じゃ……ない)


パタパタ……パタ……


響く足音が静かになり……俺は膝から崩れ落ちてそのまま項垂れた。


(師匠に……会えたと思ったのにっ!!)


悔しさから床を殴ろうとして……必死にそれを押しとどめる。



「あ、あの? 大丈夫でしょうか?」

「ルル……」


心配そうな神官の声と、心配しているライオンの声。


「す、すまねぇ。 つい気が抜けちまったぜ」


す~は~す~は~……深呼吸して気を落ち着かせる。

つい師匠と思い込んじまったぜ。


「大丈夫ッスか?」


リリが心配そうに手を差し出すが、俺はそれを手で制して立ち上がる。


「大丈夫。 ち~っとばかし焦っちまった。 あんたもすまないな、脅かしちまって」

「いえ、大丈夫です。 それより何か当教会に御用でしょうか?」

「ああ、ちょっと話を色々聞きたくてな」


俺の言葉に少し不安そうな顔をする神官。

そして……礼拝堂に隣接する部屋を一瞥する。

奥への扉は閉まっており部屋の中までは見えないが……。


(ちょっと確認してみっかね)


杖の先端を床につけると魔力を流していく……魔法の範囲化の要領だ。

目を閉じた頭の中に感知された存在が白い人影の様にイメージとして浮かび上がる。


(成程な……扉の向こうに二人いるのかそれも武器を持ってやがる)


『ガード』の魔法範囲化で感知できたように、その者達が武器を持っているというのも感知できる。


つまり神官は下手なことは言わない方がいい……という事を言いたいのだろう。

って事は兵士か何かか。


……まぁ師匠の話ぐらいなら大丈夫だろうか?


「最近、この街に神官が来なかったか?」

「神官……ですか?」

「ああ、中年のおっさん神官なんだが……」


(名前は伏せてた方がいいだろう……奥にいる奴らが気になる)


「いえ、この街には神官は私だけですし僧侶はおりません。 大体街を訪れる者も……あ、そういえば昨日久しぶりに誰か来たとか……」


そこまで言って神官はハッと顔を上げる。


「もしかして貴方達が?」

「ああ、そうだ。 ちなみにわかる範囲で良いんだが……この国には神官や僧侶はどれくらい生き残っている?」

「……申し訳ございません。 存じ上げません。 ゾンビや魔族に襲われた者もいるようですが、私はこの街の兵士に助け出されそれからはここに……」


隣が貴族の屋敷、教会内にも兵士……魔族に対して警護の任も兼ねている感じか。



「分かった。 ありがとな、邪魔したぜ」


俺はそれだけ聞くと神官に背中を向ける。


(師匠の情報はなし……他の神官、僧侶も不明……か)


師匠はこの街に来ていないのか……どこに行ったんだよ! あのバカ師匠!!

こんなに俺を心配させやがって! ……早く会いてぇのに。


若い神官が見送る中、俺は潤む目を堪えて教会の外に出たのだった。


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