水晶拾い
【ルルからの注意 R-15G】
お疲れ様! なんやかんや言って結局毎日話してる気がするな。
あ、今日はちょっとだけ……ほんの少し残酷シーンあるから気を付けてくれ。
まぁオブラートに包んだとは思うけど……そーいや、オブラートって苦手なんだよな。
っと! 話がずれたぜ! じゃあ、注意して読んでくれよな!
「あば……あばば……」
隠れている俺の目の前をかつては主婦だったであろうゾンビがふらふらと通り過ぎていく。
血まみれのエプロン姿がかなりシュールだ。
ったく! 至る所に居やがって……全然進めやしねぇ
冒険者ギルドと学園との間にある建物。
家や店に隠れつつ俺は水晶を拾いに出ていた。
ちなみに一応俺の事を見守る様にライオンとリリも隠れている。
ただし一緒にいれば見つかるリスクが上がる訳で……基本的にはギルドの建物内から俺の様子を伺っている状況だ。
殲滅していくのも手だが……それだと何体のゾンビが来るかもわからない。
魔力を持つ者なら水晶を感知できるとのシエラの言葉で探索は俺が行う事になった。
ライオンもリリも魔力が無いらしいが……ライオンは以前炎を出していた気がするんだけどなぁ?
あれ魔法じゃねーのか?
別に水晶を取るぐらいなら、他の街からの援軍を待ちゾンビを一掃してからでもいいと思うかもしれないが、流石に火事場泥棒みたいな姿を見られるわけにはいかないしな……回収する機会も逃したくないし……。
主婦ゾンビが通り過ぎたのを見計らい、ちょこんと顔を出して様子を伺う。
(よし、いないな? いないよな?)
隠れている家から道に出ると、素早く音を立てない様に辺りを探していく……。
道には色々な物が散乱しており、中身のぶちまけられた鞄や洋服、中には箒や皿やコップなど割れたものまで散乱している。
そして中には……。
(うっ、こりゃひでぇ……な)
母子だったのであろう死体が横たわっている。
赤ん坊を守ろうとしたのかしっかりと胸に子を抱きしめた母親にはいくつもの噛み跡や引き裂かれた傷がついている。
しかしそんな母親の思いは届かず、赤ん坊の方も首を食い千切られ息絶えていた。
(すまない……助ける事ができなくて……)
短く祈りを捧げ、引き続き水晶を探し始めた。
道に散乱する荷物を探しながら曲がり角まで来る。
ここを曲がらずに真っ直ぐ行くと学園へ行くことができるらしい。
曲がり角から俺はそ〜っと顔を出した。
「っ!?」
目の前にいきなり死体が現れ声を上げそうになる。
(あああ……っぶね〜! 思いっきり叫ぶとこだった)
目の前の死体は塀に寄りかかる形で死んでおり、覗き込んだ俺の前に丁度いる形となっていた。
目と鼻と口から血を流して息絶えている。
(し、心臓に悪いぜ)
そしてそいつの後ろ側ではゾンビが三体ウロウロしている。
それぞれエプロン姿でどこかの店の店員だったようだ。
声なんて上げていたら一気に襲われていたな……まぁ三体ぐらいなら何とかなるけどな。
引き続き俺は見つからない様に……
(ん?)
何か引っかかりを覚えて俺は再度振り返る。
エプロン三人衆のゾンビから……何かを感じる。
(もしかして……これが水晶の?)
よくよく目を凝らすと、三人のうち一体の足にショルダーバッグの肩ひもが絡まっている。
そのバッグはシエラから聞かされた形そっくりだった。
(くそっ! あれかよ!?)
エプロンに豚の絵が入っている奴の足にまとわりついている。
外れてくれればいいが……どこをどうやったらあんなに絡まるんだよ!ってぐらい絡んでいる。
(こうなったら……三体だし倒しちまうか?)
問題は三体との間にそれなりに距離がある事。
(出来れば不意打ちしたいが接近するまでにバレちまうなぁ……)
そんな俺の目にある物が飛び込んできた。
(お? あれ使えんじゃねーか?)
ごそごそ
不意に聞こえた音にゾンビ三体が一斉に振り返る!
しかしそこには壁に寄りかかる死体と、散乱する鞄やごみ袋しか見えない。
「あがががが……」
しかしそれでもゾンビ達は近付いて行き……死体の男に襲い掛かった!!
噛みついたりしたものの……死後硬直により硬くなり血も流れていない死体は好みではなかったらしく、すぐに噛みつくのをやめてふらふらし始める。
そのゾンビの脳天に杖が振り下ろされた!!
ゴスッと鈍い音がして頭に杖がめり込み、次の瞬間には別なゾンビの顔面に杖が叩き込まれていた!!
そこでようやく残りの一体がルルに気付いた!!
(おせえよ!!)
殴った杖を素早く引き寄せ襲ってきたゾンビの両腕を薙ぎ払う!
俺を捕まえようと伸ばされた腕が払われて……体勢が崩れた所を狙い脳天に杖を叩きこむ!!
骨が砕け頭蓋骨に杖がめり込み、ゾンビはばたりと地面に倒れた。
俺はさっと周りを確認するが……他にゾンビはいない様だ。
(痛っう~……人間の頭って結構かてえよな)
三体を立て続けに屠った俺は痺れる手を振って感覚を取り戻す。
そして隠れていたゴミ袋から抜け出した。
使用前のゴミ袋のおかげでうまくいったぜ。
黒いゴミ袋だったからあいつらも気付かず死体の方に食らいついたし……まぁ死体の人には悪い事したけど、さっき祈ったからチャラにしてくれ。
(さてと……)
倒れている豚エプロンゾンビに近付くとその足に絡まるバッグを手にする。
くっ……ほんと……がんじがらめだな!
苦労して足から引き抜くとバッグの中身を確認する。
冒険者ギルド関係の書類等に混じって透明な板の様な物が出て来た。
水晶って言うから球体かと思ってたが……まさかの長方形とは……。
まるで透明なまな板みたいな感じだ。
(まぁゆっくり見るのは戻ってからだな)
俺はバッグを肩にかけて水晶を中に収めると冒険者ギルドに引き返し始める。
歩いて戻る俺の目に、冒険者ギルドの前まで出てきて心配そうしにしている二人が見えた。
まるで子供を心配する父親と母親の様だ。
……はじめてのおつかい
そんな言葉が俺の頭を掠め、「俺は子供じゃねーよ!」と一人ツッコミながらギルドへの帰途についたのだった。




