束の間の一時
「あいたたた、ちょ、ちょっと待てお前等、やりすぎだ!」
思わず俺は悲鳴を上げる。
そんな俺につぶらな瞳を向ける子供達。
「えー。だってルル姉ちゃんかかってこいって言ったじゃん!」
「そうだよ、何処からでも来いって」
「うんうん、俺は負けねーとか」
「そりゃ言ったけど……ああ、もう! くそっ、だったら全員でかかってこいや!」
ヤケになった俺の言葉に子供達が一斉に飛び掛かってきた!
髪を引っ張り、腕にぶら下がり、腰に抱きつきやりたい放題だ。
ってゆーか誰だ? 今どさくさ紛れに胸揉みやがったの!
「コラコラ皆さん、ルルさんはか弱い女性なんですからね? あまり乱暴な事はしてはいけませんよ」
少し困った顔のセレスが注意するが、
「セレス先生、大丈夫だよ。 ルル姉ちゃんすごい力強いよ!」
「うん、俺の兄ちゃんよりつえー」
「そーだろそーだろ? 俺はこう見えてってイタタタ! だから髪にぶら下がんな! そして誰だ? また胸揉んだやつ!」
子供達相手に大わらわの俺を見ながら、困った顔をしつつもセレスは嬉しそうだ。
病気の人達がいたり、ずっとここに籠もっていたりで子供達が元気がない。
その言葉を聞いて「じゃあ俺が遊んでやるよ!」と請け負ったが最後、延々と子供達との戦いが繰り広げられている。
って言うか、コイツら元気あり過ぎんだろ!
「ルルさんのおかげで子供達の笑顔を久しぶりに見た気がします」
「いや、俺は別にそんな大層な事は……」
「いえ、子供達にとって、病気を治し地上からコチラにいらしたルルさんはヒーローなんですよ」
「えぇ〜、俺はヒーローなんて柄じゃないぜ」
俺の言葉に子供達が反応する。
「そんなこと無いよ! ルル姉ちゃんカッコいい!」
「それに強いし」
「だよね〜? 私達とも遊んでくれて優しいし」
「お父さんの病気治してくれた!」
口々に言い出して、俺は視線を上に向け頬を掻く。
く〜だからんな事言われるの慣れてねーんだって!
「ルル姉ちゃん照れてる!」
「ホントだ顔真っ赤だ!」
「ルル姉ちゃん可愛い〜」
ぐはっ! なんで子供って思った事を直ぐに口にするかな!?
「お前等〜調子に乗りやがって! 待てこのやろ〜!」
子供達がキャーキャー言いながら散らばっていく!
ま、全く。 子供の体力無尽蔵すぎんだろ!
子供達がようやく遊び疲れ、俺はやっと開放される。
「ルルさん、お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「すみません、大変なのに子供達の面倒まで」
子供達の親から散々感謝の言葉を聞かされ、俺はようやく一息ついていた。
「ルルさん、ありがとうございました」
そこへセレスが話しかけてきた。
手には水の入ったグラスがあり俺に差し出してくる。
「ルルさんもお疲れでしょう。 ゆっくり休んで下さい」
「ありがとう。 すまねぇ」
「いえいえ、お礼を言うのはこちらの方です」
水を一息で飲み干し、
「ぷはぁ! 生き返るぜ」
「ふふっ、どういたしまして」
セレスが暖かみのある笑顔を見せてグラスを受け取る。
「そう言えばシエラだっけ? 目覚ましたか?」
「それなんですが……先程からうなされておりまして」
セレスの話では苦しそうにうなされているが、起こしてよいか迷っているとの事らしい。
「あぁ、じゃあ俺がちっとばかし見てみるぜ」
「すみません。 そうして頂けると……」
色々負荷をかけてると思っているのかセレスは申し訳無さそうだ。
「気にすんなよ先生。 大丈夫、さっきも少しは正気に戻ったんだ」
俺の言葉に、
「先生ですか……ルルさん程の方ににそう言われると少し照れますね」
「止してくれよ。 ルルさん程って言われる方が照れちまう」
お互いにそう言って少し笑い合う。
「じゃあ、俺はちっとばかし様子を……」
そう言った時だった。
「ま、待ちなさい! 外は駄目よ!」
慌てた様な女性の声と、バタンと大きな音を立てて閉まる扉。
俺達がそちらに目を向けると、辺りを見回していた女性がセレスを見つけ駆け寄ってきた!
「セ、セレス校長!」
「どうしたのです!? 今のは一体……」
「実は先程頼まれて看ていた女性なのですが、目を離した隙に外へ……」
「なんですって!? シエラが!」
「何だって!?」
俺とセレスはほぼ同時に声を上げる。
「気付いて止めようとしたのですが、錯乱しており物凄い力で……」
女性は身を縮こませて謝る。
「いえ、貴方のせいではありません。 気になさらない様に……」
気落ちする女性に慰めの言葉を掛けると、セレスは俺の方を見て、
「ルルさん、上が非常に危険な事は分かっております。 それでも……」
「ああ、分かってる。 俺が行って連れ戻して来る」
「すみません。 ですが出来る限りで構いません。 ルルさんの身にまで何かあれば……」
「分かった。 絶対戻って来るから安心しろ」
俺はそう告げると、急いで杖を持ち外への扉に向かう。
先程この辺りのゾンビは倒しているとはいえ、急がないとシエラが危ない。
俺はセレスに見送られながら重い扉を押し開け階段を駆け登った。




