見る者の目線
(ん? なんか……眩しい……?)
俺は閉じられた瞼を開ける。
横になった俺の目に、登ってきた太陽の光が飛び込んできた。
(朝……か)
身体を起こすと節々が痛い。
布団も寝袋もなく硬い地面で寝ればこうなるか……。
辺りを見回すと、消えて白煙が上がる焚き火。
ヨダレを垂らしながら寝ているリリ。
眠りながら泣いたのであろう、涙の流れた跡が見えるシエラ。
そして街からは相変わらず騒がしい音や声が聞こえてくる。
「まったく! リリの奴寝てんじゃねーかよ!」
小声でブツブツ言いつつ二人の身体を揺り動かした。
「おい! リリ起きろ! 朝だぞ!」
「え? 朝!? 朝ご飯ッスか!?」
ガバッと起きるなりキョロキョロと辺りを見回す。
「誰が朝ご飯つったよ! って言うかお前寝てんじゃねーか!」
「!? ああ! しまったッス! 寝ちゃってたッス!?」
慌て出すが今頃慌ててもなぁ……
「シエラ、朝だぞ。 ほら起きろ!」
「ん〜メロ君ぅ〜ん!」
寝言の様な感じで言われ、ギュッと抱き締められる!
「おい馬鹿! 寝惚けんな! さっさと起きやがれ!!」
「普通グーで殴る? グーで」
シエラが俺を睨みつける。
「うっせーな。 寝ぼけてるお前が悪い! 俺なんてお前にキスされそうになったんだぞ!」
「むぅ、そーだったとしても! やりようってものが……」
「そんな暇あるか! いきなり迫ってきやがって!」
不服ながら納得したようでシエラが拗ね顔でそっぽを向く。
「まぁまぁ、きっとあれッスね! お腹が空いているから怒りやすいんですよ!」
俺とシエラの間を取り持つようにリリが二人の間に入る。
確かにリリの言う事も一理あるかもしれない。
俺も昨日からあまり食べていないしな。
「私何か採って来るッスか?」
「あ〜お願い出来るか? っても調理器具なんて無いからな、焼いて食べれるような簡単なもので良い」
ウサギとか捕まえられても捌きようがない。
「分かったッス! 行ってくるッスよ!」
言うなり駆け出した!
お〜やっぱりアイツ足速いな。
一瞬であんなトコまで行ってるし……。
「ねぇ? ルル」
お? コイツが俺の名前を呼ぶのって初めてじゃねーか?
「なんだ?」
「これからどうするの?」
「う〜ん……本当はお前をセレスの元に連れて行く事になっていたんだよな」
「セレス……校長?」
「そうだ。 お前の先生だったんだろ?」
「うん……そっか、先生無事だったんだ……」
呟くように言って少しだけ笑みを浮かべた。
無事な知り合いがいた事で少し安堵したようだ。
……と、リリの姿が見える。
何やら……遠くから叫びながらこちらに向かって走って来ているようだ!
「た、大変ッス〜〜!!」
リリは「大変」と繰り返しつつ俺達の元まで一気に走って来た。
俺達の所に着くなり、
「た、大変ッスよ!」
コイツ息全然切れてないな……バケモン並の体力だわ。
「どうしたの?」
俺が尋ねる前にシエラの方が尋ねる。
「も、森の奥から……」
「森の奥から?」
「へ、変態が来るッス!!」
「……は?」
リリの言葉にシエラが呆ける。
俺は変態と言う事に一人の姿が思い浮かぶが……流石に早すぎだろう。
「あ、あっちから物凄い勢いで……」
リリが指差した森の方。
その中から何かが飛び出し、土埃を上げこちらに向かって物凄い勢いで走って来た!!
その速度はリリより早い!
「き、来たッスよ〜!!」
「ぐあ……な、何あれ? 変態?」
早すぎと思ったけど……アイツを常識に当て嵌めた俺が間違いだったわ。
日に焼けて浅黒いがっしりした身体。
太陽光を反射して眩しく光る歯。
マントにブーメランパンツ、背中には大きな大剣。
それがサンタクロースの様な大きな袋を担いで全速力でこちらに向かって来る。
まぁ……こうやって改めて見ると変態だわな。
「……二人共すまない。 あれ俺の知り合いなんだわ」
「……なかなか変わった人と知り合いなのね」
「まじッスか!? まさかルルも変態……」
「なんでだよ!? 俺は普通だ」
「え〜……」
シエラが引いたような目で俺を見やがる。
「いや、どう見ても俺は普通だろ?」
「ふむ、普通と言うラインがよくわからんが、ルルは普通ではないと思うぞ」
げ、ライオンの奴もう来てやがる!
いつの間にか傍で立っていやがるし!
「ふむ……それよりどうしてルルは外にいるのだ? 中でないと魔族に見つかるだろう」
「いや〜それが……」
俺は頭を掻きつつ街の方……その壁沿いに倒れている魔族に目を向ける。
「あれは……魔族か!? ルル、大丈夫なのか?」
「あ、ああ。 コイツに助けられた」
俺はライオンから隠れるようにシエラの背に隠れるリリを指差した。
「ほら、リリ。 大丈夫だ、こいつはこんな身なりだが言動は変態じゃない……と思う」
「思うってなんスか! 大体その格好自体が変態なんス!」
「ふむ? この格好のどこが変態なのかね?」
「上半身裸でパンツ一丁って所ッス! 普通そんな格好で旅しないッスよ!」
「まぁ……普通そうだよな」
俺はリリの言葉に深く頷く。
ライオンは真面目な顔つきをリリに向けると、
「この格好にはちゃんとした理由があるのだ」
「そんな恰好に理由があるッスか?」
「ああ、その格好をしている理由はな……」
「理由は?」
リリが息を呑み、シエラもその理由に耳を傾けている。
俺はと言うと……まぁ、オチが見えてるからなぁ。
「この美しい体を見てもらいたいからだ!」
そう言ってニッと笑顔を見せ、白い歯を見せつける。
「……」
リリとシエラはそれを聞いて二人共顔を見合わせると、大きな声で叫んだ。
「「やっぱり変態だー(ッス)!!」」
俺はそれを見て「やっぱり」と思うと同時に、ライオンが変態だと言う事を改めて認識したのだった。




