仲間を求めて
「俺、前にも言ったと思うんだが……」
「はい?」
ニコニコしながらメイドの……確かコイツ一番年下だったか? ネルルとか言ったっけ?
まぁ、この際名前はいいや。
「この服はなんだ?」
「ルル様の服です」
「……やっぱりそうだよな?」
「はい!」
嬉しそうな顔を見せるネルル。
「なぁ? 前回の時もピンクのフリフリでキレた気がするんだが……」
「はい! でも確か着てくださったんですよね?」
「いや、着たけどよ。 あれは止む無くつーか……」
そう、またしてもこいつらは俺の為に前と同じドレスを準備しやがった!!
ピンクのフリフリは嫌だってあれ程言ったのに!!
「え……まさかネルルの選んだお洋服来てもらえないのです?」
一瞬にして涙目になるネルル。
嘘だろ!? そんな瞬間的に人って泣けるものなのか!?
っていうか、このドレスはお前のチョイスかよ!
ネルルの目から雫が輝きながら落ちていく……大粒の涙が頬を伝っている。
「あぁぁぁ!! もう! 分かった! 着る! 着るから泣くな!」
うぅ……泣きたいのは俺の方だぜ。 くっそ! こんな服なんか! 服なんか!!!
着替え終わると、ネルルはいつのもニコニコ顔だった。
涙の跡すらないとか!?
おい! お前の涙どーなってんだよ!!
と、ツッコミたいのを我慢する。
また泣かれても厄介だ。
……っていうか、ほんとにこれ旅に出る服装なのか?
しかし、その後ララが来て、ようやくこの格好の意味が分かった。
「え? すまん。 よく聞き取れなかったんだが……」
「う~んとね。 今から一緒に冒険者ギルドに行って~ルルにつける護衛を選ぼうと思うの」
「そうか、聞き間違いじゃなかったかぁ~……」
このフリフリのひらひらを着て? 冒険者ギルドに??
だから何の罰ゲームだよ!!
「……わりぃ、選ぶのはララに任せた」
「駄目だよ~? 護衛する方だって、どんな人を護衛するか知っておかないと」
「いや、そこは……」
「駄目~」
なんか……ララがいつになく強引だ。
「でも俺にはライオンが来てくれるって言ってるし、そこまでして護衛を集めるのも……」
「ライオン一人に無理させるの?」
「う……」
そ、そう言われると……な。
「せ、せめて服を……」
「駄目~」
「だからなんでだよ!? 別に俺が行くだけなら普通の服でいいだろ?」
「ふっふっふ~、可愛い女の子が可愛い格好をしていた方が、みんなもやる気が出るってものなのだ~」
「いや、『なのだ~』じゃねーよ! 大体俺は可愛いとかじゃねーだろ!? 性格みりゃわかんだろーが!」
「えー? そんな事ないよ? ルルお姫様見たいとか言われてたでしょ~」
「あ、あれは顔を隠してたからで……」
クッ! やっぱりこいついい性格してるぜ!
「とにかく駄目なものは駄目。 王様から僕に任すって言われた以上、護衛についての選任は僕のやり方でするから」
「おうぼーだぞ!」
「うん? 応募だよ?」
「応募じゃねーよ! 横暴って言ってんだ!!」
「??」
「あ~~こんな時に言葉通じないとか!!」
結局俺の意見は通らず……こんなクッソ恥ずかしい格好で冒険者ギルドに行くことになったのだった。
「こんにちは~」
間延びした口調のララが冒険者ギルドの扉を開ける。
大きな両開きの木で出来た扉だ。
チラリと中が見えたが、入って奥正面に受付のカウンターが、手前は広いロビーとなっており何人もの冒険者がたむろっていた。
ララがギルド内に入った瞬間ざわっと騒めいた。
やはり王国騎士団長は別格らしい。
「ほら~、ルル。 そんな扉の影にいてもしょうがないでしょ?」
「だ、だって……うぅ、こんな格好俺には無理だ!」
「大丈夫。 こわくな~い、こわくな~い」
「怖いとかじゃねー! っていうか子ども扱いすんなし!」
「じゃあ、どうぞ!」
ララがバッと扉を開ける。
「わっ! お、お前、ば、馬鹿!」
慌てた俺だが……時すでに遅し、既に全身をギルド内の全員に見られてしまった。
ララの所為で注目度100%だ。
っていうか……視線が……だ、誰か助けて。
「ほら、いくよー」
ララに手を引かれ……もう俺は抵抗する気力をなくし……そのままギルド内に連れていかれる。
恥ずかしくて顔が上げれねぇ……もう床だけ見ていよう。
ギルド内も俺達を見てザワついている様だが……何を言われているか分かったもんじゃない。
なるべく聞かないよう床を見るのに集中する。
そして……ギルドの受付まで連れていかれると、聞き覚えのある声が俺の名前を呼んだ。
「ようこそ、ララ騎士団長! それにそちらは……え~と、もしかしてルルさん?」
その声に顔を上げて上目遣いで確認すると、
「あ、もしかして……サリナ?」
「ああ、やっぱり! 覚えてていただけました? 直接お会いできてよかったです!」
嬉しそうな笑顔を見せてくるサリナ。
水晶板で見てはいたが……改めて見るとかなりの美人だ。
スッとした目鼻立ちときりっとした瞳。
気が強くそして真面目そうな雰囲気が見て取れる。
外観も綺麗に切り揃えられたショートの黒髪と、ビシッとした受付嬢の服。
背筋もピンと伸び、だらしなさを全く感じさせない。
さすが王都の冒険者ギルド受付嬢と言った感じだった。
「お元気そうで何よりです。 それに今日は一段とその……可愛らしい格好で」
「ぐっ……ち、違うんだぞ? これは城の奴らが無理矢理に……」
「いえいえ、お似合いですよ」
「こんな服が俺に似合う訳ねーだろ! そんなことより!」
俺は恥ずかしさを誤魔化す様にじろりとララを睨むと、
「ほら、さっさと依頼?とかすんだろ? でもって戻ろうぜ。 早く着替えてぇよ」
「う~ん? 依頼かけてもいいんだけど、それだと時間かかるんだよね~決まるまで」
俺とララのやり取りを不思議そうに見ていたサリナだが、
「何かご依頼でしょうか?」
「あ、うん~。 実は今度ルルが厶スタンブルグに行く事になったんだけど、その護衛を……」
「ははぁ……なるほど。 確かにそれだと依頼という形だと時間が掛かるかもしれませんね」
「だよね~?」
「どうしてだよ? 来た奴にパパっと決めちゃえばいいだろ?」
「いや、良くないよ。 何言ってるの~?」
ララが少し口を尖らせる。
「ルルの護衛って事はゾンビとは勿論、魔族とも戦うかもしれないんだよ? 弱い人あてがっても死んじゃうだけでしょ?」
「そ、そうか……確かに、そうだ。 ごめん、俺が軽率だった」
「だから強いかどうか知らないといけないから……依頼って形だと力量を見る為の審査とかもあるし時間が掛かっちゃうんだよ」
……流石にさっさと帰りたいからと言って、今のは考えなしだったわ……反省しよう。
というか、ちゃんとこういう所は考えてくれてるんだな、ララの奴。
俺は少しララの事を感心した。
が、直ぐにその感心を撤回することとなる。
「よ~し! じゃぁこうしよう!」
そう言ったかと思うと、ギルドに集まっている冒険者達に大声で呼びかけやがった!!
「冒険者の中から、危険な旅に同行してくれる強い護衛を募集しま~す! 護衛対象はここにいる可愛いお姫様だよ!!」
その言葉でフリーズした俺。
そんな俺に向けられる大勢の視線。
……もう……何も言うまい
ただ……この時間が早く終わるのを願うだけだ……
俺は虚ろな目で天井を見上げるのだった。




