問題の連鎖
「それではいよいよ?」
「ああ、この街も何とか落ち着いたしな……」
俺はセレスに返事をしながら朝日に照らされる街に目を向ける。
街の西門は大きく開き、兵士達が忙しく行き来している。
ゾンビ達の掃討はほぼ完了したものの、未だに家に隠れていた人達の救助や、後片付けに追われている。
「ルル、準備は出来たのか?」
「お? ライオンか、おはよう」
俺に同行して旅に出る準備を終えたライオンが朝日に照らされる中歩いてくる。
「おはよーッス、皆さん」
テントから顔を出したリリが髪を結びつつ挨拶する。
「リリも準備出来たのか?」
「バッチリッス!」
ピースサインで答えている。
「おはよう〜元気なようね?」
そこへシエラも現れる。
「ああ、シエラ。 おはよう」
「もう出るの?」
「そうだなぁ〜? 俺的にはもう少し遅くてもいいんだが……」
「駄目ッスよ! 早く王都に向かうッスよ」
俺の言葉にリリが少し憤慨しながら両手をバタバタさせる。
「まぁこういう訳だ」
「なるほどね」
シエラがリリの様子を見て納得したように頷く。
その横にいたセレスが、
「子供達に挨拶なされますか?」
「いや、流石にな……それに別れって何言っていいか分からんしな……」
それに俺も寂しいしな……なんかあれだけ遊ぶと親しみ湧いちまったし
「ホントにいいのか?」
「そうッスよ、あんなに仲良かったッスのに」
ライオンとリリに言われるが、
「良いんだよ。 俺はまだ旅を続けなきゃなんねーし……後ろ髪引かれちまうからな」
俺が二人に返事した時、
プルルルルル……プルルルルル……
いきなり俺の荷物から変な音が鳴り響く。
「うん?」
「なんだ?」
「なんの音ッスか?」
いきなりの音に首を傾げつつ、俺が荷物を漁ると……コイツか
水晶板を取り出した。
その板からは今もプルルルと音が鳴り響いている。
「ルル、ちょっとそれ貸して」
シエラが俺の手から水晶板を受け取り、慣れた手付きで真ん中に表示されているパネルを押した。
『……ああ、良かった。 繋がりましたか?』
すると水晶板には王都の冒険者ギルド、受付嬢サリナが映し出された。
「サリナじゃない? 一体どうしたの?」
『シエラもおりましたか……急ぎ伝えたい事があり連絡しました。 そちらにバーンズ小隊長はおりますか?』
「ええ、居るわよ? 今ここにはいないけどね」
『では急ぎ呼んできて下さい。 緊急事態です』
サリナ指示の下、リリによってバーンズが連れて来られた。
「何だってんだよ、こんな朝っぱらから……」
ブツブツ言いながら来たバーンズだったが、俺達の視線と水晶板のサリナを見て顔を引き締める。
「よぉ? 何かあったようだな?」
「おはよう。 俺達つーよりサリナがな」
『おはようございます、バーンズ小隊長』
「おはようサリナ。 冒険者ギルドからとは珍しいな……何があった?」
『かなりの緊急事態です。 貴方達の街であるフリエントがゾンビの軍勢に制圧されました』
「は?」
「な?」
「!?」
隣りで聞いていた俺達やシエラ達も息を呑む。
「そんな馬鹿な……俺達の街は備えもあったし、俺たち以外の兵士だって沢山いたはずだ」
『……魔族です』
「何だって?」
『魔族がゾンビを統一してまるで兵団の様に指揮していたのです』
「数は? 千や二千ぐらいじゃ……」
『二万です』
「な!?」
その数の多さにバーンズが絶句した。
バーンズが把握している限り街の兵は五千、今バーンズの指揮の元、千人がオーリファスに来ている。
それでも二万のゾンビ程度では落とされる筈がないのだが……。
『魔族達が空から奇襲と、門を解放して……そこからゾンビ雪崩れこむ様に街に侵入しました』
「そんな!」
『ただし王都が近かった為、王都の守備隊が駆け付けて街の人達の大半は逃す事ができました』
「そ、そうか……」
『しかし街自体は守り切れず、撤退戦となり……多くの人命と引き換えに街は陥落しております』
「……」
俺達は黙ってその話を聞いていた。
ゾンビの数二万……この国ではそんなにゾンビが増えていたのか。
「それで……俺達はどうすればいい?」
『王国騎士団が街の奪回作戦を敢行予定です。 それに合わせて街の反対側から挟撃して下さい』
「本気か? こちとら千人程度だぞ?」
『大丈夫です。 そちら側には王国騎士団長が参加します』
……その後、サリナとバーンズで細かい打ち合わせが行われた。
バーンズ達が拠点とするフリエントの街は、ここオーリファスの街と王都アルファルドを結んだ中間地点にある。
つまり王都アルファルドの東門から出て真っ直ぐ進むとここに辿り着くって訳だ。
俺は北門から出て迂回するように回り込んでオーリファスに来たからフリエントの街には寄っていない。
……と、話が終わったのかバーンズが俺達のもとに歩いて来ると、
「すまない、これ返しておく」
水晶板を渡されつつ、
「さっきの話……聞いていたと思うがその上で頼みたい。 すまないが街の奪還に力を貸してはくれまいか?」
神妙な顔をして頼み込むバーンズ。
(まぁ、こうなる気はしてたし……それに世話になったバーンズには借りがあるしな)
「勿論いいぜ」
「あ、ありがとう! 助かる」
お礼を告げるバーンズが、
「その水晶板もお借りしたい。 王都の騎士団と共同作戦になる以上、連絡を取り合いたいのでな」
(なるほど、それもあってのお願いか……)
「すまないが俺は部下達と話をしてくる。 また後で」
片手を上げると、バーンズは足早に兵士達のもとへ歩んで行った。
(しかし……魔族とゾンビ……か。 厄介になりつつあるぜ)
俺は次々と起こる魔族絡みの事件に、少しだけ不穏な空気を感じるのだった。




