西門の戦い
「うげ、あれどうするよ?」
こそっと顔を覗かせた俺は思わず後ろにいる二人に声を掛けた。
俺が見ている視線の先、西門のところには何故か数十体のゾンビたちがたむろっている。
俺達が街に入る時はあんなに居なかった筈なのに……。
「ゾンビがどこかに行くのは期待できまい。 やるしかないと思うが……」
「そうッスね」
二人は殲滅提案だ。
俺としても倒すのは構わないのだが、怖いのは他のゾンビが集まってくることだ。
未だこの街には千以上のゾンビがいるはず、全部来ないにしても百や二百来た日には三人では限りがある。
(しかし……ここにいても確かに埒があかねぇか)
「仕方ねぇ! やるか!」
俺の言葉に二人とも力強く頷いて見せる。
門のところにいたゾンビは、どうやら冒険者達だったようだ。
ここで外に出るのを食い止めていたやつらだろうか?
ローブ姿のゾンビ、その首がいきなり血飛沫を上げて地面に転がった。
そしてそこには剣を持つライオンの姿がある。
「あがぁぁぁ!!」
「げぇぇぇ!!」
周りにいるゾンビ達がその音に瞬時に反応する!
しかし、それでもライオンの方が素早い!
ゾンビ達が動き出す前に、更に二体のゾンビが崩れ落ちた!
俺も杖をそこにいた女性ゾンビの頭に振り下ろす!
フード付きローブを身に付けた女性。 ローブには十字架が描かれている。
(僧侶……か)
複雑な気持ちだが、感傷に浸る暇はない!
横にいた冒険者ゾンビが大きな剣を俺に振り下ろす!
俺の身長ほどもある両手剣で……受けるのどうやってもこれ無理だろ!?
ささっと身をかわし、振り下ろし体勢のゾンビに向かって杖で殴りつける!!
そいつは背が高く顔に届かず……喉に命中して前屈みになった。
そこを狙い後頭部を杖で打ち据える!
(次は!?)
振り返った俺の眼にはある程度殲滅を完了して閂を外そうと鎖を手にするライオンと、残りのゾンビを蹴りと正拳で叩きのめすリリの姿があった。
俺はライオンに駆け寄ると、
「どうだ? 本当に持ち上げられそうか?」
「ああ、ただ両手で引く必要はある。 悪いが暫く頼むぞ」
「ああ、任せとけって!」
ライオンが腕に鎖を巻き付け、両手で鎖を引き始めた!!
徐々に……鎖が引かれて行き、扉の下から地面の穴に突き刺さっている巨大な金属棒が持ち上げられていく……。
「ルル!」
リリの声に目を向けると、通路の向こうからゾンビの集団が走ってくる!!
「チッ! どっかの集団が気付きやがったか! リリ、ライオンが閂を外すまで持ちこたえるぞ!」
「了解ッス! ほいっと!!」
返事と共にゾンビが蹴り飛ばされ壁に叩きつけられる!!
壁に血の跡を残しながらゾンビがずるずる倒れこむ。
「うがぁぁぁぁぁ」
「へぎゃぁぁぁぁ!!」
言葉にならない奇声を上げてゾンビ達が走ってくる!!
俺は近くに落ちていた小型盾を拾うと構える。
使い方なんて知らないが、あの数相手に短杖だけでは厳しいものがあるからだ。
「だりゃぁ! ッス!」
先頭のゾンビがリリに蹴飛ばされ、後ろから来ていたゾンビ達を巻き込んで倒れていく。
それが戦闘の始まりだった。
数多く迫るゾンビ。
俺は左から来るゾンビ達を盾で押しのけながら右から来るゾンビ達を叩きのめしていく。
頭を狙う暇はない、とにかく襲い掛かってくるゾンビ達を火の粉を払うかのようにぶちのめしていく!!
(っ!!)
背後から肩口に噛みつかれ、頭突きで追い払う。
盾越しに俺を捕まえようと沢山の手が伸びて突き出される。
(引きずり込まれたらお終いだ、盾で押しのけつつ……!!)
右から来るゾンビ二体を杖の先端で殴りつける!!
倒れたゾンビに入れ替わる様に次のゾンビが襲い掛かってくる!!
ビリビリッ!!
ローブを掴んだままゾンビが倒れこみ、それにつれてローブが破ける!
結構丈夫な僧侶服だったが……劣化もあったのだろう。
「くっそ! 邪魔すんな!」
前にいるゾンビを殴り、すぐさま後ろから来ていたゾンビに杖の柄をお見舞いする。
しかしそうやって戦ってはいるが、ゾンビが途切れない。
それどころか増えている様にも感じる。
「ぐぁ!!」
倒れたゾンビが俺の足に噛みついた!!
素早く足を上げ、そいつを踏みつける。
しかしそちらに気を取られたのか、今度は二の腕に噛みつかれた!!
「ってぇじゃねーか!!」
身を捩じってゾンビから逃れると同時に、そいつの頭に杖を振り下ろした!!
くぐもった声を上げてのけ反ったゾンビが倒れる。
しかしそいつの後ろから、次のゾンビが現れた!
「おわっと!!」
ゾンビがいきなり短剣で突いて来た!
どうやら冒険者ゾンビだったようだ。
何とか杖で逸らせたが……俺の頬を薄く切り裂く。
「ったいんだよ!!」
顔面に杖を叩きこんでやる!
っていうか、あとどれくらいだ!?
「ライオン!! まだか!?」
返事が無い……俺は後退しながらライオンをチラリと確認する。
鎖を引くライオン、その体にはいつの間にかゾンビ達が張り付くようにして歯を立てていた!!
俺達が迎え撃った集団とは別な奴らが来ていたようだ。
「っ! ライオン!!!」
俺は前にいるゾンビを盾で強打して打ち倒すとライオン駆け寄り、その体にしがみついているゾンビの頭に杖を振り下ろす!!
ライオンに噛みついているゾンビを三体程倒したところで、俺の背後からゾンビがのしかかってきた!!
「くそ! お前離れろ!!」
そのまま首筋に噛みつかれる!!
(やばい!)
反射的に後頭部で頭突きを食らわせると、首筋から歯が離れてそいつは地面に倒れこんでいく。
「大人しくしててくれ!」
倒れたゾンビを蹴飛ばしてライオンに向き直る……剥したゾンビが再度張り付いている。
ライオンを助けようとした俺をゾンビ達が囲みだす!
く! 何て事だよ……
予想以上のゾンビの数に俺は焦っていた。
(ライオンも閂を開けられていない、ゾンビの数が多く尽きない……俺もリリも動けない……このままじゃ)
そして俺は決断すると、
「ライオン!! 一旦閂を放せ! こいつら殲滅を優先するぞ!!」
俺の言葉にライオンが鎖を放した。
ジャラジャラ音を出しながら鎖が引かれ……金属の閂がズズンと音を立てて再度掛かる。
シュッ!!
ライオンの剣が一閃したかと思うと、周りにいた数匹のゾンビが一斉に倒れた。
首や頭を斬り飛ばされている。
「ライオン! すまない……俺が不甲斐ないばかりに」
「ルル、それは後だ。 まずはゾンビ達を」
話ながらライオンの剣閃が煌めきゾンビ達が二、三体ずつ倒れていく。
体中噛みつかれて血を流してはいるがその太刀筋に衰えは見えない。
これなら……ライオンは大丈夫そうだ。
俺はリリの方に目を向ける。
ゾンビ達に囲まれているようでリリの姿は見えないが、ゾンビ達の中心から空に向かってゾンビ達が次々打ち上げられている。
リリによって跳ね飛ばされているらしい。
(さすが王国騎士団、つええな)
俺は感心しながらも目の前のゾンビ達に立ち向かっていった。




