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世間話


王都を出て2日目の晩。

俺達は荒野でキャンプを張っていた。


旅する者達にとっては魔族より警戒すべきなものもいる。

それが野獣や魔物だ。


実際俺も師匠と旅をする中、狼の群れに囲まれたり、熊に遭遇したりしたしな。



ちなみに野獣は今言ったみたいな野生にいる普通の獣の事。

しかし魔物は少し違う。


基本的には人のいない場所にいるが、人間や動物が何らかの影響で変異したものだ。

一説には魔王による実験で生まれたともされる。

まぁ実際下級の魔族が虫見たいな姿だったし、ありえるかもれねーが。


人間が変異したものはゴブリンやオーガー、オークとなりちょっとした知恵を持つずる賢い人型の魔物へとなる。

そして野獣が変異するとキマイラやグリフォン、ユニコーンと言った獣の姿をした魔物に変わるのだ。



街にいる冒険者や兵士は、そう言った野獣、魔物から街を守ったり戦ったりしている。



そして街じゃない場所……つまりこういった旅の途中は、そう言った魔物達から襲われる危険もあるのだ。


そこで各パーティは三角形を描くようにテントを張り、それぞれに見張りを立てて夜を明かすようにしていた。




「う~さみいな」


荒野の夜は冷える。

俺が呟きと共にはいた白い息は緩やかな風に流されて消えていく。


空は快晴。 余計な明かりなどもなく満天の星空ってやつだ。

俺にとって星空は多くの思い出を持つ。


村が滅びた日に涙した夜。

師匠と別れた夜。

魔族を殺せなくて思い悩んだ夜。


そう言った日はいつもこんな満天の星空だった。



真上を見てずっと星空だけを見ていると……本当に吸い込まれそうだ。

星とは一体何なんだろうな……死んだ人の魂が登って俺達を見守ってくれているものと聞いたことがあるが……。


俺は視線を荒野に戻す。


あの中に師匠が混じっているなんて真っ平だかんな!!



「ちょっといいか?」

「ん?」


振り返るとオーリファスで助けた男……ウィルだっけ? が湯気の立つカップを二つ持ち俺の近くに来ていた。


「寒いだろうからこれでも飲むと良い」

「おお! サンキューな。 丁度寒いと思ってたところだったんだ!」


ヒラヒラの僧侶服の上からコートを羽織ってはいたが、それでも寒さは浸透し体の芯まで冷きっていた。

そんな時の暖かい飲み物は本当に助かる。


ウィルは俺にカップを一つ渡すと、「隣良いか?」と隣に立ってきた。

カップからはコーヒーのいい匂いが立ち込め、両手で持つ指が温められる。


隣に立ったもののウィルは特に話しかけてこない。

話があったんじゃないのかなぁ? と思いつつ、仕方ないから俺の方から切り出した。


「そう言えば傷の方は大丈夫だったか?」

「ああ、おかげで助かった。 ルルが居なければ俺は今頃やつらの仲間入りをしていたはずだ」

「まぁ、タイミングが良かったぜ。 どう見てもやられる寸前だったからな」


冗談ぽく俺がニヤリとすると……ウィルはこっちを見たまま真面目な表情だ。

うむ~お堅いやつなのか? 冗談ぽく言ってるんだが……。

そう思っていると、


「ルルは何の為に旅をしているんだ?」

「俺か? 俺は……そうだな。 世界中で発生している疫病退治と、ゾンビになっちまった奴らを救う旅だな」

「世界中……一人でか?」

「ん~……どうだろうな? 他にも神官や僧侶がいるだろうからな。 まぁ俺は俺の出来る限りはするさ」

「そうか……もし俺がお前の旅について行くと__ 」


「ウィル~~」


ウィルが何か言いかけた所で、その後ろから……えっとアリスだっけ? のんびり屋の弓使い。

そいつが現れた。


「何だアリス?」

「ん~~? 姿が見えないから心配しただけ。 それにそろそろこっちは交代の時間よ?」

「ん? もうそんな時間か……分かった今戻る」


戻ろうとしたウィルに、


「あ、ウィル! これ返すぜ、ごちそーさん」


カップを渡すと、ウィルは少しだけ頬を緩ませ、


「ああ、こちらこそ話せて良かった。 ありがとう」


そう言うと自分達のテントへと戻って行く。



「ね~?」

「ん?」


ウィルを呼びに来たアリスが俺の真横に来ていた。


(こいつ、いつの間に真横に!? 気配が全くなかったぞ?)


アリスは背の低い俺に合わせて若干屈みつつ俺を見上げると、


「ウィルとどんなお話してたの~?」

「は? ただの世間話だが?」

「そうなんだ~? 楽しかった?」


(なんだ? 何か知りたい事でもあるのか?)


「まぁ、眠気覚ましにはなったよ」

「ふ~ん……。 ちなみに同じパーティのライオンさんだっけ? あの人は恋人?」

「ぶっ!!」


いきなり何を言い出すんだこいつは!


「違うぞ! 一緒に旅をしてはいるが恋人とかそんなんじゃねーよ!」

「むぅ、そっか~」


何故か残念そうなアリス。


「恋人にはならないの~?」

「そんなんじゃねーよ。 っていうか、一体これは何の質問なんだ?」

「ん~? なんとなく? 世間話?」

「いや、それを俺に聞くなよ……」


(なんなんだこいつは!? 天然系の不思議ちゃんか?)


「ああ、貴方も交代みたいね~」

「?」


アリスが俺の後ろに視線を向ける。

振り返るとリリが欠伸をしながらこちらに歩いて来ていた。


「んじゃ俺も……!?」


再び前を向くとアリスの姿はなかった。

辺りを見回すが……まるで最初からいなかったようにその姿は見えなかった。



「キョロキョロしてどうしたんスか?」


俺の行動を不思議そうに見つめてくるリリに、


「いや……何と言うか……」


夢と思えるような不思議な現象に、歯切れ悪く返事を返す俺だった。


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