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夢と現実


「ほいっと!」

王国騎士団の少女が軽い掛け声とともに壁にめり込んだ魔族を引き出す。


ボゴッと言う音と共に引き抜かれた魔族は、そのまま力無くその場に崩れ落ちる。


「ん〜やっぱり死んでるッスね」

「あ、ああ。 まぁ壁にめり込むなんてなりゃあな」


俺も流石に死んでると思ったよ。

それよりなんだかんだで騎士団のやつに助けられたのは二回目になっちまったな。


「それより、助けてくれてありがとな。 流石に死を覚悟していたぜ」

「魔族に狙われてるって知ってるんスよね? なのに勝手にいなくなるからッスよ?」


少女は少しプンプンした様子で俺に口を尖らせる。


「それは……まぁ、何というか。 俺は王都に戻る訳には行かないからだよ」

「そーなんスか? まぁ、それはお任せするッスけど……」

「……いいのか? お前俺を連れ戻しに来たんじゃないのか?」

「ん? 私はそんな事言われてないッスよ? ただ貴女が狙われているから付いて行って守る様言われただけッス」

「……まぁ無理矢理連れ戻すとかじゃ無ければ……別にな」


連れ戻さないなら付いてきても害はなさそうだ。

そんな事を考えている俺に対し、


「それより!」


いきなり少女が声を大きくして、


「『お前』じゃないッス! 私はリリって言うッスよ!」

「リリな? 分かった。 俺はルルだ」

「ルルさんッスね? よろしくッス」 

「いや、ルルでいい。 さん付けは変な気持ちになる」

「そーッスか? んじゃ、ルルで!」


自己紹介をした瞬間、にぱっと笑顔を見せる。


こいつ何だか犬っぽいな。

延々とボール遊びをしそうなタイプに見える。



「ちょっと? お話は終わったかしら?」

腕を組んで目を吊り上げ気味のシエラ。


「あ、ああ。 どうした?」

「『どうした?』じゃないわよ!! 終わったんならさっさとメロ君のところに案内しなさいよ! 今のあなたの価値はそれだけなんだから!!」

「お前なぁ……」


コイツは人の話を聞いていなかったのか?


「メロ君とやらの話は嘘だって言ったろ!?」

「それはあんたがあたしを逃がそうとして言っただけでしょ!?」

「違うって! だから俺はほんとにメロ君ってやつとはかんけーないんだって!」

「じゃあ、なんでメロ君の事あんなに詳細に知っていたのよ!!」

「それは……」


……ここできちんと言うべきだろうか? メロ君は死んだ事を。

また正気を失ったりしないだろうか?

ゾンビだらけの街に「確認してくる!」とか言って突撃されればどうしようもない。

でも果たして今の彼女は正常なのか?


俺が黙ったのを反論できなかったと思ったのか、してやったり顔で、


「ほら見なさい! 分かったらさっさと案内して! 貴方とメロ君と三人できっちりお話しなければ……」

「……」


仕方ない……こうなったら本当のことを言って、街に戻ろうとした場合は力ずくで止めるしかないか。

俺はリリに小声で、


「リリ……悪いがちょっと力を借りるかもしれない」

「? よくわかんないけどお任せッスよ」


リリが任せてとばかりに胸を叩く。

それを見て俺はシエラに向き直った。


「シエラ。 メロ君について本当の事を話すぞ?」

「何よ! 本当の事って!」

「お前の言うメロ君は……悪いがもう死んでいる」

「……っ!」

「冒険者ギルドのすぐ側だ」

「……」

「お前も……実は気が付いて……」

「……さい」


俺の話を聞いて徐々に俯いていったシエラだったが、突然顔を上げると、


「許さない! 私のメロ君を……あろうことか『死んだ』なんて!!」


そう言って突然俺に殴りかかってきた!!


「お、おい! やめろ!」


シエラの拳を躱して距離を取る!

そんな俺を追う様に殴りつけてくるシエラ。

殴り方は素人だが凄まじい気迫と勢いだ。

腕をめちゃめちゃにぶん回して俺に殴りかかる。


「待つッス! やめるッスよ!」


そんなシエラを後ろから羽交い絞めにするリリ。


「許さない! 許さない! 許さない!!」


そんなリリから抜け出そうとするシエラ。

必死にもがくがリリの拘束は解けそうにない。


「許さない! 許さない!! 絶対に許さない!!!」

「お、落ち着くッスよ!」


闇雲に暴れるシエラにリリが拘束したままオロオロと声を掛ける。

そんなリリに、


「リリ。 良いんだ。 手を……放してやってくれ」

「ええ! いいんスか? でもルルが……」

「大丈夫だ」


心配そうなリリに俺は頷いて見せる。


「わ、わかったッス……」


恐る恐る力を抜くリリの腕を振り払い、シエラが俺に掴みかかる!!


「ルル!」


リリが叫ぶも俺は『大丈夫』と言う風に手で押しとどめて見せる。


シエラは俺の胸倉を両手で握り締め、


「許さない!! よくも! よくもっ!!」


苦しそうに言葉を繰り返す。


そのうち俺の胸倉を掴んでいた手から力が抜け、立っていられなくなったのか膝立ちの様な状態となり、俺の胸に顔をうずめて拳で叩き始めた。


しかしその拳は先程のとは違いとても弱々しい。


そして、シエラの顔を大粒の涙が滝のように流れておちていく……。


「よく……も。 あれは夢だったって……悪い夢だって思いたかったのにっ!」

「……悪い」

「ゆる……さない! 私の……思い……出させるんなんて……」

「……すまない」

「謝るな!! 私に憎まれろ!! じゃないと私……は」

「…………」

「私は……ひぐっ」


叩く手が止まる。

俺は胸に顔をうずめたままのシエラをそっと抱きしめる。

シエラはビクッと肩を震わせ……、


「うぅ……メロ君。 メロ君!! うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


大声で泣き始めた。


「私を一人にしないでよぉ!! 戻って来るって言ったのに!!! メロ君っ!」

「…………」


今は掛ける言葉が無い……俺はそのままシエラを抱きしめ続け、天を仰ぐ。


(チッ……早く呪いを消してやんねーと。 こんな涙はもう沢山だ!)



泣き続けるシエラ。

抱きしめ続ける俺。

居たたまれなくなったのか、 少し離れた所で背を向けるリリ。


気が付けば夕闇が迫りつつあり、少し早めに登った月が俺達を見下ろしていたのだった。


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