足手まといで危機一髪
俺達を挟み込む様に降りてきた魔族。
そいつも目の前の奴同様、頭は丸く目が四つあり腕が六本生えている。
「おい、お前離せって! ほらもう一体来やがったんだって!」
俺の言葉で兵士は二体目の魔族が来たと知るや、
「うわぁーー! もう駄目だぁ! 僕はここで死ぬんだぁ!」
いきなり大きな声で叫びだした。
うがぁ! 一体コイツは何なんだ!?
叫びたいのはこっちだっつーの!
兵士にしがみつかれているせいで動けやしねぇ!
バシュ!
いきなり空気の噴出音みたいな音が聞こえ咄嗟に杖を向けると、杖に白い糸みたいな物がいくつも絡みついた!
その糸は魔族の腹部分から伸びている。
と、そのまま杖が物凄い力で引っ張られ始めた!
「おわっ! くっ、俺の杖を奪う気かよ!!」
杖を握る手に力を入れ、取られない様に踏ん張る俺。
……そんな俺にまたしても兵士が足を引っ張りやがった!
「もう嫌だぁ!!」
叫ぶなり魔族から逃げるように俺のローブの裾をめくって中に潜り込む!
「おい、馬鹿! お前どこに……こ、こら!」
俺のローブ……というか、むしろスカートだ。
その中に入り込みもぞもぞ動き回る!!
「くっそ! お前何処触ってんだよ!! ひゃぅん!!」
い、いきなり変な場所触ってんじゃねー!! ちくしょう!変な声出たし!!
もう頭にきたぞ!!
スカート内でもぞもぞする兵士に杖を振り上げ……あれ?杖何処だ?
ハッと気づいて魔族を見ると……おぉぉ俺の杖ぇ!!
さっきこの兵士が暴れた時に力が抜けて糸で引き寄せられちまった!!
ああああ、もう!
もう!何なんだコイツは!!
「お前いい加減に……ひゃん!!」
またもや人の……うぅ~~際どいとこ触りやがって!!
触られた拍子に頭を下げた俺のすぐ上を光線が掠める!
魔族が不意に放ったらしい。
だぁぁこいつの所為で魔族の動き見れてねぇ!
ババッと素早く二体の魔族を見ると、反対の魔族が腕を向けようとしている。
「ちっ!」
避けようとして……兵士の奴! 中で俺の太腿にしがみ付いてやがる!?
「ほわぁ!!」
思いっきり胸を逸らし……俺の胸があった場所を光線が通り過ぎる!
(くぅぅ! このままじゃマジやべぇ! 何か手は……手は……)
さわっ
「うひゃぁん!」
うがぁーーーー!!! コイツの所為で考える事もままならねぇ!!
魔族から見つからない様にってここに隠れる意味がわからん!!
……ん? 見つからない様に?
俺は二体の魔族に素早く視線を走らせる。
どちらも再び俺に腕を向けた!!
「だりゃぁ!」
脚を押さえられている俺は仕方なく地面に倒れこむ!
そのすぐ上を光線がクロスして通り過ぎた!
倒れたまま俺は手を上に掲げ……
「『フラッシュ』!」
眩い光が辺りを強烈に照らし出す!!
「!?」
不意を受けた魔族達が目くらましにやられ手を闇雲に振りまわす!
六本もあるからブンブンブンブンとよくわからない動きになっている。
(よし! これで……)
俺は急いで立ち上がると、スカートの中にいる兵士の頭の部分と思しき場所目掛けて拳を振り下ろした!!
ゴス!!
よっしゃ! 綺麗に決まったぜ!
スカートの中で呻き声を上げて兵士が俺の太腿を解放する。
そしてスカートの中からばたりと倒れて出て来た。
(これで自由になったぜ)
魔族達に視線を向けると徐々に視界を取り戻してきたようで、俺に向かって突っ込んできた!!
俺は倒れた兵士をそのままに丘の上から街に向かって走り出す!!
狙い通り魔族達は俺を追ってきた!
丘から街まではだだっ広い野原が続いている。
その中を俺は巧みにフェイントを入れつつ走った!
そのせいで狙いを付けられず光線が明後日の方向に放たれている。
ジグザグに、あるいは急に真横に、そうやって走っているうちに光線を諦めたのか、魔族達が追いかける方に切り替えた様だ。
二体して空を飛んで追って来る!
俺は魔族が前に回り込もうとしたら横に駆けだし、そちらに行くと逆に進む。
(ふふん! ざまぁみやがれ! 俺は体力には自信があるんだぜ!!)
俺に振り回される魔族達を尻目に街へと近づく!
もう少しで逃げ切れたと思ったその時だった。
広範囲に八角形状の蜘蛛の糸が降って来た!!
「うげ! なんじゃこりゃあ!!」
広い範囲に降り注いだ糸を躱すのは不可能に近い……俺の体にも糸が降り注ぎ、体にまとわりつく!
そうして徐々に体の自由が奪われていく……
「こ、こいつ切れねぇ!!」
いくら引っ張ろうが切れないしほどけない!!
べたべたする糸に俺のローブや長い髪が囚われていく……。
バサリと二体の魔族が俺の前に着地する。
俺は……糸でグルグル状態で動けなくなっていた。
「っくしょう! 来んじゃねーよ!! この蜘蛛野郎!」
大声で喚くが……まぁこんな格好で喚いても効果ないよな……。
光線という遠隔攻撃を持っているにも関わらず、魔族は俺に近付くと……その六本の腕を伸ばす。
「くそ! 何しやがる!」
喚く俺に構わず二本が頭、二本が首、二本が腰を掴み……そのまま締め付け始めた!!
(こいつ!? 俺を……握りつぶす気か!!)
物凄い力で締め付けられる。
あ、頭が……割れる。
首が……息が……
腰の骨がビキビキ音を立てていく……
(くっ! こ、こんな事……)
痛みや苦しさに悔しさが混じり……俺の目の前が暗くなっていく……。




