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宿へ向かう二人


冒険者ギルドを後にした俺達は、みんなが先に行っているであろう宿に向かおうとしていた。


「ウィル、みんなが向かった宿って場所分かるか?」

「いや、流石に分からん」

「まぁ、そうだよなぁ? しゃーねぇ、そこらへんのやつに聞いてみるか」


と、待ち行く人々を見てみるが……。


(つーか通行人の奴らもなんか暗ぇな……やっぱり何かしら不穏な空気を感じてやがんのか?)


街へ入ってきた者達への……カインズ率いる兵達の厳戒態勢。

兵達もトゲトゲしくずっとピリピリしている様だった。

そんな状況であれば街全体の雰囲気も悪くなるだろう。



俯いて俺の横を通り過ぎようとしたおっさんに、


「そこのおっさん! すまないがちょっと良いか?」

「ん? 私かい? ひっ!?」


声を掛けた冴えないおっさんが、俺の姿を見て短い悲鳴を上げる。


「あ、あんたその血はどうしたんだ!?」


あ、しまった。 服に血がついてたんだった。


「あ〜っと、こりゃすまん! 驚かせちまった。 さっき鼻血出しちまってそれの血なんだ、気にしないでくれ」

「鼻血って結構な量……」

「ああ! 俺も一応女なんだからさ、鼻血とか恥ずかしいんで気にしないでくれ!」

「あ、ああ、そうか。 まぁ、あんたが大丈夫ってんなら良いが……それよりなにか用か?」

「この街の宿屋の場所を教えてくれよ」

「なるほどな……見かけない顔だと思ったが旅の者か。 宿ならあれだよ」


おっさんは遠くに見える青い建物を指し、


「今は客も来ないから食堂ぐらいしかやってないかもしれんがね」

「客が来ないって?」

「そりゃこんな時期だ。 外はゾンビだらけだし来ようって奴は……まぁ、あんたらみたいなのは別だろうが」

「そうだな、確かに旅行って気分じゃねーな」

「それに残念だがこの街からは……」


話を続けようとしたおっさんが慌てて口を閉じる。

その視線の先には街を巡回する兵士達の姿があった。


「すまんがもういいだろ? あんたらもそんな血塗れだと捕まっちまうぞ? さっさと宿に行くんだな」

「ああ、サンキューな」


おっさんは顔を隠すようにそそくさと立ち去って行った。



「ウィル、行こうぜ」

「ああ」


行こうとした俺の手を握ってくるウィル。


「ん? 何だよ?」

「迷子になったら困る」

「なるか! 建物見えてんだぞ!?」

「それでも」

「ああ、もう! 分かったよ! 変なやつに絡まれても困るもんな。 ほら、さっさと行くぞ!」


俺はウィルの手を引っ張るようにして宿に向かった。





青い色に塗られた外壁。

木造作りの奥行きのある建物だ。


宿屋と食堂の看板を見ながら扉を開ける。



そこは広い空間で奥にカウンター、広間には丸テーブルや椅子が並べられていた。

どうやら宿の一階が食堂らしい。


時間が早い為か客は一人もおらず、奥のカウンターで雑誌を見ているエプロン姿の男性がちらりとこっちを一瞥すると、


「ここは宿屋と食堂だ。 イチャつきたいなら、この先の休憩宿にでも行きな」

「悪いが普通に客だぜ? 俺の連れが先に来ているはずだ」


俺の言葉にようやく雑誌から目を上げる。

筋肉ムキムキの姿に黄色いエプロンを着た男性。

禿げかかった頭の中心が店の明かりを鈍く反射している。


「今日は三パーティが泊まっているが、どれが連れだ?」

「恐らく全部だ。 男女二人組と男性二人組、それと女性三人組だろ?」

「ああ。 どうやら本当らしいな」


店員はカウンターの下から名簿を出すと、


「確かに後から男女が来るとなってるな。 女は三階の奥から二番目、男は二階の一番奥の部屋だ」

「一緒じゃないのか?」

「当たり前だろ!」


ウィルの残念そうな声に俺がツッコむ。


「まぁ、ひとまず部屋で休もう。 今日の事は飯時にでも話そうぜ」

「ああ、分かった」

「ああ……それと、ウィル」

「?」

「今日はありがとな、俺を心配して助けようとしてくれた事」


まぁ、厄介事も招きかけたが救われたのも事実だ。

一人だと結構ヤバかったかもしれない。


ウィルはいつもの真面目な顔を少しだけ緩めると、


「ルルの……お前の役に立てて良かった」

「ん〜? 助かったのは俺だが……まぁ、そう言ってくれれば気が楽だ。 じゃあな、しっかり休めよ!」


俺はウィルにそう言うと階段を登って部屋に向かったのだった。





時間は少し戻り、ルルが宿に向かっていた頃。



「ウィル達遅いね……」


宿の三階、一番奥の部屋ではノエル達三人が身体を休めていた。

ウィル達と別れてそんなに時間が経っているわけでもないが、ノエルはしきりに窓から外を覗いている。


「もう少し落ちいてノエル」

「落ち着けって言われても……」


呆れるマリアに心配そうな顔を見せ、


「だってウィルが想い続けていた愛しの女性と一緒なのよ? これが心配せずにいられる?」

「でもたかだかギルドへの報告でしょ? そんなに気にしなくても……」

「だって、ギルドに報告に行って、そのままデートとかになっちゃうかも知れないじゃない? そしてなんかいい感じになって二人はそのまま……あーーーー!!!」


自分で話しているうちに両手で頭を抱えこむノエル!


「朝帰りなんかしたら……」

「もう〜落ち着きなさい〜。 ウィルはそんな積極的な方じゃないでしょ〜」

「で、でもウィルだって男だし、もしルルが誘惑なんてしたら……」

「ルルの性格からするとなさそうだけど」

「わかんないわよ!? ルルって女の子だし、顔可愛いし、胸大きいし、背はちっちゃいし、少し天然だし、胸大きいし……」



(胸大きいって二回言ったわね〜)

(胸大きい二回言った……)



「あ!」


頭を抱えていたノエルだったが、急に顔を上げると、


「でも、ルルっていい子ではあるし、きっと黙って朝帰りなんてことはしないはず!」


もはやアリスとマリアは言う言葉が見つからない。

ノエルのコロコロ変わる展開に二人してあきらめモードだ。



(でも男に興味なかったノエルが〜ここまでとはね〜)


アリスがそんな思いでノエルを見ていると、再び窓から外を覗いたノエルが嬉しそうに叫んだ!


「ウィルが帰ってき…………」


途中で言葉が途切れる。


「ノエル?」

「?」


どうしたんだろうか?

アリスとマリアが顔を見合わせた瞬間!


「やっぱり事後だーー!」


叫ぶなりノエルがベッドにダイブして布団に潜り込んだ!



「ええ!」

「え?」


アリスとマリアも窓から外を見ると、ルルと手を繋いでいるウィルの姿が目に入る。

その顔はいつもより嬉しそうだ。



「ええ!?」

「まさか本当に?」


思わずアリス達も顔を見合わせたのだった。


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