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小さな約束


山間部の街オーリファス


俺達が今いる街で、フィリ厶国の東西を繋ぐ要所となっている。

東に進めば海側の街や村に、西に進めば内陸部の王都アルファルドを始めとする砂漠や荒野の広大な国土が広がる。



この街が陥落した理由は、一言で言うとタイミングが悪かった……としか言いようがない。


ゾンビ大量発生前、近くの鉱山に魔物が湧いた。

その討伐にオーリファスの街からベテラン冒険者達が大勢派遣されていた。

その為駆け出しの冒険者や、怪我で休養中だった冒険者など冒険者ギルドに残された戦力が低下していた。


そしてもう一つはこの街の構造にある。

東西に抜ける大通りを中心に、街の入口は東西二か所に大きく作りそれ以外に外へ出る入り口はない。

そしてゾンビが数体発生した場所が東門であり、丁度交易の馬車が複数到着していた時であった。

交易者の中に疫病の者がいたと言われているが……今となっては詳細は不明。

大量の馬車が避難の邪魔となり、またそこをゾンビ化した人々が襲い掛かったのも大きい。

そして残る西門付近にもゾンビが発生し街は大きな鳥籠状態となった。


その後は、ゾンビを外に出すまいと東西の門が閉じられ……今に至る事となる。

ちなみに俺達が入ってすぐに門が閉じられたらしい。

あの助けた冒険者は無事逃げられただろうか?



「つまり、その門を開けなきゃいけないって事だな?」

「ああ、先ほどルルが持つ水晶板で確認したが、西側から隣街の討伐隊が出発していて、恐らく明日の昼ぐらいには到着するとのことだった」


ライオンが呼びに行った討伐隊がようやく来てくれるらしい。


「その討伐隊にこの街の冒険者達も加わっているそうよ」


最近不意に現れるシエラ。

何処で聞いていたのか……受付嬢は地獄耳だな。


「聞こえてるわよ?」

「なんも言ってねーだろ!?」


こえぇ! こいつ心の声まで聞こえんのかよ!!


「それならば……なんとかなりそうだな。 やはり明日の昼前に門を何とかして開けねば……」

「なぁシエラ? あの門って簡単に開けられるのか?」


俺も外に出た時見たが……かなり大きい門だったし、閂もかなりでかかったような……。


「そんなわけないじゃない。 そんなに簡単に開くならもうそれは門じゃなくてただのドアよ」

「だよなぁ……」

「ふむ? 入ってくる時に見たがあのデカい閂を外せばいいのだろう?」

「そうだけど……あれ大の男が五人ぐらいで開けられるのよ?」

「そんなにか!? 非常時に閉めるの大変だろ?」

「ああ……貴方仕組みまで見なかったのね」


門の閂は船の碇のような仕組みで、門を閉めた後、門に組み込まれた金属の巨大な棒を地面の穴に突き刺すような仕組みらしい。

楔を外せば簡単に閂が掛かる。

ただし閂を外す時は大人の男五人がかりで鎖を引いて棒を……つまりは閂を持ち上げる必要がある。


「それ強度に問題ねーか?」

「チッチッチ! それが、あの門って閉めると左右がお互い噛みあって真ん中の強度も凄いことになるのよ」


なんでこいつがドヤ顔なんだ?

まーそれはいいとして、


「どっちにしろ門を開けないと迅速に討伐隊が入れないって事か? 通用口からでいい気もするけど」

「通用口は塞いだじゃない。 私達が入ってきた時に、外に出ない様にって」

「え? そうだったか?」

「シエラが閂掛けたら折れて開かなくなったんスよ」


俺の後ろにいたリリが口を挟む。

どうやらシエラが閂を掛けた所を見ていたらしい……って、


「折れた?」

「あ~……あれは何て言うか、もう折れてた……そう! あれは最初から折れてたのよ!」


今思いつきましたと言わんばかりだな?

しかし元々ゾンビたちによって曲げられていたし……シエラの力で折るのは厳しいだろうし、まぁ本当に折れていたってことにしてやろう。

……今度仕返しのネタにしようかな?



俺とシエラがそんなやり取りをしていると、少し考えていたライオンが、


「ふむ、閂は多分俺一人でも問題ないはずだ」

「えぇ!」


驚くシエラとやっぱりそう来たかと思った俺。

もうコイツ筋肉絡みだったら何でも一人で出来るんじゃないか?


「ふむ? そんなことはないぞ?」

「そうか? ……ってなんでお前まで俺の考えが聞こえてるんだよ!?」

「ルルは顔にでやすいッスよ」

「うげ? そ、そうなのか?」


ライオン、リリ、シエラの三人はお互い顔を見合わせて、


「ふむ、そうだな」

「そうッスね」

「そうね」


「確かに分かりやすいかもしれませんね」


(は?)


いきなりな声に思わず振り返ると、そこにはセレス校長と子供達が集まっていた。


「うん、ルルってわかりやすい」

「だよねー! すぐ顔に出るって言うか」

「素直で可愛い! すぐ赤くなるし」

「そのくせ負けず嫌いで」


子供達が一斉に騒ぎ出す。


「ちょっと待てお前ら! なんか俺の性格診断みたいになってんぞ!?」


慌てた俺の声に子供達がどっと笑い声をあげる。



「むぅ~なんだってんだ? 一体」


どうしてみんな集まってるんだ? ……と考える俺に、


「心配なんですよ……みんな」


セレス校長が子供達の肩に手をポンを置き、子供達の方を見る。

子供達もセレス校長の方を見上げながらウンウンと大きく頷いた。


「みんなルルさんが大好きですからね。 また外に行くかもと思って心配してるんですよ」

「そうか……」

「もちろん私もそうですよ? 老い先短い私ではなく、前途有望なルルさんが危険な事に踏み入る事は正直心苦しいのです」

「セレス校長……」


セレスをはじめ、子供達全員が俺を見る。

その顔はどれも心配そうだ。


「だぁーーーー! どいつもこいつも辛気臭い顔しやがって!!」


俺は天井を向いて一声叫ぶと、


「確かにおめえらの心配している通り外に行くけど……だけど心配すんな!!  俺と遊んだお前達なら俺が強いってわかってるだろ?」


不安げにしながらも子供達が頷く。


「だから、もう少しの辛抱だ。 俺達が街の外に来た援軍を引き入れて……そしてお前達をまた太陽の下に出してやるから!! 必ずな!」



子供の一人……ミミと言う幼い女の子が前に出て来て、その小さい小指を突き出してきた。


「……約束。 ちゃんと戻って来るって」


俺はしゃがんでミミの目線に合わせると、その小さい小指に自分の小指を絡ませる。


「ああ、必ず戻るって約束するぜ! 俺がお前達を解放する。 助ける。 だから俺が戻るまで大人しくしているんだぞ!」

「……うん」


子供達が戸惑いながらもバラバラに頷き返す。



俺はミミの頭をポンポンしながら立ち上がると、ライオン達に視線を向け、


「ライオン、リリ。 わりぃが一緒に門を……」


「任せておけ」

「分かってるッス!」


二人も俺を見てしっかりと頷いてくれたのだった。


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