連絡の取り方
「よぉ! セレス先生」
「ああ! ルルさん!」
地下に入ってきた俺は子供達の面倒を見ているセレスに声を掛ける。
ギルド前のゾンビ達を一掃した俺達はギルドの地下へと戻って来ていた。
「ライオンさん! それにシエラも!」
俺の隣にいるライオンとシエラも目に入ったようで、皺の多い顔を笑顔にしている。
「セレス殿。 ただいま戻りましたぞ。 こちら食料等になります」
ライオンが背負った袋を降ろすと、
「ありがとうございます! 危険な中本当にすみません。 ティッタ先生、カラーナ先生、これをお願いします」
セレスに呼ばれて、学園の先生だろう二人がライオンが持ってきた袋を持っていく。
「セレス先生、よくぞご無事で!」
「あなたこそですよ、シエラ。 外に飛び出していった時はどうなる事かと……。 ルルさん、本当にありがとうございます」
「いや、俺の方こそ遅くなっちまって……心配してただろ? すまない」
「そんな! 無事なシエラを連れて来てくれただけでも……本当に二人は恩人です!」
そんなセレスの言葉が聞こえたのか、
「せんせー、ルル戻ったの?」
「ルル帰ってきた~?」
げ、あいつら集団で来やがった!
俺が身を隠す間もなく、
「あ、ルルだー!」
「みんなぁ~ルル戻ってきたよーー!」
避難所の子供達がわぁーとばかりに俺に駆け寄ってきた!!
「ちょ、ちょっと待て!! 全員ストップ!!」
俺は慌てて子供達を止める。
「どうしたの~?」
「何かあった?」
「ルル、それ血!? 怪我してるの!?」
俺を囲んだ子供達が心配そうに見上げてくる。
俺の服は返り血でぐっしょりとなっている。
「いや、大丈夫だ。 だけどこのままじゃお前達が汚れちまうからせめて着替えさせてくれ」
このまま子供達が俺にダイブして来たらみんな血だらけになっちまうしな。
「ほらほら、ルルさんはお戻りになられたばかり、少し休ませてあげなさい。 ね?」
セレスの言葉に子供達が「は~い」と素直に戻って行く。
俺の着替えなどもあるからだろう。
「セレス先生ありがとな。 助かったぜ」
「いえいえ、こちらこそ子供達が……」
と、セレスはキョロキョロしているリリに気付いたようで、
「そう言えばそちらの方は?」
「あ、私ッスか? 私は王国騎士団所属のリリって言うッスよ」
リリの言葉が聞こえたのか、周りにいる人々が騒めいた。
(王国騎士団……)
(王国騎士団が来てくれたのか?)
(私達助かるのよね……)
チッ……しまったな、リリには身分を伏せさせておくんだった。
王国騎士団が助けに来たと思われているようだ。
俺は急いでセレスに事情を説明して、外に出る人が出ない様注意を促す。
救助が来たと勘違いして避難所から出る者がいないとも限らないからだ。
セレスは直ぐにそれを伝える為に離れて行った。
「いや~もう駄目だ! ギブだギブ!」
俺はそう言って力なく床に寝転んだ。
今の今まで子供達の相手をしていたんだが……相変わらず体力無尽蔵だ、あいつら。
もう体力が持たないぜ!
「お、お疲れさまッス!」
恐る恐る近寄ってくるリリ。
「あ~てめぇ! よくも俺一人残して逃げやがったな!」
「わ、私には無理ッスよ! 子供達の相手なんて」
「お前の方が体力あるだろーが! お前が逃げたから全員俺んとこきたんだぞ!」
「うぅ~すまないッス~」
頭を抱える様にするリリ。
近くにいたライオンが、
「子供達は? もう遊びは終わったのか?」
「ああ、一旦はな。 今から昼飯やら昼寝だそうだ」
俺は冷たい床に身を預ける。
折角着替えたシャツだが既に汗ばんでいた。
子供達の相手で熱く火照った体が冷やされて気持ちいい。
「あとは隣町からの援軍を待ってゾンビ達を一掃すれば解決だな」
「そうだな」
「その後はどうするッスか?」
「そうだな……次の呪いが発生している場所に向かうかな」
「どこで起こっているか分かるッスか?」
「いや、それは旅しながら訊きこんでいる」
「……そうッスか」
どうしたんだろうか? リリの反応が気になる。
「えと、リリ?」
「……でも、それだとやっぱり王都が心配ッスよ」
急にリリが声を上げた。
そうか……確かにリリの気持ちもわかるな。
特にゾンビ化した街を見たばかりだ。
王都には仲間がいるだろうし……王都で疫病が発生したらと考えると気が気じゃないのかもしれない。
「何かこう……疫病の広がりが分かる方法があればな……」
「あら? それじゃあ王都に聞いてみればいいじゃない?」
俺の呟きに急に返答が聞こえ顔を上げる。
そこにはシエラが立っていた。
先程セレスの手伝いとかであっちに行ったはずだが、戻って来ていたのか。
それはともかく……
俺は身を起こし床の上に胡座をかくと、
「シエラ、それってどういう意味だ?」
「え? 意味も何もその通りよ。 王都に聞いてみればいいんじゃない?」
「んん? だからどうやって?」
「通信用の水晶よ。 各冒険者ギルドには通信用の水晶があって、それを通じて他のギルドとやり取りしたりするの」
「そんなのがあるのか……」
初めて聞いたが凄く便利そうだ。
それがあれば情報伝達は楽だろう。
「ん? じゃあこの街もそれを使って他の街に助けを求めれば良かったんじゃないか?」
「……それが」
シエラが少し言い淀む、
何でもこのギルドの水晶を持っていた同僚がゾンビに襲われて……という事らしい。
また、水晶を使うには魔力が必要でシエラなど魔力が無い人には使うことが出来ないとの事。
「水晶自体は学園までの道中にあると思うわ。 同僚が逃げる時そのバッグを落としてたし」
「その職員とやらがか?」
「そう。 暫くこの街のギルドは使用不可だし水晶が見つかったのならあげるわよ」
「は? 話聞くとかなり便利な代物だろ? 値段もすごいんじゃねーのか?」
「見つかるか分かんないし……それにどちらにしろギルドの再建には時間も掛かるわ。 それに街の恩人だもの。 水晶の一つぐらい経費で何とか頼むわよ」
「そうか、それなら助かる」
「ふふ、気が早いわね~。 お礼は見つかったら言いなさいな」
シエラは手をヒラヒラさせていってしまった。
……と、思ったら顔を赤くして戻ってきた。
「貴方達をお昼ご飯に呼びに来たの忘れてたわ」




