大変な留守番役
「だぁぁぁぁぁ!!」
俺は叫び声と共に地面に倒れ伏した。
「お、お疲れ様ッス」
そんな私に恐る恐るリリが声を掛けてきた。
「ルル、さすがだね~もう全員に掛けてきたの?」
「ぜぇぜぇぜぇ……あ、あったりまえだ! お、俺を、オエッ」
ま、魔力使いすぎて気持ちが悪い……ぜ
だ、だけど吐くなんてみっともない真似出来るかってんだ。
「でもこの人数に魔法を掛け切るなど普通は出来ないよ? 流石世界で一つだけのスキルだねぇ」
「ふむ? 世界で一つだけの?」
あああ、ララのバカ! 俺のスキルを簡単に言うんじゃねーよ!
とは思うものの、俺の口は未だに「ぜぇぜぇ」言っていて言葉が出ない。
「ララ騎士団長。 そろそろ……」
「あ、うん~今行くね」
バーンズが俺から借りた水晶板を片手にララを呼びに来た。
「今から西門側の第一陣が仕掛けるそうです」
「うん、了解。 あっちはロロが指揮を取っているから大丈夫だと思う」
ララがそう言った瞬間、街の方で轟音が上がり、天高く炎の竜巻が舞い上がる!!
それは街の西門を中心に暴れ回り、街を埋めるゾンビ達を巻き上げ燃やし尽くしていった!
「す、すげえ……」
倒れている俺の目にもその様子ははっきりと見える。
あれだけの大魔法一体誰が……
考え込む俺にライオンが近付いてくると、
「ルルお前は少し休んでおけ、俺は兵士達と街に行く」
「ちょっと待てよ! 俺ももう大丈夫だ」
「ふむ、嘘だな」
っく! いきなり見破りやがって!
「こんなに早く魔力が回復するとは思えん」
「だ、だけど……」
「兵士達の中には怪我する者も現れるだろう。 魔力が切れたお前がそれを治療出来るのか?」
「う……」
確かに今の魔力だと数回の『ヒール』が限度だろう。
「くぅ〜分かったよ」
「聞き分けのいい子は好きだぞ」
「おっさんに好かれてもなぁ……」
あれ? でも師匠もいいおっさんじゃ……い、いやいや、師匠は別! 別だから!
一人で考え込んだり顔を赤くする俺を置いて、みんなは街に向かって進軍し始めた。
盆地にある街を見下ろす俺の目には兵士達とゾンビ達との戦いが続いていた。
街の東門から突撃したララ達は、まずララの大地を割く一撃で多くのゾンビ達を地割れに落とし込んだ。
そして数の少なくなった状態から混戦に持ち込む。
一部魔族がいたらしいが今は姿が見えない。
恐らくライオンとララにやられたのだろう。
「……お、お暇ですね。 ルルさん」
俺の隣りにいる若い兵士が話し掛けてきた。
一応俺の護衛ということで付けられた若い兵士だったが、さっきから顔を赤くしてガチガチに固まっている。
……コイツいざって時に大丈夫なんだろうか?
「まぁ、暇と言うより魔力を回復してるんだが……」
「ですよね? やっぱりお暇ですよね? じゃあ私の話でも……」
コイツ人の話聞いてんのか?
「僕の家って商家なんですけど、ルルさんは安定した生活に興味はありませんか? も、もしくは好きな物とか……」
なんか何処かの王子を思い出すな……あの時ほど強引じゃないけど。
ただ、人の話を聞かないとことかそっくりだ。
俺が何も言わないのをいい事に、兵士がドンドン自慢話をし始める。
僕の家系は何とかっつー人がいますだの、今どんなとこと取り引きして商売が軌道にのってるだの……まぁ、俺を巻き込まず勝手に喋っている様だから良いけどな。
街の方は南北からの兵士達も突入して街全体が戦場と化しているようだ。
時たま例の魔術師だろうか? 炎の竜巻や炎の壁の様なものが立ち上る。
(どうやらこのまま終わりそうだな?)
「……で、僕がトップになったわけですよ」
俺の横では未だにペラペラ兵士が話していたのだが、その言葉に被せる様に翼の羽ばたきが聞こえ……やっぱり来やがったか!
俺達の前に魔族が舞い降りた。
街にいた奴が来るかもしれんとは思ったけど……予想当たっちまったか
ん? だけどコイツ今までの魔族と違うな?
色は黒色で羽なんかは一緒だけど……なんつーか今までの奴等はカマキリみたいだったが、こいつは丸い頭に目らしきものが四つ、でもって腕が……六本もあんのかよ!
「うわぁぁ! 何だコイツ!?」
俺の横で自慢話を繰り広げていた兵士が腰を抜かしたように尻餅をついている。
その顔は恐怖と混乱に染められアタフタしていた。
そんな騒がしい兵士に魔族が顔を向けて、腕を向けようと……
(ヤベェ! コイツ、この煩い男を……)
俺は素早く『ガード』の魔法を唱えて兵士を庇った!
……魔族の腕から光線が放たれる!!
(やっぱりこれか!!)
前と同じ様に強化した杖で光線を受け止めると、そのまま最後まで受け止め切った!
魔族が頭を傾げる。
光線を受け止められたのが不思議な様だ。
(今がチャンス! って突っ込みたいが……手が六本ある奴だしなぁ……)
後ろには腰を抜かして倒れている兵士がいるし……っていうか、これじゃ護衛じゃなくて足手まといじゃねーか!
「おい、お前立てるか?」
魔族から視線を逸らさず後ろの兵士に声を掛ける。
「は、はひ!」
声が上ずっているが声が聞こえているなら大丈夫だろう。
「アイツは俺が相手してやるから、お前は街に行ってライオンを呼んできてくれ」
「わ、わかった」
兵士は素直に立ち上がろうと……
「おい? どうした早く……」
「ご、ごめんなさい。 腰が抜けて……」
「んだと!?」
ま、まじかよ!
二発目の光線を受け止めつつ……どうする? この兵士さえいなければ……いやむしろ魔族は俺狙いのはず、俺が囮になれば……
光線が途切れたのを見計らい、
「おい! そこのクソ魔族! お前の光線なんざいくら撃たれようが効かねーんだよ!!」
俺は魔族を挑発する様に乱暴に言葉を叩きつける。
魔族が俺の方に視線を向けた。
俺はそのままジリジリと横にずれる……こうやって兵士から視線を逸らして……。
ガシィ!!
「んな!?」
「ま、待って! 置いて行かないで!!」
兵士が俺の腰にしがみ付いてきた!
「おい、マジか嘘だろ? 大丈夫だから! いいから手を離せって!!」
「い、嫌だ! 手を離したら僕を置いて逃げるつもりだろう!!」
くっそ~足手まといどころじゃない! こいつ魔族側じゃね!?
仕方なく頭に一撃入れようかと思案していると……バササッ!
「うげ!!」
俺達を挟む様に……同じ魔族がもう一体降りて来たのだった。




