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忘れちゃいけない事


それから俺達はゾンビ達を殲滅し続けた。

そしてようやく落ち着いたのは、すでに援軍が到着しているであろう昼を回った頃だった。


「神の名のもとに祝福を。 彼の者に癒しと平穏を……『ヒール』」


俺が回復魔法を掛けるとライオンの傷が塞がってゆく。

俺、リリ、ライオンの順で傷を治し、これで全員完治した。



「すまない、ルル。 助かった」

「いや、俺の方こそ……任せておけなんて大口叩いておいて不甲斐なかった。 ごめん」

「戦場での想定外などいくらでもある事だ。 それでも俺達は生き残れたし、こうやってお前に傷を癒しても貰った。 問題ない」

「そうッスよ! それに僧侶なのに私達と一緒に戦わせてしまってる事こそ申し訳ないッスよ」


リリもウンウンとライオンに同調している。


「ひとまず、さっさと門を開けるぞ? また集団で来られても堪ったものじゃないからな」


そう言うとライオンは再び鎖を腕に巻き付けしっかり握ると引き始めた。


「あ、今度は私も手伝うッスよ!」


リリも鎖に手を掛けると、二人して引き始めた。


「あ、じゃあ俺も」

「いや、さすがにルルは見張りを頼む。 接近されてからの対応だと遅くなるしな」



う……そう言われちゃしょーがない。

俺は通りの方に目を向けた。




動くものは見える範囲にはいない。

先程俺達が倒したゾンビたちが山のように道に倒れ伏している。


……ゾンビになったら……倒すのが救済……か


旅をして初めの頃、師匠に言われた事を思い出した。


最初はゾンビと言えど手を下すのに凄い抵抗があった。

そりゃそーだよな? だって元々みんな人間で……病死してゾンビになった奴なんて風体は何も変わらない。

死んでいるのに動き回り血は流れ……それなのに頭に一撃加えるなんて……抵抗ない奴の方がおかしいだろ?


実際初めてゾンビを倒すとなった時に、俺は固まってしまった。

情けない事に震えてさえいたんだ。


そんな俺の前で師匠は……ただ黙々とゾンビ達を救済していた。


正直師匠の事もまだあまり知らない時だったから、師匠が凄く恐ろしく見えた。

でも、師匠の顔を見た時に俺はハッとしたんだ。



なんて悲しそうな顔なんだ……ってな。



師匠だって……今まで沢山のゾンビを救済していた師匠だって、平気じゃなかったんだ。

ただ黙々としていたのは声を出すと叫んでしまいそうだから。

平気なふりをしないと……きっと耐えられないから。


そしてそれでも誰かがやらなくちゃいけない……じゃないと犠牲者は増えてしまうから。


だったら……俺もやるしかないだろ?

師匠だけに辛い思いをさせて、その弟子の俺が痛みを分かち合わないわけにはいかないしな。


俺がゾンビを殴りつけた時、師匠は特に何も言わなかった。

今でこそ多くのゾンビを救済した俺だが、あの時のゾンビを殴った感触は忘れられねぇ。

多分、忘れちゃいけない事だと思う。


そして全てのゾンビを救済した時、師匠が言ったんだ。



「ルル、今のお前の顔。 すっごい酷いぞ」



だから俺も言ってやったね。



「師匠ほどじゃない」



そうしたら師匠は俺の頭を軽くたたいて……「ありがとう」そう小さく言ってくれた。


俺は……師匠の痛みを少しでも分かち合えたんだろうか?

今でも分からない……だから……師匠に直に聞いてみねぇとな。






いきなりポンっと肩に手が置かれる。


「ひぅ!」


ビックリして変な声出た!


「珍しくボーとしていたようだな? それに何だか……酷い顔をしているぞ?」

「そうッスね~。 悲しそうな苦しそうな……それに少し泣いてるんスか?」

「うるせー! 泣いてねーよ! ちょっと、欠伸が出ただけだ!」


門の閂は外した様で、二人して俺を不思議そうに見てくる。

もしかしたら何度か俺の事を呼んだけど俺が気付かなかったのかもしれない。


俺はさり気なく服の袖で顔を隠す。


(っく! こんな恥ずかしい顔こいつらに見せられっかよ!)




二人の後ろにある西門は大きく開き、その向こうには多くの兵士や冒険者達が待機してこちらを見ている。


「ほら! あいつらが待ってるぜ。 報告して……さっさとこの街を解放するぞ!!」


俺は二人の前に立ち、街の外で待機している援軍に向かって歩き出す。

援軍の人達は、門が開けられその向こうから歩いてくる俺達の方に視線を向けている。



「あ、そういやルル」

「なんだ?」


歩きながら後ろを付いてくるライオンに返事を返す。


「俺は別に問題ないのだが……お前はその恰好で問題ないのか?」

「あ? 恰好?」


俺は自身の姿を見て……見、て……ぇぇええええ!!!


僧侶服の下半分が大きく破られて……パンツ丸見えじゃねーかよ!!!!


そーいやゾンビに破られたんだった!!!



「お、お、おま……。 も、もっと早く……」

口をパクパクするが言葉が出ない。


「まぁ喋るより先に隠した方がいいッスかもね。 みんな見てるッスから」


リリの声に反応して、バッと援軍の人達を見ると、


サッと顔をそむけた人が三割、ジーっと見ている人が七割……かな?

とか言ってる場合か!?



「あ、あ、ああぁぁぁぁぁぁ!!!」


さ、流石にこれは……いや、もう、あはは、笑うしかないわ。


恥ずかしさと混乱と……何もかもが一斉に来た俺の頭はオーバーフローしその場に倒れこむ。


「もう……どうでもいい」


慌てて駆け寄るライオンと俺にマントを掛けてくれるリリ。

そんな二人に虚ろな目を向けつつ、ちょっとだけ現実逃避した俺だった。


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