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魔法の範囲化


俺達はフリエントを見下ろせる小高い丘に集まっていた。


フリエントは王都とオーリファスの間にある盆地に作られた街である。

人口は三万人で内五千人が冒険者や兵士達であった。


早々陥落する街ではないのだが……今や街の至る所から火の手が上がり、空を黒く染めている。


「くそったれ! 俺達の街を……」


バーンズが悔しそうに拳で地面を殴りつける。

そのすぐ横で街を見下ろしつつ俺とライオンは話をしていた。


「ふむ、見たところ塀などに損害は無いようだな……やはり門を開けられたか」

「でも何で魔族がこんなに動いてるんだ? 元々そんなに動く事はなかったんだろ?」

「ふむ……」


俺の言葉にライオンが考え込む。



その時、俺達の後ろで兵士達のどよめきが聞こえてきた。


「おい、あれって……」

「ああ、あれがフィリ厶国騎士団最強の……」

「あんな少女が!?」


ざわめく兵士達の間から見覚えのある青いショートカットの少女が現れた。

相変わらず背中には大きな大剣を背負っている。



「たいちょー!」

「ララ……」


喜び溢れるリリの声とバツの悪い俺の声。



「やぁ、リリ。 お仕事ご苦労様。 指令ありがとうね」

「ララ隊長の為なら全然ッスよ!」


ララがリリに笑顔を向けて頭をポンポンしてやる。

リリはポンポンされると嬉しそうにララの周りを回り始めた。


(まるで犬だな……尻尾があれば千切れんばかりに振られてそうだ)


と、ララが俺の方に歩いてくる。

俺は頬を掻きつつ視線を空に向けた。


逃げ出して来ただけに会いづらいぜ……


「おひさし~ルル」

「よ、よぉ。 元気だったか?」

「うん、僕は元気。 ただロロがねぇ……」

「うん? ロロに何かあったのか?」

「ルルを怒るって息巻いてた」

「うぐっ、そ、そうか……」


し、仕方ねぇ! 逃げ出したのは俺だしな。


「分かった、その件は後で怒られる。 それより街をどうするんだ?」

「王都側の西門と、コチラからの東門、それと回り込ませた冒険者達と守備隊で南北から攻める」

「結構、大胆だな? 全方位から攻めるなんて」

「時間差つけるから、少しずつズレる」

「そうなのか?」

「まずは西門から攻め入って、次にコチラ。 最後に南北から挟む」


「王国騎士のララ団長だな? 俺はフリエント所属の第四~第六守備隊を率いるバーンズだ」

「バーンズ隊長? よろしくね~」


ララのぽわぽわした雰囲気に少し飲まれつつ、


「あ、ああ。 それと……今聞くことではないかもしれないが、フリエントの守備隊がどうなったかし知っているか?」

「……ごめんね。 悪いけど今それを話す時じゃないと思う」


申し訳なさそうな顔をするララ。

その言葉で多くを悟ってしまうが……確かに下手な話でここにいる兵達の士気を削ぐものではない。


「ああ、いや。 俺の上司から指示があればって話だったんだ。 すまねぇ」

「ううん~、気にしないで。 それに街の中にはきっとまだ隠れている人達だっているはず、早めに街を取り戻そうね~。 そうすればもっと助けられる」

「あ、ああ! 騎士団長のあんたが居れば心強い!」


バーンズの言葉ににへらぁと笑みを浮かべるララ。


……俺が最初にあった時、その強さを見ていなければ『本当に王国騎士団長?』と思えるぐらいそう見えねーな。



「ルル」


不意にララに話しかけられた。


「なんだ?」

「ルルってどんな魔法が使えるの?」


お? 珍しくララが真面目な顔で尋ねて来たな。


「あ~っと、そんなに多くねぇぞ? え~と、『ヒール』と…………な感じだ」


俺が説明してやると、


「兵士達に『ガード』頼める?」

「『ガード』は良いが……全員にか? 時間掛かるぞ?」

「?」


ララは不思議そうに首を傾げる。


「範囲化すれば~ルルなら直ぐ行けそうだけど?」

「範囲化? なんだそりゃ?」

「えとね~魔法を範囲内の人に掛けれる様にするの」

「それって……」


俺が師匠に言われたやつか!

村ごと解呪出来るようになるとかなんとか……


「ララ! お前そのやり方知ってんのか?」


俺の食いつくような勢いにもニコニコしながら、


「うん~教えてほしい?」

「ああ! 是非頼む!!」

「じゃぁね~……」


ララにしては珍しく意地悪っぽい顔をしている。


「後でお姫様抱っこさせてくれるなら~」

「げ!? お前まだあの時の!!」

「ふふ~ん、恥ずかしくないって事を証明してあげるの」


いや、恥ずかしいのは恰好とかじゃなくて俺の気持ちなんだけど……ああ、もう!!


「分かった! 分かったよ!! もう、時間ねーんだろうが!!」

「えへへ、やった」


心底嬉しそうなララは、


「じゃあまずはその杖を地面に刺して」

「杖だな? こうか?」


俺は杖の柄を地面に軽く突き刺す。

手を離しても杖は倒れず刺さっている。


「そうしたら、杖の先端に手を添えて~」

「こんな感じか?」

「そうそう、そしたら~目を閉じて……感じるかな? 杖を中心に範囲内にいる人達の事」


俺は言われた通り目を閉じるが……何も感じない。


「何も感じねーぞ?」

「あ、魔力を杖を通して地面に流してね」

「ああ、なるほどな」


そりゃ目を閉じるだけじゃ感じないわ……俺は目を瞑ったまま言われた通り魔力を杖に……そして地面に流していく


目を閉じていると……心の中に何かがボウッと浮かび上がってくる。

俺を中心に……一、二、三……分かるのは十人ぐらいだろうか?


「ララ……多分だが……十人ぐらいか? いる様に感じるぜ」

「そうしたらその人達に掛ける様な感じで、杖に掛けたい魔法を流し込んでみて?」

「ああ……『ガード』」


姿を感じる者達が持つ……恐らく武器だろう……魔法を流し込む


「ルル、もう目を開けていいよ?」

「あ、ああ」


ララに言われて目を開ける。

そこには剣をかざしたララの姿があった。

その剣はうっすらと青い光に覆われている。


「ほら見て~? 『ガード』掛かってるでしょ?」

「ほ、ほんとだ! マジで!?」


辺りを見回すと心で感知した奴らの武器も青く光っていた。


「お、おお! やったぜ!!」

「うんうん。 初めてだからこの範囲だけど、きっとルルならもっと範囲広げられるよ~」

「おう! これで村ごと呪いを消す日も近いぜ!」

「じゃあ、兵士達に『ガード』をお願いね~」

「ああ、早速やって来るぜ!」


俺は喜びながら兵士達に『ガード』を掛けて回り始めたのだった。


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