魔族との戦い
こ、これは流石に絶体絶命って奴だ。
前門の虎後門の狼でも良い。
引っ張る力は緩められない、かと言って魔族も俺を見逃してはくれないだろう。
(どうする? どうしたら……?)
焦るだけに尚の事いい考えが浮かばない。
そして……魔族が俺に向かって腕を向ける。
(くそっ! 仕方ねぇ!)
俺は扉を諦め飛ぶ様に地面に伏せた!
その直後光線が俺のすぐ横を掠める!!
ギリギリだった為、長い髪の尖端が光線によって消し飛ばされた!
(早く扉から離れないと!)
急いで起き上がり扉から離れる……が扉が開く様子はない。
よくよく見ると先程の光線により扉のど真ん中に丸い穴が空いている。
そしてその穴からは夥しい量の血が溢れていた。
も、もしかして扉を引っ張ってたゾンビごと貫いたのか!?
あの威力なら数人まとめてやられたのかもしれない。
実際あれだけ引っ張られていた扉だが、今は俺が引っ張ってなくても開くことはなかった。
ドガッ!!
いきなりシエラから横っ腹に蹴りを叩き込まれて地面に倒れ込んだ!
「った! おい、何をしや……」
振り返る俺の目の前を光線が通り過ぎる!
あぶねー! 扉が気になり魔族への注意がそれていたぜ。
蹴りは食らったがシエラには助けられたな。
シエラにお礼を言おうと……、
「メロ君の場所教える前に死なないでよ! 教えてから死ね!」
(くっ! 助けられたのに素直にありがとうって言いたくねぇ!!)
……ひとまずシエラは後だ!
直ぐに起き上がり……魔族が次の光線を放つ!
起き上がるなり俺は再度地面を転がった。
僧侶服の裾を掠めて行く光線。
師匠みたいに『シールド』の魔法が使えればやりようはあるのに!
光線を躱すと再度起き上がり……俺は魔族に注意を向けつつ横に走る。
(光線が直線なら横に走れば当てにくいだろ!)
そして俺の予想通り、光線は俺から外れて違う場所に放たれる!!
(今だ! 次のを撃たれる前に!)
俺は魔族に向かって走り寄ると、
「食らいやがれ!!」
フルスイングよろしく、手にした杖でカマキリの様な頭に……と、躱された!!
「甘い!」
杖を空振った勢いそのままに一回転して蹴りを叩きこむ!!
これは不意打ちだったらしく魔族の細い胴体に見事に決まった!
(伊達に村で大将張ってねぇぞ!! これでも喧嘩はそれなりだぜ!)
魔族が地面に倒れこんだ所すかさず杖を振りかぶる!!
しかし魔族の倒れ方が不自然だった。
地面に倒れるにも拘らず手をつかないでこちらに向かって突き出す!!
(チッ! やべぇ!)
振り下ろしをキャンセルして後退した瞬間、倒れた魔族から光線が放たれた!!
俺の顔すぐ横を通り抜ける!!
しかし……
「外したな? 覚悟しやがれ!!」
再度魔族に近寄ると、その頭に向かって杖を振り下ろした!!
ボガッともガゴンとも言えない音がして逆三角形の頭がグリンと回る。
そしてすぐに腰を入れて杖を引くと、
「ぶっ飛びやがれ!!」
倒れている魔族の顎に向かって、すくい上げる様に杖で打ち上げた!
頭がゴキッとのけ反りそのままゆっくりと後ろ向きに倒れていく。
そして仰向けの状態で倒れて動かなくなった。
「はぁ、はぁ、はぁ、ど、どーだ! 目にもの見せてやったぜ!」
今頃になって汗が噴き出し体が少し震える。
耳を熱く感じ、手を当てると血がべっとりついて来た。
触ると耳が半分なくなっており、実感したとたん痛みが沸き上がる。
どうやらさっきの光線はかなりぎりぎりだったようだ、もう少しずれていたら顔がなくなっていたかもしれない。
俺は荒い息を整えつつ回復魔法で耳を治す。
僧侶服の肩口が血に染まっているが……これはどうしようもないだろう。
「魔族を倒したの? へぇ、貴方やるじゃない」
いつの間にかそばに来ていたのかシエラが魔族を見下ろしている。
そして俺の前にスタスタ歩いてくるとジロジロ見始めた……品定めされているかのようだ。
良く考えるとコイツは俺の事をまともには見ていなかったしな。
「ふぅ~ん。 一応顔はまぁまぁね。 メロ君を誘惑したにしてはそれなりじゃない」
(あ~……そう言えば、そうなってたわ。 俺が誘惑した側だったな)
「……チビの癖にその胸は生意気ね」
チビと言う言葉にはカチンときた。
「あ? チビっていうんじゃねーよ!! おばさんの癖に!」
「は? 誰がおばさんよ!! 私まだ24ですけど!?」
「俺からしたら十分おばさんだろうが! このペチャパイ」
「なんですって! チビで野蛮な泥棒猫なガキに言われたくはないわよ! 大体僧侶の癖に人様の彼氏を奪うなんて欲求不満もいいところじゃない?」
「うるせぇ! それには事情があんだよ! 大体俺はまだそー言う事……」
シエラの後ろで魔族がむくりと立ち上がった!
「くそっ!」
「誰がクソよ!」
俺はギャースカ喚くシエラを引っ張り抱きしめ……魔族がその細い足で蹴りを放つ!!
腰の骨がミシミシッと軋む音がして……気が付くと魔族から十メートル程離れた所に転がっていた。
ズキィ!!!
腰の辺りを激痛が走る!!
「ぐあぁぁぁ!」
激痛で思わず叫び声を上げてしまう。
余りの痛さに一瞬目の前が暗くなった。
「あ、あなた!」
俺と一緒に吹っ飛ばされたシエラが起き上がり俺を見つめる。
「貴方私を庇って……」
「っるせぇ……たまたまだ……たまたま」
激痛で呻きながら声を出す。
何とか回復魔法を唱えようと……「危ない!!」
叫んだシエラが俺を引っ張り、すぐ横を光線が走り抜けた!!
「ぐぅぅぅ!!」
シエラに引っ張られたことで激痛が体中を駆け巡る!
回復魔法も中断された。
そして……今の光線は躱しきれていなかった。
引っ張られたことで直撃は免れたが右足首から下がなくなり、なくなった脚の先からは血がブシュッと溢れ出た。
「ぐっ! はぁ! ……シ、シエラ」
「あ、足が! 貴方……」
「シエラ……あいつの目的は俺だ! 今のうちどこかへ逃げろ」
「だけど……」
「ごちゃごちゃ言うな! それにメロ君とやらの話は嘘だ。 だから気にせず俺を見捨てろ!!」
魔族は首をゴキゴキ回している。
先程の打撃でどこかおかしくしたのかもしれないが……光線を撃てる以上状況は最悪だ。
(くっ! 俺が……足をなくしているから余裕を見せてやがる!)
即光線を撃ってこないのは俺が逃げられないと知っているからだろう。
ガッ!!
いきなり俺の両脇の下に腕が入れられズリズリ後ろに引きずられ始めた!!
「お、おい! 馬鹿やめろ! 何やってやがる!」
「うるさいチビ! 黙って! くぅ~チビの癖に重ぃ~~」
シエラが俺を引きずって後退し始めた。
だけどそんなことをすれば……!!
魔族は俺が連れ去られると思ったのか、首を回すのをやめて腕を向けようとし始めた。
『逃がさない』とでもいう様に……。




