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お節介


「じゃあ、すみませんが後は……」

「ああ、任せろ。 この街が取り戻せただけでも……な」


ロロの言葉にバーンズが無理矢理な笑顔を作る。


俺達はフリエントの街を引き上げ城に戻る事になり、今は西門に集まって別れの挨拶を交わしている所だった。


引継ぎを終わらせたバーンズの声は明るく変わりない様に見えるが……俺には分かる。

めちゃくちゃ無理してやがるな?


街は取り戻せたがそれでも失ったものは多く辛いはずだが、みんなの手前それを抑えているようだ。



「世話になったな」


俺が声を掛けると、


「ああ、純白姫も元気でな?」

「やっぱり、あれお前か!!」


俺が小突く真似をすると、ニヤリとしつつ避けるそぶりを見せる。

しかしその動作は大げさでどう見てもワザとらしい。


(全く……無理しやがって……見てらんねーぜ)



「おい、バーンズ。 ちょっとこっち来い!!」

「あ、おい! なんだぁ?」


ララ達に「ちょっと用事」とだけ言うと、バーンズの耳を掴んで引きずっていく。



「お、おい。 待て待て耳が千切れちまうよ!」

「大丈夫だ。 千切れても俺が治してやる」

「お前が言うと冗談にきこえねーよ!!」


そうして人気のない路地に連れていくと、俺はバーンズを壁ドン……しようとしたが背が低かったぜ。

仕方なくバーンズに片膝を着かさせると、壁ドンしてやる!


「お、おい。 一体こりゃ何の真似だよ!?」


さしものバーンズも慌ててやがる……ちょっと笑えるが、まぁここは真面目に言ってやるか。


「お前、弱音を言える奴いねーのか?」

「!!」


バーンズが弾かれたように俺を見て……スッと目を逸らした。


「こら、目を逸らすな」


俺は空いている手でバーンズの顔をこちらに向かせて、その目をじっと見つめてやる。



俺とバーンズは暫く見つめ合っていたが……やがてバーンズが溜息をついた。


「ははっ……全くお前ってやつは……お節介にも程があんだろ?」

「いい年したおっさんが泣きそうな面堪えて無邪気にふるまってる方がきついっつーんだ」

「……」


バーンズは一瞬躊躇したが、


「俺にも居たぜ? そう言う事を言い合える奴がな」


(居た……か)

見事なまでの過去形。 やはり今はいないって事か。


「この街を守って死んだんだ。 俺の上司に当たる奴だよ」

「上司を『奴』呼ばわりってホントに仲いいのか?」

「仲が良いから『奴』呼ばわりなんだよ。 同期だったしな」


バーンズは上を見上げる。

ここは路地だ……狭い空しか見えないだろう。


「まだ……実感はないが、落ち着いたら少し吐き出すさ」

「そうだな。 だけどその前に今少しでもいいから吐き出せ」

「は?」


一瞬呆気にとられた顔をしたが、


「いやいや、だから今俺がそんな顔をする訳には……」

「そんな辛気臭い顔で復興なんか出来っかよ! それに俺が気付いたんだ、お前をよく知る部下達はもっと気付くんじゃねーのか?」

「……」

「それに……今この場には俺しかいねぇ。 だから今なら大丈夫だろ?」


バーンズは少し考えたがそれでも首を横に振る。


「いや、やっぱり……」

「くそっ! お前ごちゃごちゃうるせー! 黙って大人しく泣きやがれってんだ!!」


グチグチ言うバーンズの頭を無理矢理胸に押し付けて抱きしめる!


「ば、馬鹿、お前胸が……」

「うるさい、今は俺の胸貸してやるから……ちったぁ吐き出せ。 じゃねーと俺もすっきりと王都に行けねーよ!」


俺の言葉に口を噤むバーンズ。

しかし徐々に肩を震わせると声を押し殺して俺の胸に顔をうずめる。


(全く……なんでこう素直じゃねーかね)


優しく背中を撫でてやりながら暫くそうしてやったのだった。





「……はぁ、なんてこった」


バーンズが落ち込んだ様に下を向いて溜息をつく。

その目は未だに少し赤い、さっきからしきりに誤魔化す様に目を擦っている。


それでもひとしきり泣いたバーンズは……さっきより幾分マシに見えた。


そうして落ち着いた後、俺達はみんなが待っている西門に向かっている所だった。



「こんな形で貸しを作っちまうなんて……」

「くっくっ! これでお前は俺に逆らえんよなぁ?」


何度目かのため息と共に呟くバーンズ。

俺がニヤリとしてやるとバーンズは悔しそうに顔を歪めた。

しかしすぐにプイっと顔を背けると、


「……だが、なんとなくスッキリしたのは事実だ。 ありがとう……な」

「まぁ、なんだ……俺が言うのもなんだが、元気出せよ? また何かあれば胸貸してやるから……」



ガチャン!!


すぐ側で何かが割れる音がしてびっくりして振り返る!

そこには……あ、こいつあの足手まといじゃねーか!!


若い兵士……そいつの足元には音の原因であろう壺が粉々になって散乱している。

しかし兵士はそれに構わず目を見開いて俺とバーンズを交互に見ている。


「どうした? 何かあったのか?」


俺が声を掛けると……ヨロヨロと背後に二、三歩よろけて、


「ば、バーンズ小隊長と……ルルさんが……」

「あ? どうした? 俺とバーンズがどうしたって?」


兵士は信じられないと言った風に首を振ると、


「小隊長がスッキリして……ルルさんが胸を貸したって……ま、まさか二人はそーいう関係?」

「おい、待て! お前何か壮大な勘違いを……」

「そ、そうだ。 落ち着けクレス。 お前は何か誤解を……」


俺とバーンズが慌てて止めようとした時には遅かった。


「嘘だぁぁぁぁ!!  バーンズ小隊長とルルさんがそんなことをしていたなんてぇぇぇぇ!!!」


うわ! あのバカ! 大声で叫びながら走っていきやがった!!

っていうか、あいつの名前クレスって言うのか、初めて知ったぜ。


とか言ってる場合じゃねぇ、これじゃ偉い騒ぎになっちまう!



「くそっ! あいつはどこまで厄介者なんだ……」

「チッ! クレスは俺が何とかするから、ルルはもう王都に旅立て!」


バーンズがクレスを追いかけて走り出した。

が、すぐに足を止め、


「ルル……ありがとうよ。 今度から弱音はお前に吐き出すことにするかな?」

「ん~まぁ、良いぜ? お前さんの弱みが増えるだけだがな!」


俺とバーンズはお互いにニヤリとすると、


「気を付けて行けよ! 純白……いや、ルル!」

「ああ。 バーンズも無理すんなよ? 元気でな!!」


バーンズは街の中に、俺は皆の待つ西門に向かって走り出した。


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