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臆病者


痛みで体が動かせない。

シエラだけでも何とかしてやりてぇが……後ろから抱きかかえられどうしようもない。


(師匠……俺は……)


俺の脳裏に師匠の姿が浮かび上がる。

俺を庇い、そして逃してくれた師匠。


俺は師匠程魔法を使えない。

回復や治療、そして強化や支援系ばかり習っていた。


師匠が使っていた『シールド』の魔法はまだ習っていない。


使えるのはそれより劣る『ガード』が精々だ。

そして『ガード』は武具を強化する魔法。


……ん? 武具?


俺の手の中には杖がある。

二匹の蛇が絡み合う様な可愛さの欠片もない杖。

魔力を増強してくれるって話だが、どちらかと言うと鈍器となりつつある。

しかしこれも一応武器。 武具……だよな?



俺が目を向けた向こう……魔族が腕をこちらに向けた。


(もがくだけ……もがいてみるぜ!!)


あれ程痛かった痛みだが、すでに麻痺して感覚が薄れたのか気にならない。

師匠の事を考えた辺りからかもしれない。


「『ガード』」

俺の魔法で杖が淡く青い光に包まれた!


と同時に光線が放たれた!!


魔族の狙いはやはり俺。

光線が真っ直ぐ飛んできて……俺はそれを杖で受け止めた!!


(頼む! 壊れるなよ? 持ってくれ!!)


光線を杖の先端……蛇の彫刻部で受け止める!!

勢いも凄く手から飛ばされそうだ! 必死に押さえる!!


そして……光線が細い線になり消えて行く。


「……あ、なた。 え? 無事なの!?」

光線の眩しさから目を覆っていたシエラが、俺を見るなり驚きの声を上げた。


「……みてーだ、な」


俺の手の中にある杖はひびも傷も入っていない。

『ガード』の魔法も掛かったままのようだ。


(何はともあれ今がチャンス!!)


俺は続けて回復魔法を詠唱する。

腰と足……数回は唱える必要があるはずだが……。


「ん? んん??」


何とそれぞれ一回ずつで完治した!!


急いで立ち上がった瞬間光線が飛来したが、俺はそれを素早く躱す!


足も……腰も全然大丈夫だ! 

俺は手の中の杖を見る。


『ガード』が掛かった状態だな? ……え~と? もしかして強化って魔力も?

だからいつもより回復量が増えた?


嬉しい誤算だが、兎に角今は魔族を何とかしなければ。



「よくもやってくれたな! 今度こそ起きれない様ぶん殴ってやる!」

「……あんた本当に僧侶なの?」


俺の言葉に呆れたような言葉を投げるシエラ。


「僧侶も切れりゃこうなるぜ!」


俺は魔族に向かって走り出した!!

魔族が光線を放つ!


俺はそれを杖で受け止める!!

ひびも傷もつかない杖……光線を再度受けきった!!


そして避けなかった分、最短距離で魔族まで駆け寄れる。

そして魔族は連続で光線を撃てない!


「よっしゃ! これでお前は隙だらけだ!!」


隙だらけの魔族の頭、それを杖で横から薙ぐようにぶん殴る!!

先程は頭だけがグルンと回ったが……今度は体全体が回転する様に回って倒れこんだ!!


(攻撃力みたいなのも上がってるのか! ますますナイスだぜ!)


立ち上がろうとする魔族を蹴飛ばして再度地面に転がすとその頭に向かって杖を振り上げた!


「トドメだ!!」


そしてその顔面に振り下ろそうとした……が、




(……え? な、なんで!?)


俺の体が固まったように動かなくなる

今この威力の杖をこいつの顔面に叩きこめば間違いなく倒せ……いや、頭を潰せ殺せるだろう。


そして気付く……俺は……震えている?

怖いのか?

魔族が? ……いや違う。


そうか……俺は……



止めを刺さなかった俺の腹に魔族が蹴りを食らわせた!!

俺はそのまま数メートル後方に吹っ飛び地面をゴロゴロと転がる!


「あ、あなた何してんのよ!! さっさとトドメささないから!!」

シエラから叱咤の様な、呆れた様な声が飛んでくる。



しかし俺は動けなかった。

そうだ……俺はトドメをささなかった。

いや、させなかった。


師匠の仇だ何だと言ってた癖に!!

俺自身が殺されかけた癖に!!


それなのに俺は……相手を殺すことを恐れてしまった。

ゾンビと違い生きているもの……その命を奪う事に躊躇して、その結果身体が動かなかった。


俺は……とんだ臆病者だ!



ガシッ!!


「がっ!」


魔族が俺の髪を鷲掴みにして持ち上げた!

2mほどもある魔族……背の低い俺は持ち上げられて足が地面から離れ宙吊りとなる。


ブチブチと髪が数本抜け、俺の口から苦しげな声が漏れた。


そして魔族が俺を掴んだまま空いた方の腕を俺の腹に当てる。

昆虫の様な口がせわしなく動く……。


「ぐっ! 笑ってやんのかよ……この虫ヤローが」


この至近距離で光線を撃つつもりだ。

恐らく俺が怖がるのを直で見て楽しむつもりだろう。

かなり悪趣味な考えをお持ちの様だ。


杖は先程の蹴りで遠くに落ちている上、自分の臆病に情けなさを感じ俺は戦意を失っていた。


(まぁ……さっきと違ってシエラを巻き込まないだけマシか)


シエラが何か叫んでいるが俺の耳には届かない。

怖がる顔をしてこいつを喜ばせるぐらいなら……そう思って目を閉じようとした。



その時、目の端に何かを捉えた!


と思った瞬間!! 魔族がガクンと崩れる様にして片膝をつく。

それによって持ち上げられていた俺の足も地面に着いた。



そして膝をついた魔族の背後には、


「やっ~~~~と見つけたッスよ! 何勝手にいなくなって死にかけてるんスか!」

王国騎士団のコートを羽織ったツインテールの少女が魔族の膝に足を掛けた状態で立っていた。


「全く! あんたに何かあれば私が怒られるんスよ?」


そう言って俺の髪を掴んでいる腕、その関節部に向かって手刀を叩きこんだ!!


グギッと言う音がして俺の髪を放す魔族。

その腕がだらりと下がる。


(こいつ! 魔族の腕を折っただと!?)


強化された杖で殴ってもこいつの体が折れるなんてなかったのに、手刀一発。

しかも「ほいっ」て感じに折りやがった!!


そして少女はクルンと軽やかに一回転して、


「えいやっ!」


掛け声とともに魔族の首に回し蹴りを叩きこんだ!!

その一瞬で魔族の姿が消える!!


ドゴーン!!


次の瞬間、盛大な音を立てて魔族の頭が街の外壁にめり込んだ!!

そして頭がめり込んだ状態で、ダラリと体全体がぶら下がる。


あれは流石に……無理だろ。 死んだなアレは。



ガシッ!! といきなり俺の両肩に手が置かれ掴まれる。


「さぁ、捕まえたッスよ! もう逃さないッスからね!」


少女の赤い瞳が俺を見据え、そう告げられたのだった。


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