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希望を求めて


翌日、俺達は昨日探索した森の前にいた。


「ちょっと待った!」


いきなり俺の言葉にストップを掛けて来た男。

キザな魔術師ユーナだ。


「なんだよ?」


いきなり水を差された俺はつい乱暴な口調になってしまう。

「昨日の続き、早速探そうぜ~!」と言って始めようとした探索を止めたからだ。



「探すのは良いけど、昨日みたいのは勘弁な」

「あ? どーいう意味だよ!?」


くそっ! こいつイライラさせやがる。


「闇雲に探すのはって意味だよ。 早々噛みつくな依頼主さんよぉ」

「チッ、じゃあどうすんだよ?」

「いいか? まずここを見ろ」


ユーナは折れた木の元へ進むと、


「この木がこう折れたってことは自然にじゃねーよな? 折れ口もそんなに古くないし」

「ああ、そうだな」

「そして折れた木の倒木部分……木が凹んでいる。 つまり殴られて……こうやって折れたって訳だ」

「ああ」


何が言いたいんだ? こいつは。


「つまりここにいた人物を狙って、こうやって攻撃が来て……木に当たり折れた。 ここは戦闘によってこう荒らされたってことだ」

「ああ、それは分かるだろ? この一角だけこんな荒れるわけあるか」

「そうだ。 そしてこの戦闘は……ふむ、流れから見るにこっちからこっちに続いている」


そう言ってユーナは森の奥へ踏み込んでいく。

俺達もゾロゾロとその後をついて行った。


「ここで……攻撃が来て、躱して……こっちに逃げたか? でもって……」


辺りの状態を見ながらユーナが森に分け入っていく。


(確かに……言われた通り戦闘の跡がある。 こっちはあっちほど荒れてはいないが……)


ユーナのいう様によく見ると焦げた木や、折れた枝などがあり……それが続いている。

そして……、


「む? ここまでか……ここで何かがあったようだな? 戦闘の跡が途絶えている」


辺りを一通り見ていたユーナが顔をあげる。


「ってことで、この辺りを探した方がいいってことだよ? 依頼主サマ」


唇の端をニィとあげると俺に偉そうな顔を向ける。


「ああ、分かった。 みんなも……昨日は悪かったな。 今日は場所を決めて分担制で行こう」


冷静な俺の言葉にみんなは真摯に頷き、ユーナは面白くなさそうに横を向いた。




そして探し始めたが……、


(何もねぇな……)


昨日とは違い落ち着いた状態で探してはいるものの……何も見つからない。

他のみんなも空振りの様だ。


ある程度探したが……一旦昼食をとる為、俺達は森の中から出る事になった。




「ルル……大丈夫か?」


ライオンが心配そうにやってくる。

俺の手の中にあるスープが減らない事に気付いたようだ。


「あ、ああ。 大丈夫だ、すまん、ぼーっとしてた」

「まだ午後もある。 きっと何かしら見つかるさ」

「そうだな。 その為にも飯くわねーと……」


俺は冷めかけたスープを胃に流し込む。

そんな俺達の元に、再びあのキザな野郎がやって来た。


「依頼主サマ、地図貸してくれよ」

「ん? 地図?」

「ああ、今日探してなんもなければムスタンブルグに向かうんだろ?」

「……」

「ユーナと言ったか? それは今言う事……」

「待てライオン」


俺はユーナに何事か言おうとしたライオンを止めると、荷物の中から世界地図を出してユーナに渡した。

地図ならどのパーティも自分達のを持っているだろうが……コイツわざと俺に言いに来たな?

見つからないなら諦めてさっさと進むぞという意味を込めているのだろう。



「あんがとよ」


ユーナは今後のムスタンブルグへの道中を確認していたが……ふと何かに気付いた様な顔をすると……。


「チッ……やってくれる。 そういうことか」


そう言うと地図に何かを書き加えて俺に放り投げた。

俺がそれをキャッチすると、


「おい、依頼主サマ。 お前の師匠は余程良い性格してやがるぜ、ただもんじゃねーな」

「あ? なんだそりゃ?」

「……今日森の中を進んだルート、昨日の場所含め地図で見て見ろ」

「?」


俺は手にした地図を開く。

すると……、


「これって……!?」


地図にはユーナによって線が書き加えられていたが……その線は大きな矢印となっていた。


「偶然にしては……出来過ぎだな」


横から覗き込むライオンも感想を告げる。


「そんな偶然会ってたまるか! っていうか、お前の師匠はひねくれもんかよ。 こんな回りくどいことしやがって……」

「しかし戦いながらこんなことが出来るとは……」

「ああ、普通じゃねーぜ」



「……」


二人の会話がどこか遠い話のように聞こえる。


師匠は素直じゃない……あの人の気持ちは行動から読み解かないといけない。


手紙などを残さずこんな形をとったのは……魔族に追跡されるのを考えてか、もしくは手紙があればここに来るであろう誰かが居ることを暗示してしまうからか。


(そうだ……師匠自身も魔族に狙われる立場、行先を分からせるような手は避けたかったはず)


「ったく……やってくれるぜ!」


俺は知らず知らず口元に笑みが浮かぶ。


(こんな形にしてわざわざ残したという事は……師匠は生きている!!)


「っくそ! 心配……かけてんじゃねーよ!!」


笑いながらも……俺の目にフッと涙が浮かんでくる。


良かった……師匠が……生きていた!!

それだけで本当に……


そんな俺の様子を見て、ユーナもライオンも何も言わず立ち去っていく。



一人になった俺は暫く立ち尽くしていたが、やがて涙をグイッと拭うと、


(師匠……待ってろよ! 今から追いかけるからな!!)


俺は地図に目を落とす……矢印の先は、隣国ムスタンブルグを指していた。


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